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「現実的には法律を全部守ってたら経営していけないですよ」…まぁ、ねぇ…でも大丈夫?

1.経営とルール

「いやぁ、現実の経営で法律を全部守ってたらやっていけないですよwww」

経営者の方でこんなことをおっしゃる方は意外といらっしゃいます。さすがに大っぴらに言う方はそう多くはないですが。

最初から「ルールを破って経営したい!」と思っている人はあまり多くないはずで、破ることになったきっかけは様々だと思いますが、「ルールを破るのはしょうがない」という理屈付けはそれぞれ持ってらっしゃいます。

「うちの会社ではずっとこうやってきた(業界の慣習だから)」「みんな守っていない」「ルールを守ってたら損をする」「守ってたらやっていけない」「現に金がないから仕方ない」「どうせバレない」「この法律自体に意味がない」

【以下、「道義上」、「世間的に」という視点を除外して考えてみます】

会社には労務、税務や業界の所轄官庁で定めるものなど、いろいろなルールがあります。
それぞれの担当官庁(の出先としての地方自治体)の立ち入り検査があったりしますが、それは入る時もあれば入らないときもある。

入ったとしても、その瞬間だけちゃんとしてたら大丈夫だったり、基準が割とあいまいで担当者によってアウトセーフの線引きはかなり差があったり、担当者にきちんと説明ができるかどうかでやってることが同じでも認められるかどうかが変わったり…といったように、ルールを厳密に守らなくても、一定の幅に入っとけば何とかなる。

そんなところにお金と手間をかけたってしょうがないじゃないというのは気持ちとしてはわからないではない。

*法律やルールを厳密に決めきると世の中の変化についていけなかったりするので、そもそもの決めがあいまいなのは、まぁしょうがないところもあると思います。

2.ルールを破る前に持っておきたい視点

「だからルールを破ってもいいじゃん。」ではなくて、いくつかの別の視点を持ってみてほしいんです。

(1)そのルールが守りたいものは?

その法律やルールは何を目的に決められているのでしょうか。特に業界ごとの法律が決まっているものは、顧客や労働者の安全を守るために設定されているものが多くあります。ルールを破ることでそういった人々に影響が出ることはありませんか?

(2)潜在的なリスクは結局残るor増える

「めったに来ない」「来てもバレない」…大概の場合そうです。それでもバレたらどうなるか。

罰則金または営業停止、下手をすると営業に必要な免許の取消が発生することもあります。

ルールを破った瞬間は臨時収入が入った気分になりますが、慢性化していれば普段の収入と同じ。バレたときに備えて貯金を…という人はあまりいません。私個人の経験則ですが、経営状態が悪いときに限って、数年、下手すると一度もなかった各種調査が入ったりします。そうじゃなくても金がないのに、罰則金払ったり営業停止がきたりすると対処のしようがない…

普段バレてないというだけで、リスクとしては潜在的に年々積み重なっています。そんな爆弾を抱えて経営していく……わざわざ自分で難易度上げているようなもんです。それ、本当に得してますか?

(3)何かあっても相談先がなくなる

万が一、経営状態が悪くなったり、従業員や顧客とのトラブルが起きた場合。銀行や各種士業、僕のようなコンサルに相談したいと思っても、ルールを破っていると、「下手に相談するとこれもバレるんじゃないか…」という不安感が強くなって相談がしにくくなるケースは非常に多いです。

また、ルールを破っている度合いによっては、各種の専門家の方から「関われません(助けられません)」とはっきり言われるケースも当然あります。

(4)社内の信頼関係が作られない

これは本当に不思議なんですが…経営上のルールを破っているところに限って、社員が社内ルールを破ることにやかましかったりします。

どんなに秘密にしたところで、ルールを破っていることは、皆うっすらと気づきます。「社員はだれも知らないんですが」と思っているのは社長だけで、「きっとうちの社長は何かやってる」と思われているケースが非常に多い。

自分は社会のルールを破っておいて何を言ってるんだろう?

社内ルールを守らせたいなら、まず自分から襟を正して模範を示したほうがいいと思うのですが…せめてルール違反していることを、申し訳なさそうにしてほしいものです。

3.まとめ

目の前の状況を見たときに、ルールを破りたくなる、または「破らないとどうしようもない…」という状況は確かに存在しますし、個人的には同情する余地がある場合もあります。

一方で、前章の視点で見ると、長い目で見たときにプラスになることはあまりありません。

初めてルールを破った瞬間、不安になります。
慢性化してくると、不安を押し殺すことに慣れてきます。
慣れてくると、破る幅が広がっていきます。
気が付くと、破る幅が広すぎて戻れなくなっている。
ツケを払うことになるかどうかは運任せ。
下手をすると次世代にツケを回すことになる。

「ルールの絶対遵守が現実的でないケース」は瞬間的にはあるかもしれませんが、「だからルールを破ってかまわない」というのは大間違いです。

道義的にも。経営的にも。

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