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【お題小説】ノーオプション ノーライフ

お題はお題配布サイト「腹を空かせた夢喰い」様からお借りしています。

2番目の今回のお題は「個性。」。


ノーオプション ノーライフ


「えーあー……お、おはようございます……」
「ほら、田中先生。もっとはっきり挨拶して! それに今の生徒、黒のソックスを履いていたじゃないですか。ちゃんと注意しないと。今からでも声かけて!」
「んあ……そこの……君、靴下は白か紺のみだからね……」
「先生、だからもっとお腹から声出してくださいって。それに、これだけ生徒がいる中で『そこの君』じゃあ、自分が注意されてるとわからないでしょう。名前をはっきり呼んでください」
「う……あ……」
「まさか田中先生、もう一学期も終わるというのに、まだ生徒の名前を憶えてないなんて言わないでしょうね?」
「や……だ、だって……顔……同じ……」
「今のは魅朱愛くんでしょう。あの天使の2翼と、ブラックドラゴンの角を見れば一目瞭然じゃないですか」
「うちのクラスに、翼と角持ちの生徒が他にもいるんですが……」
「田中先生のクラスでしたら、キメラの翼とレッドドラゴンの角を持つ雷堕くんですか、もう色ですぐわかるじゃないですか。まさか、天使の4翼と古代ドラゴンの角持ちの、神全琉くんと区別がつかないなんて言わないですよね!?」
「ま、まさかと……言われ、ても……」
「はあああああ、これだから旧世代の人間を教師に置いたままにすべきではないんですよ。こんな単純なこともわからない。才能も美貌も均一化されている我々と違って、容姿も見劣りするし頭も悪い。翼や角、耳、鱗、爪などは、我々新人類が自ら選んだ、個性を発揮する大事なオプションです。その個性の区別もつかないのなら、お話にならないではないですか」
「す……すみません」

「校門とこ、見たー?」
「見た見た、ま~たエルフ山、田中先生に絡んでるよ」
「生徒の前で容姿こき下ろす方が、よっぽど教育に悪いっつーの」
「ってか、エルフ山の名前ってなんだっけ」
「わかんねー。エルフ耳持ってるからエルフ山って呼ばれてることしか覚えてねーわ」
「あとユニコーン角とセイレーンの翼とケルベロスの爪とグリフォンの尻尾持ちだっけ。そんだけ盛ってもキャラ薄いよね」
「そんなんだから、田中先生に絡むんでしょ」
「どういうこと?」
「田中先生は、顔面偏差値低いし背も低いし声もガラガラで低いと3低揃ってるけど、もう遠くからでも田中先生ってわかるじゃん」
「ああ。個性つっよいよね」
「だから、嫉妬してんでしょ」
「エルフ山がどれだけオプション盛っても、田中先生に敵わないもんね」
「名前も覚えられねーくらいだしな」
「かわいそー」
「ね。可哀想だね」



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