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【PODCAST書き起し】山内ケンジさん(劇作家・演出家)と城島和加乃さん(プロデューサー)に演劇と「城山羊の会」について聞いてみた(全5回)4,城島さんのプロデューサーのお仕事

【PODCAST書き起し】山内ケンジさん(劇作家・演出家)と城島和加乃さん(プロデューサー)に演劇と「城山羊の会」について聞いてみた(全5回)
4,城島さんのプロデューサーのお仕事

【山下】これから城島さんにお伺いしたいと思います。城山羊の会のプロデューサーをされていますけど、芝居のプロデュースをされるようになったきっかけは、なんかあるんでしょうか?

 

【城島】前半でも、ちょっとお話ししたんですけど、もともと東京乾電池というところへ入りまして。イベント系の演劇を、劇場以外のところでやるというののプロデュースをやるように言われて、それがきっかけですね。だからこういう、今回みたいな城山羊の会のように、劇場を借りてプロデュースするというのも、本当これしかやっていない。

 

【山下】そうなんですね。

 

【城島】はい。

 

【山下】だからそれ以外は、もう、そういった……今も……。

 

【城島】そうですね。ホテルとかで……。

 

【山下】ホテルとかで『ミステリーナイト』。

 

【城島】『ミステリーナイト』とか、観客参加型推理演劇っていうんですけど……。

 

【山下】あれ、どういうようなやつなんですか? ちょっと僕も経験したことないんですけど、ちょっとだけ説明していただいて……。

 

【城島】1987年に、大阪のホテルと東京乾電池の創立メンバーが……。

 

【山下】87年から?

 

【城島】もう87年からやっているんですけど。劇場でないところで演劇をやるっていうことで始めたものなんですけど。演劇で殺人事件が起きて、その事件の謎を参加者の方が推理して、一晩ホテルに泊まって、泊まるのに寝られなくて(笑い)。泊まるのに寝かせてもらえずに、深夜また……。

 

【山下】ああ、そうか。宿泊料払っているのにということですね。なるほど。

 

【城島】そうですね。当時まだバブルの後半だったかな。

 

【山下】ですよね、バブルですよね、まだ。

 

【城島】完全に夏場が今と違って閑散期で。夏場のシティホテルって本当に客室稼働率10%切るみたいなとこあったじゃないですか。夏場にちょっとお客さん呼んで、深夜まで探偵ごっこしたらおもしろいんじゃないかみたいなのが始まりで、そこからいろいろ……『結婚狂騒曲』ってね、それこそ岩松了さんに本書いてもらって、結婚披露宴を舞台にした(笑い)。六平直政さんとかも出て。

 

【山下】六平さんも出た? へえ。

 

【城島】綾田俊樹さんとかも出て。

 

【山下】おもしろそう。

 

【城島】完全にアングラ、ホテルの宴会場で(笑い)。豪華なアングラ劇が繰り広げられるみたいな。で、ご飯食べて、ちょっとお芝居が挟まってみたいな、そういうなんていうんでしょう、劇場じゃない演劇……。

 

【山下】体感系、ツアーみたいな感じですね。

 

【城島】体感系の、そうですね、体感系の演劇を担当していて。

 

【山下】そんなのがあるんですね。

 

【城島】で、さっきも出ましたけど、それに村松利史さんっていう俳優さんが出ていて、ものすごい山内さんのことが好きで。私に、VHSに自分で編集した、山内さんのCMがビャーっと入っているものを「城島さん、これ観て」って言って持ってきて。

 

【山下】それは、どうやって手に入れたんですか?

 

【城島】それは本人から。本人から(笑い)、なんかずっと村松さんと話すると……。

 

【山下】村松さんが編集したんだ。

 

【城島】ずっと「いやあ、山内さんってね……」って、ずっと山内さんのことをしゃべっていて。「いや、おもしろそうですね」「じゃあ、ビデオ持ってくるね」って言って、自分で編集したVHSの、山内ケンジのCMを、それも素材もらってとかじゃなくて、自分がたぶんテレビとかで録りためたやつを……。

 

【山下】あ、録画したやつをね。昔、そうですね。録画したら編集できたんですね。

 

【城島】そう、それをくださって。で、そのとき私は、先ほど出ましたけど「ヤキソバン」のころは、まだ東京乾電池にいたので、斉藤和典さんが……。

 

【山下】先ほどの。

 

【城島】ADっていうんですか?

 

【山下】CD。CDです、はい。

 

【城島】CD。CDやっていて、出演もしている。必ず彼は出ていたんで、それでっていうので観て……出ていましたよね? あれ? 山内さんが出ていたんでしたっけ? サイトウ君も出ていましたよね?

 

【山内】いや、サイトウさんも出ていましたよ。

 

【谷】いろいろ……(笑い)。

 

【山内】日清のね、「ヤキソバン」じゃなくて、なんか日清の。たくさん作っていたから。

 

【城島】なんか出ていますでしょ? で、監督が山内ケンジさんだっていう話になって、そのときに名前だけは存じ上げていたんですけど、そのあと特に具体的な接点はなく、その村松さんを介して山内ケンジさんの作品集(笑い)っていうのを観て、「今度、山内さんに本書いてもらって一人芝居やるから、制作やってくれないかな」みたいなので。

 

【山下】そういう流れで。

 

【城島】そうなんですよね。

 

【山下】割とすごい、自然にそうなっていったんですね。なるほど。

 

【城島】そうなんですよね。それで、最初に山内さんにちゃんとお目にかかったのは、結局その村松さんの稽古場か何かで、村松さんに、山内さんと何人かのその本を提供している方たちが、稽古つけているとかじゃないですけど、観て感想を言う会みたいなのを。

 

【山下】ああ、演出ではない?

 

【城島】あれは演出も兼ねていたんですかね?

 

【山内】いや、演出は自分でやっていたんじゃないですかね、村松さん。

 

【城島】まあただ、もっとこうしたほうがいいよとか、そういう会。そこで初めてちゃんと、たぶんちゃんとお目にかかってみたいな感じですね、はい。

 

【山下】で、山内さんが『葡萄と密会』の長いやつを書いて、やりましょうということになったっていうのが……。

 

【城島】そうですね。本当に段取りは村松さんと山内さんとでほとんど決めて、深浦(加奈子)さんに声かけようというのも、お二人が名乗り出されて……。

 

【山下】深浦さんにね。

 

【城島】そうですね。それ私がそれ引き継いで、会いに行って、出演のお願いしたりして。

 

【山内】僕と村松で、シス(シス・カンパニー)の社長に……。

 

【城島】会いに行ったやつね。

 

【山下】北村(明子)さんに?

 

【山内】そう。

 

【山下】へええ。

 

【城島】会いに行きましたよ。

 

【山下】どんな方なんですか、北村さんって?

 

【城島】いや、まあ……ノーコメントで通用するならいきたいところ(笑い)。

 

【全員】(笑い)

 

【城島】いや、真面目な方ですよ、本当に。

 

【山下】ねえ。本も……。

 

【城島】俳優さんを大事にされていて。

 

【山下】あ、そうか。北村さんのところも、俳優さん何人もいらっしゃいますもんね。

 

【城島】いや、もう有名な俳優さんばかりなので、本当に。お二人で会いに行って「ぜひ」と。

 

【山下】すごい、なるほど。それでそこから、していく……。あれ? 芝居って、基本1年に1回から2回?

 

【城島】当時は2回やっていたんですよね。

 

【山下】2回やってたのか。

 

【城島】5月くらいと11月とか、半年に1回みたいな感じで。

 

【山下】なるほど。よく劇場って2年くらい前からおさえるって普通なんですか?

 

【城島】そうですね。ただ、小劇場だとそこまで先ではないですけれども。

 

【山下】ではなくても大丈夫?

 

【城島】あと、何回かお願いしていると、来年っていうか「次、どうしますか?」って聞いてくださるので。

 

【山下】「どうします?」って。なるほど。ありがたいですね。

 

【城島】そうですね。ただ、Pamplemousse(新宿パンプルムス)は、本当にもう……劇場どこも……、やろうって決めてからが、そんなに……。

 

【山下】時間がなかったんだ。

 

【城島】もう、どこも空いていなくて。

 

【山下】どこも空いていない。

 

【城島】で、しかも、ロケハンで見たときと夏場と、部屋の気温が全然違うので(笑い)。

 

【山下】確かに。

【城島】伝説の、本当に灼熱の公演で。

 

【山下】すごい印象に残っています。でしたね。大変でしたね。

 

【城島】途中で、自社というかわれわれの経費で、ウィンドエアコン2台買って取り付けて。

 

【山下】エアコンも入っていますよね?

 

【城島】それまでは、山内さんの奥さんの野上さんが、CMの現場とかで使う、ワーって冷やすやつ……。

 

【山下】あ、スポットクーラーか。スポットクーラーじゃないかな。

 

【城島】っていうんですかね?

 

【山内】ロケの現場でよく……。

 

【山下】ロケの現場?

 

【城島】なんかこういう太い……。

 

【山内】あのパイプのね、白い……。

 

【城島】そう、ホースから白い冷風がワーッと出て冷やすやつとか。

 

【山下】ああ、冷やすやつ。スポクラ……。

 

【城島】もう、いろんな手練手管。部屋を冷やそうって言って。制作の男の子が、近くのスポーツクラブで配っていたうちわを協賛でもらってきて、みんなに配ったりとか。

 

【山下】うちわ、なんかいただきました。

 

【城島】はい。配ったりとか。もうできる限りの、気温を下げようとしてやったんですけど、なかなか。やっぱり満杯になってしまうとそんなに冷えなくて。

 

【山下】そうですよね、人いきれでね。

 

【城島】で、もう、扉閉めて、外で受付の子と「中暑いだろうね」「暑いよね」「絶対暑いよね」って毎日のように言いながら。「ありがとうございました」って開けると、もう熱気がブワーッと一緒に出てくるんですよ。

 

【山下】ああ、そうか。中のほうが暑いから。

 

【城島】でもすごくうれしかったのは、誰1人、暑くてつらかったとかじゃなくて、「おもしろかった!」って言って出てくるんですよね。

 

【山下】うれしいですよね。

 

【城島】なんかそれがやっぱり、暑い寒いを乗り越えた(笑い)、作品のおもしろさってあるんだなって思って。

 

【山下】いや、ですね。深浦さんの汗がすごく印象に残っています。本当にすごく良かったな、あれは。

 

【城島】また劇場もちっちゃいので、臨場感もありますでしょ?

 

【山下】いや、そうですよね。目の前ですからね、本当に。で、毎回、1年に1回か2回か……、公演をしているときに、城島さんの役割としてはどんなことをされていたんですか?

 

【城島】私は劇場おさえたり、スタッフを集めたり。

 

【山下】予算関係。

 

【城島】そういう事務的な、もちろん宣伝とか、チラシ作ったりとかもありますけど、一般的ないわゆる事務系の……。

 

【山下】よくある、舞監の人とか、美術、照明とか、あの辺は山内さんのほうで、なんか……、どうしているんですか?

 

【城島】っていうか初めは山内さんの知り合いの、CMの美術の原田(恭明)さんだったんです。来ていただいて。

 

【山下】原田さんね。

 

【城島】で、舞台監督を私が……美制とかやっている知り合いの方に……私と村松さん共通の舞台監督に来てもらったり、音響さんもそういうつてで来てもらったりして。で、だんだん山内さんの「この人とはやりやすい」とかそういうので。

 

【山下】ああ、そうですよね。大事ですよね。

 

【城島】だんだんメンバー決まっていくみたいな感じになって。

 

【山下】山内さんにちょっと質問ですけど、舞台の音響さんとか美術さんとか照明さんとかいらっしゃるじゃないですか。あの人たちとどういうふうにやりとりしていくんですか、制作のときに。

 

【山内】やりとり……、やりとりは別に……。

 

【山下】こんなふうにしたいんだけどとかっていう話を、美術さん、杉山(至)さんとやるとか……。

 

【山内】今回は……。

 

【山下】今回、『ワクチンの夜』のことですね。

 

【山内】今回は、『ワクチンの夜』のときは、結構大まかには、スケッチみたいなのを描きましたね。

 

【山下】あ、絵、描いたんですか?

 

【山内】うん。

 

【山下】あ、なるほど。

 

【山内】そう。階段がここで、みたいな。

 

【山下】ラフな絵を。

 

【山内】そう。描いて、それから美術打ち合わせ。

 

【山下】へええ。

 

【城島】でも、だいたいいつも山内さんが「ここら辺に階段があって、この辺に玄関あって……」みたいなのを稽古場のホワイトボードにブワーッと描いて、それ写真撮って。

 

【山内】最近描くんだけど。まあでも、美術で生まれるものもずいぶんある……。

 

【山下】ありますよね。

 

【山内】例えば『自己紹介読本』という、もうこれ以上はないくらいの傑作……。

 

【城島】(笑い)

 

【山内】……が、あるんですけれども、これ小便小僧が、最後、白いおしっこをするんですよ。それで終わるんですけど……。

 

【山下】この辺にあるね。

 

【谷】小便小僧……。

 

【山内】そうそう。小便小僧は美術打ち合わせから生まれましたから。

 

【山下】へえ。小便小僧を出したほうがいいんじゃないかっていうのが生まれたんですか? それとも、白いものが出たほうがいいんじゃないかというのが?

 

【山内】いやいや。小便小僧をそこに……。

 

【山下】公園ですよね。

 

【山内】公園っぽく……だから、杉山さんのデザインが公園っぽく、こうなって、こういって、それでベンチがこうあってみたいな。

 

【山下】下手(しもて)のほうですね。

 

【山内】そしたら、ここに小便小僧がくるのが自然ではないか、みたいな話が出て、それじゃあ。そしたら、それがストーリーのポイントになるわけです。そういう美術打ち合わせからストーリーが生まれたっていうことがあります。

 

【山下】あるんですね。それは、音響とか照明に関しても同じようなことが……まあ、同じようなことというとあれだけど、音響の人たちと話し合ったりとか、照明の人と……。

 

【山内】音響や照明は基本的に本ができてからなので、そんなには。だから美術ですよね。

 

【山下】美術が先なんだ。

 

【山内】セットですね。セットは、その小便小僧をここに置こうみたいな話は、本はまだ……15枚くらいしかないです。

 

【山下】15枚……。普通だと全部で何枚くらいなんですか?

 

【山内】4、50。

 

【城島】40後半くらい。

 

【山下】あ、じゃあ、まだ3分の1くらいしか……。

 

【山内】今回60。

 

【城島】今回でも、行間っていうか、字が大きかったんで。

 

【山内】だからそれくらい。10とか15、それくらい。5分の1、4分の1くらいしか書いていない段階で美術打ち合わせなので、だからもう、どうなる……誰もどうなるかも分かっていなくて、美術打ち合わせしているんです。

 

【山下】なるほど。

 

【山内】すごいですよね。

 

【山下】すごいな、それ(笑い)。イメージで「なんとなくこうかな」みたいな感じでやっているわけですね、みんなが。山内さんと美術さん。

 

【城島】でも冒頭に出てくるとか、「向こうに待ち合わせしている人がいないから、向こうにいるんじゃないか」とか、なんとなくそういう東西南北の感覚とか……。

 

【山下】あるわけですね。

 

【城島】こっちのほうに公衆トイレがあって、向こうに……。

 

【山下】下手のほうが公衆トイレですよね。『自己紹介~』は。

 

【城島】はい。みたいなものは、最初の1ページに若干書かれているので、それで……。

 

【山下】なるほど。そこにちゃんと書かれているんだ、ト書きに。

【城島】そうですね。あと、美術打ち合わせしながら、山内さんも「ああ、こうしたらいいのかな」みたいなの、出てきますよね?

 

【山内】ううん……。

 

【城島】でも、なんか、あの……。

 

【山内】でもやっぱり本が、もう本当にそのくらいしか書いていなくて美術打ち合わせというのは、本当にきついですよね。

 

【山下】美術打ち合わせって、稽古をするっていうか、本番の何日前かまでにやらないと間に合わないとかっていうのがあってやるわけですよね。どれくらい前なの……稽古の前?

 

【城島】もちろん、本当は早めにできれば……。

 

【山内】美術打ち合わせ? 美術打ち合わせは、もう稽古始まって結構……。

 

【山下】すぐ?

 

【山内】結構すぐですよね?

 

【城島】結構すぐです。

 

【山内】数日です。

 

【山下】1カ月後に立て込まなきゃいけないからですよね?

 

【山内】そうです。あんまりギリな……なんでも同じだけど、発注って……あんまりギリになると高くなっちゃう。なるべく早く発注したほうがいいんですよ。CMでもなんでもね。

 

【山下】そうですよね。おっしゃる通りですね。

【山内】そうそう。だから早くやるんですけど、本がまだないんです。

 

【山下】できていない(笑い)。そこのジレンマが……。

 

【山内】きついですよ、本当に。だから、本はなるべく早く書いたほうがいいですよね。

 

【山下】そうですね、はい。なかなか難しい。いろんなことが、課題があるんですね。

 

【城島】あの……、たまに、大城(静乃)さんっていう、山内さんのCMの音楽作ったりしてくださっている方に、歌を発注したりするときがあって。

 

【山下】へえ、そうなんですね。劇中の曲ですよね?

 

【城島】『スキラギノエリ~』(※注:『スキラギノエリの小さな事件』)とか、古くは『乞食と貴婦人』とか、そういう作品で出演者が歌う……最近だと『身の引きしまる思い』。そういうのを作ってくれる方がいるんですけど、美術も、みんなそうなんですけど、なんか案外あれですよね。山内さんのことを本当によく分かっていて、仕事が速いんです、みなさん。

 

【山下】すごいですね。なるほど。そうか、そういう作曲の人にもお願いしなきゃいけないのか。城島さん、山内さんと知り合って20年以上だと思いますが……。

 

【城島】そうですね、20年……、2004年にスタートですから、そうですね。20年近い。まあ、本当に知り合ってからは20年くらいですね。

 

【山下】どんなイメージを持たれていますか?

 

【城島】山内さんにですか? 山内さんね、自分で今「意地悪」って言ったけど……あの、優しいですよ、やっぱり。すごく。

 

【山下】それは、私も……。

 

【山内】自分で言いました、あえてね。

【城島】意地悪。で、あとは……そうですね、なんか一緒の、控え室みたいな空間にいても、嫌なオーラを出さないし。

 

【山下】ああ、嫌なオーラを出す人がいるんですか?

 

【城島】っていうか、やっぱり本番が近くなってきたり、何かが追いついていなかったりすると、こう……イライラじゃない、なんか嫌なオーラ出す、出ちゃう。

 

【山下】緊張感からくるみたいな感じ。

 

【谷】出ちゃうのかな。

 

【城島】いつも、なんかどっしりしていて。

 

【山下】そうですね。割と自然体な感じがするんですよ。

 

【城島】どっしりという表現じゃないですけど、まあ、なんていうんだろう?

 

【山下】ナチュラルですよね。

 

【城島】そうなんですよ。

 

【山下】なんかこう、激しくうわーってなったりとかっていうのがないじゃないですか。

 

【城島】そうですね、いつも。

 

【山下】それは、見たことないです。

 

【城島】私も山内さんもおいしいものが好きなので。

 

【山内】激しくうわーっとなるときは、CM時代ですね。

 

【城島】あ、なったことあるんですね?

【山内】CM時代、電通の人に対してです。

 

【山下、谷】(笑い)

 

【山内】それはもう、ずいぶん恐れられました。

 

【山下】本当ですか?

 

【山内】ええ。

 

【山下】山内さんが、そういうふうに声を荒げたりするの……。

 

【山内】荒げるっていうか、つまんないじゃないですかって言うんですよ。

 

【山下】ああ。でもそれは普通の意見ですね。

 

【山内】っていうか、それを執拗に言うんですよね。っていうか、結局降りちゃったりするんだけど。

 

【谷】ああ、企画段階とか、そういう手前の段階ですね?

 

【山内】企画段階でもそうだし、

あらゆる要望がきても受けないということがあります。

 

【山下】私も、ずいぶんあいだに挟まって……山内さんじゃないですけどね。最初にコンテを持っていって、「それ、どこがおもろいの?」とか、監督によく言われるんですよ。「あ、そうですか」って。そこから、みたいなのがあってね、たぶん同じようなことだと思うんですけど。

 

【城島】今は、非常に穏やかというか、もちろん自分の作品を上演される……。

 

【山下】自然体な感じがするけどね、本当に。

 

【城島】はい。だから、なんか……。

 

【山内】まあ、何やったってあれだな。自分で……まあ、自業自得だから。

 

【山下、谷】(笑い)

 

【城島】っていうか、嫌な時間があんまりないですよね。

 

【山下】ああ、嫌な時間ね。

 

【城島】あとでストレスになっていたみたいなことって、ありますでしょう?

 

【山下】それ、1番嫌かもしれないですね。

 

【城島】ないですもん。だから、楽しく始まって……、楽しくっていうのもどうか、あれですけど。

 

【山内】でも、やっぱり赤字は嫌ですよね。

 

【城島】赤字は……、もう最近、赤字……、とんとんになったらいいじゃないですか(笑い)。

 

【山内】だから……っていうか、最近は赤字が出ないようなやり方になってきたじゃないですか。

 

【城島】確かにそうですね。

 

【山下】それは、やり方によって変わるんですか? お金の話っていうのは。赤字は、やっぱり予想していたお客さんが来ないとか、たまたまいろんなトラブルがあってそうなっちゃったとか、いろんなケースがあるんですよね、たぶん。

 

【城島】やっぱり、赤字にならないというのは、チケット代×人数で、だいたい満杯になることが分かってきたので。

これを予測していたけど、お客さんそれを下回ったねということが、今、ないので。

 

【山下】ああ、なくなった、ほお。

 

【城島】だいたい予算が立てやすいんですよ。

 

【山下】じゃあ、この予算でやっても大丈夫ってところになって、なるほど。

 

【城島】そうなんですよ。結果的に、例えば1番大きいのはやっぱり美術とか……。

 

【山下】ですよね。

 

【城島】運搬費、人件費とかなので。

 

【山下】運搬費も。運搬費って、美術……。

 

【城島】美術道具運んでくるのにすごい大きい車があって、車が大きければ、それを荷下ろししたり積みなおす人もいて。

 

【山下】人もいりますからね。

 

【城島】やっぱり、この世で1番高いのって人件費じゃないですか。

 

【山下】人件費は高いですね。

 

【城島】結果的にそれだけかかっちゃったね、みたいなので逼迫(ひっぱく)するようなこととかもありますけど、今のところは満杯になるっていう。コロナになってからが、ちょっと、去年のね、あれとか不安だったんですけど。

 

【山内】去年は配信もやった。

 

【城島】配信もやったし、助成金にも助けられたし。

 

【山下】助成金はね、助成金は大事ですよね。

 

【城島】去年こそ本当にギリ。とんとんというか(笑い)。

 

【山下】ギリギリだった。

 

【城島】もう、はい。でもやって良かったなっていう感じですよね。配信も700くらい来ていますんで。

 

【山内】以前ほら、向こうから、劇場から頼まれた仕事でね……具体的には言えない。劇場から頼まれた仕事だから全部制作費をもってくれるのかと思ったら、結局劇場費は……。

 

【城島】「払ってください」って。

 

【山内】結局こっちで払うということを、あとで……。僕、知らなくて。

 

【山下】あとで言われるとつらいですよね。

 

【山内】あとでっていうかね、ちゃんと初めから聞いていれば分かっていたかもしれない(笑い)。

 

【山下】(笑い)

 

【城島】ただ、「こんなに高いんですか」みたいな。

 

【山下】そういうプロセス、ちゃんとしたほうがいいですね。透明化してね。

 

【山内】あのとき、あの辺りが1番きつかったね。やっぱり、赤字になる……で、「試算すると200万くらいの赤字です」とか、城島さんが言って。

 

【山下】それはつらいですね。

 

【山内】200万の赤字が出るのは分かっていてやるっていうのはいかがなものか。インパール作戦じゃないんだから。

 

【城島】最初、うち、まだ助成金いただける集団ではなくて……。

 

【山下】それ、なんかあるんですか、規定が? もらえるもの……。

 

【城島】もちろん文化庁で「これは支援するにふさわしい」ってならないと。それで、やっぱり知名度もありますし、いろんな理由があるんですけど、「この劇場でやるからには、助成金取れますよ」って言われて、それを頭に入れて予算組んでいたら取れなかったみたいな。しかも劇場費かかるっていう、ちょっと驚きの出来事が起きて、ちょっとびっくりしたっていう。

 

【山下】なるほど。二重に、ちょっといろんなことが起きたということ……。

 

【山内】うん。そういう、どこの劇団でもそういうことはあると思うんですけど、そういう経験を経て、だから安全な、安全パイを、やり方に……。

 

【山下】リスクをちゃんと取らずにね。

 

【山内】なっていくっていうか、まあ、そういうことですね。だから、あんまり劇場を大きくしないということですけどね。

 

【山下】それは、そのほうがリスクは減るんですか?

 

【山内】そりゃそうですよ。

 

【山下】そうか。1箱に入るお客さんの人数が増えちゃうから、それに対してまたコストがかかってしまうんですね。

 

【城島】だいたい今、こういうコロナで、またいつ感染爆発するか分からないとこあると……。

 

【山下】そうですよね。お客さんが50%になっちゃうと、絶対採算取れなくなっちゃいますしね。

 

【城島】そうですね。なかなか予測が立てづらくなって。あと山内さんが、やっぱり山内さんのポリシーで、いい演劇を安く観てもらいたいっていうのがあって、うちの企画、驚くべき金額で、3800円とかなんですよ。

 

【山下】そうですよね。3千円台ですよね、いまだに。

 

【山内】そうですね、3000円です、いまだに。

 

【城島】いまだに、いまだにねって。

 

【山下】金額は、山内さんとも相談して決めるんですか?

 

【城島】そうですね。で、私が何回か「4000円にしましょうよ」とか……。

200円なんですがとか、早割で安く出すから……。

 

【山下】そうか、そういうのもいいかもしれないね。早めは安いとか。

 

【城島】……一般はどうですかって言っても嫌だって言うんで。一応、3800円という、今でも信じられない金額で。

 

【山下】ありがたいことです。

 

【城島】もちろん、演者さんたちにも協力して、ギャラとか協力していただいたりとかいう結晶ではあるんですけど、やっぱり普通の半分以下。あの演劇のクオリティだったらもう今8000円、1万円、当たり前なんで、そういう意味では頑張って金額を保っている……。

 

【山内】そこまでじゃないと思います。

 

【城島】でもだいたい今6000円、8000円、1万円ですよね?

【山内】最近、小劇場でも4000円こえていますね、案外。

 

【山下】そうです。今ね、高くなってきて……。

 

【谷】今、4500円とか、5000円、6000円くらいがだいたい多いですよね。

 

【城島】やっぱり、座席、置ける座席がね、どうしてもあれなんで。

 

【山下】この前、オフィスコットーネの綿貫さんと飲んでいたときに、劇場のチケット代が少し上がってきているから……。

 

【山内】上がってきている、だから。

 

【城島】結構、上がってきていますね。

 

【山下】結構、逆につらいですっていうことを言っていました。これ、お客さん入るかなっていうのが、いつもちょっと不安だって言うんです。

 

【城島】そうですね。今、だから二分化していますよね。

 

【山内】いや、若い子はね、若い子は無理、無理。5000円、6000円なんて。

 

【谷】そうですよね。

 

【山内】絶対無理。もうね、3000円台でなんとかっていう感じですよ、若い子。

 

【山下】今、アンダー25とかあるじゃないですか。

 

【城島】うん、ありますね。

 

【山内】ある、ある。

 

【谷】ああいうのはね。

【山下】あれはどうなのかな、とかね。

 

【山内】それはいい。

 

【山下】学割とか。

 

【山内】やり方としてはあるかもね。

 

【城島】アンダー25で半額とかありますね。あと、高校生以下1000円とか。

 

【山下】そうそう。で、おじさんは、ちょっと、あの……。

 

【城島】そうか(笑い)。

 

【山下】男性40代以上は高めとか?(笑い)。

 

【谷】(笑い)

 

【山内】アンダー30は安くなる。

 

【城島】なんかそういう希望があって、やっぱりご自身の経験だと思うんですけど、いい演劇をたくさん観るっていう、チケット代も抑えたいっていうのが、もう、それのポリシーにやっぱり助成金とかも協力してくれているっていう感じなので。

 

【谷】そういうことですね。

 

【山下】そうか。そこは頑張って文化庁も協力してほしいですね。

 

【谷】ええ、本当ですね。

 

【城島】それでなんとかマイナスにならないようになりましたけれども、やっぱり助成金というか、文化庁の応援があるまでは、やっぱりなかなか厳しかったですよね。

 

【山下】そうか。でもそれを本当に、もう20年近くお続けになっていらっしゃるのはすごいことだと思います。

 

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/

 

担当 青山直美

いつもご依頼ありがとうございます。「いい演劇を、安く」という山内さんのポリシーに、演劇への姿勢やお人柄まで、すべてが詰まっている気がします。そして、多方面に目配り、気配りの効く城島さん、お二人の相性がいいのもよく伝わりました。プロデュースは、本当に大変なお仕事ですね。演劇にかかわる全員が、気持ちよく楽しくいられるように整えていくお仕事なのですね。今度は、そのことにも目を向けて、演劇を観たいと思います。

 

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