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【お題小説】14.空虚を掴む



からっぽのしっぽ



 砂漠の海を帆船が進む。
 がいこつの船長が、剣を振りかざす。
「よぅ、野郎ども。今日も行くぜ、からっぽを見つけに!」
「おぉ!」
「夜まで走るぜ、からっぽのしっぽを掴みに!」
「おぉ!」
 いつもの掛け声ながら、拳を振り上げると気分が高揚する。
 乾いた風が背中側から吹きつける。太陽が眩しい。絶好のからっぽ探し日和だ。
 ぼくたちは自然と歌いだす。


そいつは山のようにでかいという
豆粒みたいに小さいという

ギンギラ輝いているという
透明で見えやしないという

ゴツゴツしてるという
ヌルヌルしてるという
ベタベタしてるという
触った感触なんてないという

そいつのしっぽを掴むと幸運がくるという
不幸のどんぞこに落ちるという

さっぱりわけがわからない
いるのかどうかもわからない
それがからっぽ からっぽ ぽっぽ

さあ からっぽを見つけ出せ
からっぽのしっぽをつかまえろ!





 ぼくたちは気づかなかったのだ。
 とっくにからっぽに飲み込まれていること。
 ここがからっぽの腹の中ということに。


お題はお題配布サイト「腹を空かせた夢喰い」様からお借りしています。




歌とラストの間に3万文字くらいの冒険譚が欲しい読みたい。

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