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【PODCAST書き起こし】オフィスコットーネの綿貫 凜さんへ演劇人生について聞いてみた(全7回)その5 劇作家:大竹野正典 作品との出会いと公演

【PODCAST書き起こし】オフィスコットーネの綿貫 凜さんへ演劇人生について聞いてみた(全7回)その5 劇作家:大竹野正典 作品との出会いと公演

【山下】ちょっと私が最初に綿貫さんの作品を見せてもらった、大竹野さんについてお話をお聞きしたいと思うんですけど、大竹野さんの作品に出会われたのはどういうきっかけで、綿貫さんがたくさんこの作品をプロデュースされてますけど、それはどういうあれでなったんでしょうか?

【綿貫】いろいろなこと、本当にすぐ思いついて。パってやって。そんなに長くも続かず。

【山下】そんなことはないです。

【綿貫】そんなことを繰り返してたときが、また時期が、第2次迷走時期みたいなことがあって、2009年以降、自分が一体何を作りたいんだとか、何か向き合ったときに、あれ? って思って。「あれ、何が作りたかったんだろうか。」とか、一瞬分からなくなっちゃったときがあって。そのときにかなり何が作りたかったのかなとか、どういうことがやりたいのかなってことを自問自答している時期が1年ぐらい会って。でもとりあえず何か自分がいいと思う、当時やはり本当にお金がなかったので、若い出始めの頃なかなか声を掛けられないんですね。つまりもう既に売れている方には声は掛けられない。

【山下】俳優さんとか演出、作品の人。

【綿貫】いろいろな事情で。なるべく早くいろいろ見て回って、「これ面白いな。」と思ったらすぐお話しして。私の所で1本やってもらえませんかっていう話をして。ちょっと弱点として、資金があまりありませんっていうところから。

【山下】ちゃんと説明して。

【綿貫】 説明して。まあ俳優さんなんかはやはりその脚本でやりたいとか演出でやりたいというところで乗ってくれたりとかするんですけど、具体的にどれほど集客できるかとか、まだあまり表に出ていない感じでやってたりすると、なかなかどうなんだろうって。確実な物が読めないことをやり続けてましたよね。その3年間ぐらいよく言われてたのは、ちょっと早いんだよねとかって、周りの人に言われてて。

【山下】時代より早いと。

【綿貫】いいところ行くんだけど、ちょっと早すぎるんだよねとかよく言われてました。「え、それ、どういう意味だろう。」と思って、でもすごく人気になったらうちはやってもらえないしと思って。だから先に目を付けるって言うんですかね。しかない。

【山下】先物買いをせざるを得なくなる。

【綿貫】そうですね。だから歩き回って本当に面白いと。

【山下】本当に面白いと思ったから、数年後すごく有名になってるからちょっと早いんだよねってなったんじゃないんですか? 必然かも知れない。

【綿貫】 そういうふうに、目利きみたいな感じで言われることも。

【山下】それはでも、過去のプロデュース見てると本当にすごい演出家の人とか、すごい作品を探してきてやってらっしゃるので、それはどうやってこれ探してきてるのかなって。

【綿貫】本当に確実に自分で足を使って絶対に見て、ちゃんと見て、ちゃんと話して、ちょっとストーカーっぽい感じかも知れないんですけど、ちょっと入り口で待っていて、ほんと見て面白かったら、「すいません、お話いいですか?」とかいう、ちょっと危ない。

【山下】私こういうものですけどって。

【綿貫】みたいな感じの、結構突撃なことをしていましたね。

【山下】でも大事なことですよね。そういう勇気。

【綿貫】またそれもほら、あまり頭考えないタイプ。

【山下】いや、それはいいと思います。でも断られるからどうしようっていう、怖い。

【綿貫】ないです、ないない。

【山下】ないんだ。

【綿貫】だって断られたら、「嘘嘘、冗談。」って言えばいいだけだから。でももしかして、お声を掛けたらやってもらえるかもしれないって思ってる。

【山下】そっちの方が勝つんですね。

【綿貫】勝ちますね。だからちょっと自分では認識してないんですけど、喫茶店とかで話してると、だいぶ近づいていってるみたいなんですよ。

【山下】距離が近いと。

【綿貫】でもそれは流山児事務所の流山児さんとかの話とか、よく聞いてて。バスとか電車に乗って、俳優さん見つけたら横に座って「どうも、演劇とか興味ない?」とか(笑)。言うとか、本当に飲み屋とか。そういう話をするって聞いて、これだと思って。

【山下】飲み屋があるから興味がありますね。

【綿貫】そう。でもそういうこと大事っていうか。もちろんやってくれないかもしれないんですけど、それはやはりだめだったときはさっき行ったみたいに、「うそうそ、冗談。」で簡単に。恥とかではない気がするんですよね、本当に。俳優さんとかって面白くて、新しいことに挑戦したいってこととかあったり。

【山下】そういうタイミングって有りますよね。

【綿貫】そういうタイミングと本当にマッチすると、やるって言うんですよね。こんな得体の知れない。

【山下】こんな人がやってくれるの? みたいな。

【綿貫】こんな得体の知れない訳の分からない人がやってきて、やりませんかとか言っても、やるんですね、これが。

【山下】でもそれは、最初のころはそうだったかもしれないけど、さすがに今はもうちゃんとあれですかね。

【綿貫】いや、そんなことはないですよ。

【山下】今もじゃあいろいろ見て、「ちょっとすいません。」って言って話もされたりするんですか?

【綿貫】しますし、そうですね。基本は絶対見ないと、絶対見ないと。

【山下】それはもう生で見てちゃんと。

【綿貫】そうですね。自分の感覚を一番信じて。かもしれないですね。

【山下】それはプロデューサーには大事だと思います。

【綿貫】それが、だから例えば世間に評価されないかも知れないですけど、ただ自分でそれがいいと思ったわけで、でもそれがヒットしないかも知れないんですけど、でもそこを信じるしかもうないんです。この年で、どうしたらいいんですかって。

【山下】それは絶対です。

【綿貫】だからそれだけはもう、刑事のように靴を減らしながら歩いて、ちょっとでも面白いとか聞くと必ず当日券とかで見に行って。でも必ず私がちょっと噂を聞きつけて見に行って、当日券で見てると、必ず会う人っているんですよ。

【山下】演劇関係者に会う。知り合いに会う。

【綿貫】そう。お互いに見て、「あ、またあなたも察知したのね。」っていう、お互いに。

【山下】業界のライバルみたいな感じ。ドラマみたい。

【綿貫】ライバルっていうか、早く、どこよりも早く新しいところを。

【山下】先物買いをちょっとしようと。

【綿貫】探している方に会ったりして。だからお互いに客席で、「あ、うん?」って感覚が面白いですね。

【山下】その中でちょっと最初やって、少し低迷期じゃなくて、迷い期があったときに、大竹野さんの作品に出会う。

【綿貫】そうなんですよ。本当に低迷期。

【山下】どんなタイミングで出会ったんですか?

【綿貫】その時代は本当に迷走してて、いろんなことを毎日考えてて。やはり劇団制作からプロデュースになって、人と人とのつながりっていうか、何か物を作るときに共通言語とか作りたい物はあるんだけど、どうしてもその、例えば俳優さんですと、芝居を見てオファーして、実際1カ月一緒にやってみたりしても、演劇観みたいなのはちょっとなんとなく合わなかったりもするわけですよね。それ、どうしたらいいのかなと思って。

そうすると、やはり1度やったことあるとか、ある程度話が合う仁か、もう声が掛けられなくなってくると、狭くなるんですね。もちろん劇団とかだといいと思うんですよ。だって絶対的に合ってるわけだから。共通言語があって。この目指したいっていう、しゃべらなくても。わりと無言で。何かそういうのができないかなってずっと言い続けてたんですよ。無理だとは思うんだけどって言って、何人かの役者さんに、例えば月に1回だけでも集まって戯曲を読んでみようとか、それに関してのギャランティーは払えないんだけど、どうかなとか、その戯曲を、これやりたいなと思っても、実際に俳優さんの声を聞いて、本当にイメージを広げたいとかあるときに、劇団員とかいないので、なかなか難しいとか。

俳優さんもやはり、何年も出番がないとか、プロデュースが多いので、みんなオーディションも受けるけど場所がないってことも多かったので、何かそういう月に1回定期的に訓練の場があったほうがいいんじゃないかなって思ったので。どうかなっていうことを。提案していたんですけど。なかなかみなさんお忙しくて、そういう遊び的なものにはなかなか載ってくれない感じだったんですけれども。

それで、なんとかならないかなってちょっと本公演というか、大きく芝居を作る前に、ちょっと試作みたいな、いわゆる試演会みたいなものでもいいんですけど、お金を掛けずに、何かカフェとかそういうところで簡単に試しに、リーディングじゃないんだけど、ちょっと実験的に音響とか照明とかも入れずに、本当に10万とかの資金でできないかなってことを、ある晩思いついて。そしてまたそこで、何かちょっと名前付けたほうがいいかなとか思っていろいろ考えて。じゃあアナザーっていうのはどうかなと思って。それでちょっとスタイルの違う物をやるっていう物に、賛同してくれる人がいれば、ちょっと今言った話を全部その金銭的にはほんの少量しかお支払いできないんだけど、協力して、出番がほしいって方もいらしたし、そういうことに興味があるって方もいらしたので、本当にそういう5万とかそういうところからスタートしましたね。

ただ、いろんな作家とかにも声をかけて、2万で本を書いてほしいとか、そういうことも頼みましたけど。その作家の方にはいろいろ断られました。それは無理みたいな(笑)。そうですよね。

【山下】それであれですか。そこで大竹野さんの作品と。

【綿貫】それで、1回目だったから、俳優のシライケイタさんと仲良かったんですよ。

【山下】 温泉ドラゴンで演出されているシライケイタさん。

【綿貫】そうですね。そのころは俳優さんしかやってなかったんですけど。彼もちょっとぶらぶらしてたので。ぶらぶらしている人捕まえるのがうまいんですよね。

【山下】さすがプロデューサーですね。

【綿貫】そう。またある日呼び出して、「ちょっと面白い場所見つけたので、見てみない?」って江古田のマクドナルドで待ち合わせして。駅から15分ぐらいあるところにカフェがあったんですよ。ほんと、12坪ぐらいに。そこで知り合いの人がリーディングやってたので。ほんと、15人とか20人しかカフェの椅子で見るみたいな感じだった。ここでちょっと何かできるかもと思って。金額的にもかからない。ほんと、全部の予算5万みたいな感じで。でも20人ぐらい、1000円とかでどうかなみたいな。それがやがて本公演に行けばいいかなって。でもちょっと場所も狭かったので、3人芝居とか二人芝居しかできないなと思って、そこから二人芝居の本を探したんですよ。

【山下】それは二人芝居限定で本を探して。

【綿貫】限定で探した。3人でもいいんですけど。

【山下】どうやって探すんですか?

【綿貫】場所はもう押さえてしまったので、元々知っている本も読み直したし、あとは検索したりとか、あと知り合いに連絡して聞きまくって、海外戯曲でも日本の戯曲でもいいんですけど、何か記憶に残ってる二人芝居はないかを聞いて、相当読みましたね。30冊ほど取り寄せたり。

そのときにふと思い出したのが、ここから1年ぐらい前に、知り合いの俳優の人が二人芝居やっていたなと思いついたんです。それは見てないんですけど、見れなかったんですね。ちょうど公演重なってて。「あ、そういえば二人芝居やってたな。」って。またその名前思い出したので、連絡して、見てないからそれはどういう芝居だったのかとかいうことを話できて、それは加藤文太郎という昭和の初期の登山家をモチーフにした二人芝居で、結構生と死みたいなものを書いてるいい本なんだっていうのは。それは、上演許可は取れるのかって話をしていたりして。もう作家の方がお亡くなりになられてて。奥さんが管理してるから。でもそんなに難しくないってことで、あと上演時間とか聞いて1時間45分って。それはちょっと長いから、カットしなくちゃ行けないと思うんだけどとかいう話もして。

とりあえずその本を持っていたら読ませてほしいんだけどって言ったら、その彼がすぐ次の日送ってきてくれたんですよ。早いんですね。すごい私、もうせっかちなので。次の日にすぐ送ってきて。ちょっと出かける間際に届いたので、それを持って、それを持ったまま電車に乗って、中で開けて。電車に座ってちょっと読み始めたんですね。ふんふんって読み始めて。ふんふんって思って。どんどんどんどん読んで。半分ぐらい過ぎたときに、「あ、これやろう。」ってすごく面白いと思ったんですよ。

【山下】なるほど。直観でもうそこは。

【綿貫】直観で雷に打たれたような。やはりすごいそのときもいろんな本読んで。ほんと30冊ぐらいいろんな本を読んでたんですけど、もうちょっとト書きとか台詞とかの切れが全然他の本と違って。これものすごい天才かも知れないって思ったんですよ。「こんな作家、なんで私気がつかなかったの。どこにいるの、この人。」って。

【山下】ぼくたちも綿貫さんのおかげで。

【谷】知ることになった。

【山下】知ることができました。ありがとうございます。

【綿貫】あ、いえいえ。それが本当にきっかけで二人芝居だったし、ちょっと短くして、すごい狭いところだったので、本当にもう5万とかいう感じだから、そこにある椅子を使って簡単に吹雪の映像だけ使って。結局やったことないんですけど、私が音響とか映像のスイッチングやって、初めてですよ、それも。一応二人芝居だから通しは私がこっち側で見て意見言うみたいなことも。何かそういうことがたぶんやりたかったんでしょうね。迷ってたし、違うことでももうちょっと作品作りができないかなと思って始めたらちょうどよかったんですよね。

1回やったらすごい感触が良くて。見に来た方にすごく面白いって言われて。そうなんだと思って、じゃあこれちょっと続けていこうかなと思って、ちょっとしんどいんですけど、いろいろ協力も得なきゃ行けないことも多いんですけど、ちょっと続けて、もしよかったら本公演に見たいなかたちのベースにしたらどうかなと思って。

やはりいきなり本公演に賭けるのが、ちょっとなかなかさっきお話ししたみたいに共通言語の問題とか、私がこういう本を書いてほしいって言ってもなかなかそういった本が上がってこないから、だからもう少し作品作りに時間をかけるためにそういうベースを作ろうと思って、アナザーをやり始めたときに出会ったのが大竹野さんだったんですよね。

でも本当にそれは偶然なのか必然なのか分からないですよね。あのときにそのことを思い出さなかったりとか、『山の声』を読まなかったりしたら、どうだったんだろうなとは思いますね。実際そのあとに大竹野さんの戯曲集をすぐ買って、他の作品も読んだら本当に面白かったので、もうこれはすごく面白いし、自分の感覚にやはりちょっとアングラーも入っているし、すごい感覚に近い物があったので。これはちょっと全部やりたいかもって思って、始まっちゃったんですね。またそのときもまた深く考えていないのに。だからこれをシリーズでやろうとか。

【山下】よかったです。やっていただいて。

【綿貫】とかっていうことでしかなかったんですよね。でもスタートは大竹野さんとの出会いはそういう感じで。

【谷】これ、江古田のときは何日公演だったんですか?

【綿貫】三日間で、1時間10分ぐらいにしたので。1日3回ぐらいやったんです。

【山下】そうか。短い期間になりますよね。

【谷】じゃあ9公演ぐらいやったと。もっとやったんですか?

【綿貫】いや、8とかだったと思うんですけど、とにかく1回入れられる人数が。

【山下】20人ぐらいっておっしゃってました?

【綿貫】20人も入ったらいっぱいみたいな。

【山下】いっぱい。じゃあ15人とか。

【綿貫】みたいな感じだったので。やはり回数をちょっと重ねないとって、それも2000円とかだったと思いますし、やはり最初だったので、みんな何してんのって。とにかく騙されたと思って見てほしいってことと、本が面白いってことだけしか呼べなかったので。俳優も無名だったし。大竹野さんのことも誰も知らないから、結局信頼関係で、今までうちに出演してくれてた俳優の方とか、そういう方にみんな声を掛けてて。

本当だったら試演会ですよね。見に来て感想聞かせてほしいって。ちょっと新しいこと始めたからって言ったら、たぶん皆さん本当にありがたいですよね。着てくれて感想言ってくれて。それですごく面白かったって言われたことで、だいぶ気をよくしてっていうか、またもう1回このやり方でやれるかもっていう、ちょっと迷走。

【山下】新しい方法論を。

【綿貫】そうですね。迷ってた所からちょっとまた手の感触をつかめた。『ガラスの仮面』の北島マヤみたいな。つかめたみたいな感じの瞬間。

【山下】あのマヤは憑依してますけどね。つかめたと言うよりも。(笑)

【綿貫】そんな感じですね。でも本当にこんなに長くというか、このシリーズをまたそのときに始めたときにも、普通逆だと思うんですけどね。普通の人はちゃんとシリーズを続けようと思って、ちゃんと計画して何年にもわたって先まで見据えてやってからスタートするんですけど。

【山下】埼玉の蜷川さんのシェイクスピアみたいなやつ。

【綿貫】そうですね。でも私の場合は相変わらず、やろうと思ってスタートしたらこんな長く。

テキスト起こし@ブラインドライターズ
(http://blindwriters.co.jp/)

---- 担当: 藤本昌宏 ----
このたびは、ご依頼いただき、誠にありがとうございます。
演劇のプロデューサーの方のお話をお聞きしたのは今回が初めてで、短い音源ではございましたが、とても勉強になりました。

素晴らしい作品や役者を探すときには自分を信じることや柔軟に対応して関係を保つことが重要だと分かりました。そのようなことは、他の仕事にも生かせることがたくさんあると感じました。

またのご依頼を心よりお待ちしております。

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