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読書録

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読んだ本の感想などです。
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#かけがえのない存在

読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房) 書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。 本書はそんな一冊だ。 結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。 人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。 野

2月のセプテンバー

宇宙から届く水素の発光スペクトルの波長は地球上の水素より長い。これはドップラー効果による。地球から遠ざかりつつある水素が発光しているのである。あちこちの星から発光される水素スペクトルを検討すると、遠くにある星の水素ほどドップラー効果が大きいという。 これはどういうことか? 地球から遠い星ほど地球から遠ざかる速度が大きいということである。 はるかかなたの星は光速で地球から遠ざかっているかもしれない。 その星から出た光はどうなるのだろう。 光速で遠ざかる星から出た光速の光は後

大切な絵本

子どもの頃から大好きな絵本の1冊に「ぐるんぱのようちえん」という作品があります。 簡単にストーリーを紹介すると自信がなく孤独でいつもメソメソしていたゾウのぐるんぱは、仲間のゾウたちの励ましと応援によって見違えるようになり町へ働きに出掛けます。 クッキー屋さん、お皿屋さん、靴屋さん、ピアノ職人、自動車屋さんと色々な仕事を経験しますが、どこの職場でも、あまりに大きすぎる規格外のものを作るので、売り物にならないと否定され続けます。 心が折れそうになったぐるんぱですが、ある日1