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読書録

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読んだ本の感想などです。
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#数学

読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房) 書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。 本書はそんな一冊だ。 結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。 人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。 野

映画感想「ビューティフル・マインド」

「ビューティフル・マインド」 実はこの映画も件の英語の講義で上映された。 恥ずかしながら講義で初めて鑑賞し思わず涙してしまった作品だった。 統合失調症に苦しみながらもノーベル経済学賞を受賞した天才数学者ジョン・ナッシュの半生を描いた映画。 ちなみに僕の大学3年生まで所属していたゼミはゲーム理論を専門に研究している先生のゼミだったのでナッシュとは全く無縁ではない。 余談で恐縮だが大学4年時に当時の指導教官が異動してしまったので卒業論文はゲーム理論とは全く関係のない労働経済

読書録「生きること学ぶこと」

広中平祐「生きること学ぶこと」(集英社文庫) 太宰治「正義と微笑」(錦城出版社) 来春から長岡市で参画させて頂く学習支援ボランティアの代表の方が数学教諭の資格を持っていたので数学教育に関する共通項が見つかり嬉しかった。 ボランティア団体のインスタグラムを拝見すると広中平祐先生の「生きること学ぶこと」が紹介されてあり、「わかっているな~」とにやけてしまった。 広中先生は日本を代表する世界的数学者で1970年に「複素多様体の特異点に関する研究」で数学のノーベル賞といわれるフ

読書録 「フェルマーの料理」

小林有吾「フェルマーの料理」(講談社) 岡潔「数学を志す人に」(平凡社) 先日、友人から勧められて購入した漫画「フェルマーの料理」が非常に面白くハマってしまった。現在、TBS系列でTVドラマも放映されているので今度視聴してみよう。 タイトルからお分かりの通り「数学」と「料理」がコラボする一風変わった組み合わせの作品である。 数学的才能に恵まれた主人公・北田岳は、数学オリンピックで挫折を経験し数学者になる夢を諦め学食のアルバイトで無為な日々を過ごしていた。ある日、謎の若き

読書録「確率論と私」

伊藤清「確率論と私」(岩波現代文庫) ブラック・ショールズモデルの基礎となる「伊藤の定理」を発見した伊藤清先生の唯一のエッセイ集。 日本の確率論研究の基礎を築き、かつ多くの後進を育て、また京都賞をはじめ、国際数学連合の主催するガウス賞の受賞など数々の栄誉に輝いた伊藤先生の「確率論を数学的に厳密かつ精緻なものにしたい」と真摯に研究に打ち込んだ姿がうかがえる。 「『金融の世界』への不安」という項で自身の「伊藤の定理」が金融という思わぬ形で応用されたことについて触れている。

読書録「数字であそぼ。」

絹田村子「数字であそぼ。7」(小学館) 当たり前でない位相を考える時、その真の価値に人は気付く。 当たり前のことを”当たり前である”と理解することは実はとても大切で難しいことなのだ。(p87) 京都大学理学部数学科を舞台にした数学×キャンパスライフという一風変わたマンガである。 一度見ただけですべてを覚えることができる抜群の記憶力をもつ主人公。 高校までは秀才の誉れ高く、「将来のノーベル賞受賞候補」とまで期待される。 現役で吉田大学(京都大学をモチーフとしている)に入