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【PODCAST書き起こし】小山ゆうなさんに演劇と演出・翻訳劇の話を聴いてみた(全4回)その4

【PODCAST書き起こし】小山ゆうなさんに演劇と演出・翻訳劇の話を聴いてみた(全4回)その4

【山下】とはいいながら小山さんは芸風が広くて、東宝のプロデュース公演とか劇団四季のやつとかも。あれはどういう経緯で仕事が来たんですか?

【小山】私、事務所に所属していないので、プロデューサーさんから連絡が突然来るっていうパターンがだいたい。

【山下】「こういうのあるんだけど」っていうので、やりませんかみたいな。

【小山】そうですね。「この時期、空いてませんか」みたいなことの。

【山下】演劇のオファーって結構早いじゃないですか。2年後とか3年後とか。これとかも2年前とか3年前からオファーがあったんですか?

【小山】2年前ではあるかもしれない。ただ、作品によってもうちょっと遅いものも。言っていいのか分からないけど。私はわりと遅くて、私たぶん今仕事が多いっておっしゃったけど、私に最初から頼もうと思っている人って本当にたぶん少なくて、どなたかがちょっとやれなくなったとか何かがダメになったっていうときに思いつかれているんだと思います。だいたいそのパターンが多くて。

【山下】でも、それをがちっと仕事にしていってあるレベルまで持っていくのがすごい。

【小山】スケジュールがたまたま空いているっていうか、わりと時間があるっていうだけだと思うんですけど。

【山下】運も実力のうちですからね。その運をうまく自分の実力にしてやっていくのがいいと思いますけど。このシアタークリエの『ローズのジレンマ』というのはニール・サイモンの翻訳と演出を小山さんがされたんですけど、これはいつもの翻訳劇なのであれなんですけど、もう1個の劇団四季のミュージカル、これは完全にオリジナルなんですよね。これはまず本を作るところから始まっていったんですか?

【小山】そうです。

【山下】それは小山さんも参加して。

【小山】はい。

【山下】台本は長田育恵さん。原作があるんですねこれ。

【小山】そうです。小説ですね。

【山下】これはあれですか? 小山さん、長田さんとか劇団四季の制作部とかと一緒にこれ探したんですか?

【小山】これは劇団四季さんの中で16年ぶりに新作のミュージカルを作るってなったときに、幹部の方たちだと思うんですけど何人もの方から候補が出た中で選ばれた、かなり考え抜かれた、もう何年も前に。

【山下】じゃあこれをやりたいんですけどっ、ていうことが元々あった。

【小山】最初からこの作品が決まっていましたね。

【山下】なるほど。じゃあどうするかっていうところから始めたと。そのときに小山さんと長田さんが呼ばれてどういうふうにしていこうかっていう。これ何時間くらいの作品なんですか?

【小山】3時間ありますね。

【山下】ミュージカルですからね。休憩が中にあって。

【小山】ちょっと長くて。

【山下】いやいや、ミュージカルだとどうしても長くなりますからね。でもどうですか? ミュージカルは小山さんは、これ以外に過去にはされていたんですか?

【小山】この前に去年の2月かな? 明治座で『チェーザレ』っていう漫画原作のものをちょうど作っていて、明日から劇場入るねっていうときにコロナで中断になってしまったので、その稽古をしていたっていうだけなので、だからこれが本当に初めてですかね。

【山下】僕はミュージカルはそんなに見ないんですけど、いわゆる普通の劇とミュージカルとの大きな違いは何ですか?

【小山】音楽がすごく力を持って作品を導いていく要素が音楽なので、みんなで作っていく感じがより強い。振付の方、音楽の方、私がいて。

【山下】パートがいろいろ増えるんですね。振付もあるからね。音楽もこれはこれの戯曲ができてから音楽を作るような感じなんですか?

【小山】これに関しては戯曲が元々あって、その歌詞に合わせて曲を作ってくださって、そうじゃない音楽先行の曲も1曲入っているんですけれども。

【山下】なるほど。この原作をベースにしてこのロボットのミュージカルが生まれたということですね。すごく評判が良いので、今福岡で講演やっているそうですけど、今度また劇団四季の自由劇場に戻ってきたら行きたいと思いますけど。

【小山】今年の年末に戻ってくるのでぜひ。

【山下】楽しみですね。

【小山】パペットがすごいかわいいんです。

【山下】パペットは誰か中に入っているんですか?

【小山】いや、人形遣いのようにこのロボットを二人の俳優が後ろで文楽の人形みたいに操ってるんですよ。

【山下】いいですね。黒いのを着て?

【小山】いや、もうそのまま出てます。

【山下】じゃあ文楽の人間国宝みたいですね。(笑)

【小山】そうそう。だから俳優のことも見えるんだけど、だんだん見ているうちに俳優が気にならなくなるっていうすごく不思議な。

【山下】そういうものなんですね。でもそれいいじゃないですか。日本の文楽のあれをやってくるっていうのは。

【小山】パペットのデザインをされてこのディレクションもされた方がトビー・オリエさんという方で。

【山下】トビー・オリエ、書いてあるね。外国の人?

【小山】彼がイギリス人なんですけど、今回来日できなくてオンラインになっちゃったけど、『戦火の馬』っていう舞台があったのご存じですか?

【山下】『戦火の馬』。

【小山】馬を人が操る作品で、ちょっとそれ今度YouTubeとかで見てください。すごいんですよ。日本に来日したときに競馬場に行って、競走馬とパペットの馬が対面するんですけど、本物の馬がパペットを馬だと思っちゃうんです。

【山下】そんなによくできているんだ。すごいな。トビー・オリエさん。

【小山】ていう『戦火の馬』をやっていた方がやっているので、そこが見どころというか面白いです。

【山下】やっぱり気合入ってますね。こういう作品は長く見られるようになるから本当にいいですよね。

また、新国立でやったお芝居、いろいろ演出も変わったと思いますけど、『願いがかなうぐつぐつカクテル』私も見に行かせてもらいましたけど、あのときはフェイスガードをしてやっていましたよね。あれ2020年の何月でしたっけ?

【小山】6月? 7月?

【山下】緊急事態宣言が明けてすぐだったんですね。最初の一番シビアな緊急事態宣言の時ですね。誰も外出していなかったあとに始まったから、やるのかなと思ったらやったので見に行ったら、やっぱり俳優さんフェイスガードしてるんだっていうのがすごい印象深いのと、俳優同士が近くに寄らないようにされていたんですよね。それがすごいインパクトがあって、どんなことが起きたんでしょうかっていうのをちょっと。コロナによってこの2、3年小山さんがやっている演出もそれ対応っていうのがたぶんあったと思うんですね。どんなような、言える範囲でいいんですけど。

【小山】公演中止になってしまった『チェーザレ』。

【山下】明治座の。

【小山】そうです。明治座のときにコロナの影響がいろいろ出始めている時期でそこで体験したのが、わりと個人によって感じ方が俳優さんもだし、お客様もみんな違う。

【山下】そうですね。リスクの感じ方が違うんだね。

【小山】ていうのを通過してのこの作品だったので、元々の演出プランは子どもたちに向けたお芝居だったので客席通路を使ったりとか、子どもたちにぐつぐつカクテルっていう怪しげな魔法のカクテルを一緒に触ったりとか、ロビーも飾ろうねとかいろいろやろうねっていう話をしていたんですけど、それは一切全部できません。このときもう1本同じ子どもも見られるっていう企画でやってらした長塚さんからもお電話をいただいて。

【山下】長塚圭史さん。

【小山】長塚圭史さん。作品を今何が何でも上演することに意味があるのか、元々やりたかったこととか普通に演劇を作るっていうこととかたちが変わってしまうのはどうなんだろうみたいな話をしたりとか、何も答えがない時期なので、相当考えて。フェイスシールドとかも稽古ではしなきゃいけなかったからしてたし、マスクもしてたけど、そんなに本当に意味があるとは思っていなくて、飛沫を防ぐっていう意味では完全にガードなんかできないっていうことは分かっていたんだけど、俳優さんたちの安心感とかお客様にちょっとでも安心感を持ってもらうためにはどうするかみたいな工夫をしつつ、子どもが見に来るはずだったお芝居だけどたぶん子どもはほぼ見に来ないだろうっていう。むしろ演劇好きの大人がこういう状況だけど来たい、応援したいっていう人たちが見に来てくれる作品だから、どうしようかみたいな話し合いが日々俳優たちとも含めて行われましたね。

【山下】あと演劇ってあれですよね。俳優たちと話し合いしながら作るっていうところが大きいですよね。あれは芸術の作り方で映画とかとは全然違いますよね。あれどういうふうに話し合っているんですか? 俳優ってわりとものすごい内容に関与してくるじゃないですか。戯曲の深読みとかされますし。あの辺は演出家としてはどういうふうに対峙していってるんですか?

【小山】俳優さんによってはそれを思っていても言わないっていう方もいらして、私は言ってほしいので聞くようにしていて、どうですかっていうことを聞いて、なんかこう、稽古場が民主的だったらいいなって。みんなが意見を言えて、そこででも最終的に何か選んでいかなきゃいけないので。

【山下】それは演出家が選ぶんですね。でもその民主的な空気を作っていくのはわりと意識しているんですか?

【小山】うまくいっているかはおいておいて、意識はしてますね。

【山下】なんとかさんどうですかとか聞いたりとか。自ら手を挙げて「はい」っていう文化が日本にあまりないから、でも、あてるとだいたいみんな答えるじゃないですか。

【小山】やっぱりすごく考えてらっしゃるから皆さん。このときも作品のことだけじゃなくて、この状況でやることに対してどう思うみたいなことをみんなで、製作さん含めてどうしたらいいだろうっていう話はだいぶしました。

【山下】あとは新国立劇場だからやっぱり国立のあれだから、余計、国の方針と齟齬(そご)があってはいけないので。これはあれですか? 新国立劇場の意向っていうことなんですか?

【小山】ただたぶん小川さんを中心に新国立劇場が作った劇場のガイドラインみたいなものを都だか政府だか分からないんですけれども提出してっていうやり取りを相当されていたと思います。それでここはOKってなったものをガイドラインとして、前提としてやりましたね。

【山下】今も国立の美術館とかが展覧会をやろうと思ったらまたダメだったりとか、この齟齬(そご)が今も起きているので。劇場は50%にして空けているじゃないですかみたいなね。じゃあ映画館もダメだって。何でですかって言ったら、なにも分からないよね。でもあと1年くらいは続くかもしれないから、小山先生もあれですね。またこの状態をずっと継続しながら演出業をやっていくっていうことですよね。今後のスケジュールはオファーがいくつか入っているんですか?

【小山】今後は、発表になっているのは世田谷パブリックでまた。トラムですけど秋にやります。

【山下】素晴らしいじゃないですか。ということは何をやるかとかは決まっている。

【小山】はい。

【山下】じゃあ一斉公開のときには案内ができるということですね。まだ発表になってないですね。

【小山】作品と浦井健治さんが出られるんですけどそこまではたぶん発表になっているかな。

【山下】作品は何ですか?

【小山】ドイツの現代の作品ですね。

【山下】また探してきたんですか?

【小山】これは、私も探してたんですけど、プロデューサーさんが見つけてきてくださってこれどうっていうところで。

【山下】プロデューサーは世田谷の?

【小山】はい。

【山下】なるほど。いつも本当に思うのは、外国の戯曲をこんなのどうやって探してくるんだろうっていつも思うんですけど。

【小山】皆さんすごいですよねリサーチ。同業のみんなにも思います。

【山下】それはあれですか? 公共劇場の人とか文化センターの人とかが日々チェックをしているのをみんなでかき集めてやっているんですか?

【小山】それもあるし、ただ意外と演出家の持ち込みは多いと思います。私はそうでもないですけど、すごい人はすごいリサーチしてます。すごい調べて、資料取り寄せて台本取り寄せてってやってますね。

【山下】あとは、今はちょっと行けないけどエディンバラ演劇祭とか、フランスとかではアヴィニョンとかでやるじゃないですか。ああいうので見てくる人もいるんですかね。

【小山】いるんじゃないですかね。

【山下】この前、連休中に宮城聡演出のSPACの『アンティゴネ』を見てきたんですけど、やっぱり素晴らしくて、海外でうけるなっていうのも分かるし。日本と海外とでコロナ後はボーダーがどんどんなくなっていくと思うから、そういったこともできるといいなと本当に思うし、小山さんとかは日本とドイツの懸け橋になっていってほしいし、海外戯曲はどんどん本当にやっていってほしいと思います。

【小山】現代のものでつながれると面白いですよね。

【山下】そういうのをどうやって探してくるんだろうなって本当に思うんですけど、演劇界の人、これ聞いている人がいたらどんどん新しいやつ見に行きますので、発表してほしいと思います。最後に質問なんですけど、小山さん演劇は翻訳劇が多いですけど、日本の戯曲とか作家とかでこういうのやってみたいなっていうのがあったら教えてほしいんですけど。ああいうのやりたいよねみたいな。別に実現不可能なものでも。

【小山】日本のすでにあるものというよりかは新しい書下ろしというか、新しい作品を一緒に作っていく作業っていうのはやっぱりやりたいなと思いますね。

【山下】いいですね。長田さんとかとも何かおやりになるといいんじゃないですか。

【小山】そうですね。長田さんがすごく忙しくてあれなんですけど。

【山下】日本の劇作家は本当にたくさんいるし。

【小山】そうね。面白い方たくさんいらっしゃるので。

【山下】今、ドラマを見ていても劇作家の人が参加しているものがすごく増えていて。

【小山】そうですね。長田さんもすごいドラマたくさん、テレビ書かれてNHKとか。

【山下】そうですか。目をつけられて。NHK早いですよね本当に。『きれいのくに』って谷さんに教えてもらったやつ、あれも劇作家の人が書いてる。加藤拓也っていう人が。

【小山】加藤拓也さん。それは早いですね。

【山下】それで『ここは今から倫理です』っていうドラマがあったんですけど、それが高羽彩さんが脚本を書かれていて、やっぱりみんな見ている人は見ているんだなと思って。我々もちゃんと放送業界の人間でもあるので、早くいい才能を見つけていいものを作っていかないといけないなって本当に思っているんですけど。

【小山】行き来がそこの垣根もあまりなくなってくるとすごくいいですよね。

【山下】本当に。極論言うとそれでNetflixとかAmazonプライムとかのドラマとかも作れるようになるだろうし。ちなみに小山さんは今演劇の演出だけですけど、他に演出の話があったらやってみたいとかっていうのはあります?

【小山】他にっていうのは?

【山下】例えばドラマとか、ラジオドラマとか、映画とか。

【小山】元々映画とか映像にすごく憧れていたのでやりたいとは思うんですけど、ただやっぱり専門の方がたくさんいらっしゃるからと思いつつ。

【山下】とは言いながらケラさんも赤堀さんも映画作ったりしてますから。あとポツドールの三浦さんも。三浦さんとかだったらわりと世代が近いじゃないですか。

【小山】近いと思います。お会いしたことないですけど。

【山下】でも早稲田ですよね三浦さん。ポツドール。劇研。

【小山】そうですね。

【山下】接点はなかったんですか?

【小山】なかったです。

【山下】そういうものなんですね。

【小山】大学にほぼ行ってないから。接点なんか生まれようもないという。

【山下】ということでちょっと時間が早いんですけど、僕が小山さんに聞きたいことはだいたい聞けたので、今日はこれで終わりにしたいと思います。

最後にお知らせです。このPodcastは東北新社のTFC LABっていうところから始まったんですけど、これ音声がベースのコンテンツなんですけど、これ映像も撮っていてYouTubeにも流すんですが、これ書き起こしをしてもらうんですね。書き起こしてもらったものをnoteっていう。知ってます? ブログみたいな。

【小山】はい。

【山下】あれに全文書き起こしを。

【小山】大変。

【山下】これはお願いしているんです。お願いしたやつがあがってきたら2万字くらいのものがあがってきますので、それも載せられると思いますので楽しみにしていてください。ということで、小山先生ありがとうございました。

【小山】どうもありがとうございました。

【山下】ということで、次回はもしスケジュールが合えば、ドラマで忙しいかもしれませんが長田さんと小山さんと私とでまたお話を『ロボット・イン・ザ・ガーデン』、あと劇作家の大変なところとか面白いところとか、プロダクションをふたりでこの『ロボット・イン・ザ・ガーデン』どういうふうに進めていったのかとかみたいなことも聞きたいと思いますのでよろしくお願いします。

【小山】お願いします。

【山下】ということで次回また楽しみにしていてください。さようなら。

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)

担当:越智 美月
今回もご依頼をいただきありがとうございました。
お客さんの前での発表に向けていろいろと準備を進めてきたことだっただけに、コロナウイルス蔓延によってできなくなってしまった小山さんのショックはとてもよく分かります。また、『願いがかなうぐつぐつカクテル』のお話でおっしゃっていましたが、お客さんの年齢層によって演出や飾りつけなどを変えていることが分かり、なるほどと思いました。
またのご依頼をお待ちしております。

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