墨佳遼さん
壮大な背景と設定と人格を緻密に作り込んで、その最期までを容赦なく描ききるところが凄まじいと思う。見てきたかのように生々しく、ひとつひとつの命の有り様と行く末が、同じキャラクターのパロでさえ全く違う。共通点は、ただ、懸命に生きていること。
その上、信じられない密度の命の物語を次から次へと展開しているのに、出力形式が漫画!
量と質が高すぎる。本当に好きなんだということが、ものすごく伝わってくる。ただ、生きることの際を見つめ続けているようで、危うさを感じることもある。生の際は死の際でもあるから。
個人的には、実在の哺乳類や仮想生物はともかく、節足動物にこんなに興味を持つ日が来るとは思わなかったので驚いている。田舎育ちにあるまじき(だからこそ?)の虫嫌いであることを一瞬忘れて天害の本体を検索して(薄目で)見(られ)ているし、セミが苦手なのに蝉法師の発売日がとても楽しみ。
墨佳さんのおかげで、私の設定が混乱している。それほど好きなのだと最近気づきました。
最後に、蝉について懺悔を一つ。
夏の終わりの夜に、蝉を踏んだことがあります。その日はたまたま懐中電灯を忘れてしまって、暗くて見えなかったけど、感触的には中空の円筒状のもので、「ミ゛ィ」って音がした。しかも、当時とっくに成人済みの私が踏んだのに潰れた感じはなかった。転がすように踏んだからかも知れない。
蝉。
だよなぁ。
死んでたんだと思う。
そうなんだよね、鳴いているのではなくて、鳴ってるんだ。だから、死んでしまっても構造がそのままのうちは音がする。泣きそうになった。
あのときの蝉さん、ごめん。許して。
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