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逆から揚力発生原理 2 (気圧と流速)

 揚力は、翼上面と翼下面の圧力差によって生じます。

では、どうして圧力差が出来るのか。
空気の流れる速さが違うからです。

空気に限らず、流体は流速が速いほど圧力が下がります。
なぜなら、圧力の正体が分子の衝突する力の単位面積あたりの総和だからです。

おっと、いきなり面倒臭そう。
ゆっくり行きます。

流体(気体や液体)は、分子がある程度自由に動ける状態にあります。
では、静止した空気を立方体で切り取ってみましょう。透明な箱を想像してください。

その中で空気の分子はブンブン飛び回っているのですが、方向はみんなバラバラです。箱の中にはとてつもない数の分子があるので、平均すれば、立方体の6面全てに大体同じくらいの数の分子が衝突しています。この分子の衝突による力の単位面積あたりの総和が圧力です。

【この段落は読み飛ばしても問題ないです】
 しれっと単位面積あたりの、と入っているのは圧力が同じでも対象の面積が変わると力の総和が変わってしまうからです。圧力の単位Pa(パスカル)を見てみると、1Paは1N/m^2のことなので、1m×1mの面積に1N(ニュートン)の力がかかっている、というふうに読めます。ということは、1m×1mの面積に1Paの圧力がかかっている場合の力の総和は1Nですが、圧力はそのまま、面積を2m×2mにすると力の総和は4Nになってしまいます。

 では、空気を流してみましょう。流れる、ということは、分子の飛んで行く方向が概ねそろうという事です。すると、6面のうち1面だけ妙にぶつかられる面が出来るわけです。と同時に、箱の中の分子の数は変わらないので他の面はあまり衝突されなくなります。衝突されないということは、圧力が下がるということです。流速が速くなればなるほど、多くの分子が同じ方向に飛んでいくので、衝突されない面の圧力は下がります。

 実際に計測すると、翼上面と翼下面の流速差は2倍近くになります。翼上面の気圧は翼下面の気圧の半分ということです。
 揚力は、押し上げる力というより、吸い上げる力と言えそうです。

 何も不思議なことはなく、これだけです。
飛行機の翼に限らず、鳥や虫など飛ぶもののツバサや羽は流速差を生み出すための装置です。

 そう言われても、分厚い涙型の飛行機や大型の鳥の翼と、厚さが均一でペラペラの虫の羽では全然違うじゃないかと思う人もいると思います。でも、実は同じなのです。翼と羽はそのものの形状は全く違いますが、周りの空気の流れは同じ形であることがわかっています。流体は、対象物のサイズによって粘度が変わります。人間サイズでは空気はサラサラですが、虫にとっての空気はドロドロの重たい流体です。それぞれのサイズで同じ形の流れを作り出せる翼型を採用しているのです。
 そのため、飛行機をそのまま小さくしてもあまり上手く飛びません。ラジコン飛行機や紙飛行機のサイズは、虫バージョンの羽にした方がいいか、飛行機の翼のままで良いかの境目で、そこが面白いところです。

続きます。
次は、どうして翼の上下で流速に差が出るのか、です。



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