【お題小説】楽しくて死んでしまうわ
お題はお題配布サイト「腹を空かせた夢喰い」様からお借りしています。
「楽しくて死んでしまうわ」
明日は君の誕生日だ。君が生まれてくれた日。僕にとってとても大切な日。
僕は明日のためにプレゼントなど何ひとつ用意しない。いつもと違う雰囲気の素敵な店で食事をすることも、ケーキを買っていくこともない。「誕生日おめでとう」その一言もかけない。
君を、喜ばせるわけにはいかない。
出会って最初のうちはそれを知らなくて、何度か君を死なせかけた。
君に何かをしてあげると、どんなに些細なことでも、とても喜んでくれる。
君は言う。
「私のために、ありがとう。今日が人生で一番幸せな日かもしれないね」
穏やかに微笑みながら言う。
「私は、幸福が尽きて、不幸になる前に終わりたいの」
君を楽しませると、君は自ら死を選んでしまう。
だから特別な明日も、いつも通りの退屈な日常に。
君が「明日はもっと楽しいかもしれない」と思うように。
僕は何もせずにいよう。
どうか君が、明日、幸せになりませんように。
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