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読書録

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読んだ本の感想などです。
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#大学時代のレポート

読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房) 書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。 本書はそんな一冊だ。 結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。 人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。 野

スキナー「動機、意図およびテクストの解釈」の再構成レポート

経済学部一年 竹内 康司  解釈に際して著者の動機や意図を考慮すべきではないと主張する批評家は、「動機」と「意図」を知る目的について混同した議論をしているとスキナーは指摘した。そこで、スキナーは、まず意図と動機を知る目的についてそれぞれ区別して議論を進める。  著者の動機について知ることは、特定の言語行為を促すきっかけを知ることである。著者の動機は作品の出現に先行し、作品との結びつきは偶然的なものと見なされる。したがって、「動機」はテクストとは無関係であることを彼は認めて

社会学レポート課題

【論文タイトル】 田中 善紀,2010,「グローバリゼーションへの対応:シンガポールにおける外国人労働者問題と市民社会(西口清勝教授退任記念論文集)」『立命館經濟学』58(5/6), 992-1008 【要約】 シンガポールのように人口が少なく、労働資源が重要な国にとっては、外国人労働者の導入は重要である。実際、外国人労働者は労働人口の30.3%を占め、シンガポール経済は著しく外国人労働者に依存している。また政府の外国人労働者(移住労働者)政策はシンガポール政府のグローバリ

暴君殺しについての一考察

経済学部一年 竹内 康司 1人の偉大な政治指導者を殺害する個人的暴力は、いかにして正当化されるのか。この問題を考えるにあたって、参考資料を踏まえ、二つの側面からアプローチする。一つは古代ローマの著作物における「暴君誅殺」の合法性と、もう一つは「偉大な指導者」が「暴君」となりうる経緯についてだ。 まず、前者では、古代ギリシャ、ローマの著作家たちは、「暴君誅殺」は善きこと、「国王暗殺」は悪しきこと、と見なしていた。その背景には個人の権力濫用を抑制する目的がある。これは自由主義者

思想史とは何か。学期末レポート

(1)リチャード・ローティの議論を踏まえて、丸山眞男「思想史の考え方について―類型・範囲・対象―」を検討する。 リチャード・ローティは「哲学史」の記述法として、合理的再構成・歴史的再構成・精神史・学説史の4つのジャンルを提示している。 大雑把に捉えれば、ローティの説く合理的再構成は、現代に、歴史的再構成は過去に軸足を置くものだ。「哲学史」を記述する際、合理的再構成の支持者は、「過去の人間が論じた諸問題に関する今日の最良の仕事」に照会して、過去の偉大な哲学者を見ることを強調す