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読書録

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読んだ本の感想などです。
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#新生活をたのしく

読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房) 書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。 本書はそんな一冊だ。 結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。 人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。 野

貴方に、ありがとう。

こんなことを書くのは少々気後れするけれど、書かなければ届かない。 いつも個人的な感想を書いてばかりいるが、それはモノローグだから過去のあるいは未来の自分自身に向けて書いている。 だけど今日は、ある人に向けて伝えたい。 東京に出発する前、宅急便で一冊の本が届きました。 村井静「花」 ふわふわと浮遊するようなクラゲの写真の表紙を眺めていたら、ひと月ほど前に見たオバケのイラストを思い出しました。 転職活動や北海道への引っ越し準備など慌ただしい日常の中、以前に注文したこと

今が辛い人へ~ある過去の日記から~

引っ越しに向けて部屋の片づけをしていたら10年以上前の日記が出てきた。 大分前に森山直太朗の「生きていることが辛いなら」を毎日聴いてしまうようなメンタル不調に陥った時期があった。 今思うと取るに足らないことで悩んでいたにも関わらず、当時は出家したいと本気で考え、お寺を探していたことが日記からうかがえる。 余談だがnoteに投稿した記事で、タイトル脇に年月表記が付記される内容をリアルタイムで書いていたのは、そんな人生がうまくいかず悶々としていた暗い時期だった。 以前もn

物語の効用

僕たちが分かることはほんの一部で、わからないことの方が圧倒的に多い。 現実世界は複雑怪奇。 数学で答えが出るのは、ほんの一部の簡単な問題だけ。 三体問題の事例を持ち出さなくとも完璧なシュミレーションを作れないことは容易に理解できるだろう。 だからと言って、安易にスピリチュアル的なものに走ってはいけない。 極端な例かもしれないが、僕がカラオケで歌っている楽曲が流行した90年代は、某新興宗教団体がカルト的な事件を起こして世間を震撼とさせた。 驚くべきことに首謀者たちは高学歴

新社会人だった僕に贈る言葉

たしか、伊集院静さんが毎年この時期に「新社会人へのメッセージ」という文章を新聞広告で発表されていた。 実は春になると、毎年この伊集院さんの文章を読むのが楽しみだった。 残念ながら昨年11月に旅立たれて今年は新社会人へのメッセージを読むことができない。 ないものねだりをしても仕方がないので、こんな時は何度も伊集院さんの著書の言葉を反芻してきた過去の自分へ語り掛けよう。 これは「13年前の僕へ」の続き。 新社会人になる僕へ 札幌からの引っ越しも済んでほっと、ひと段落つい