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【PODCAST書き起こし】演劇のプロデューサー森元隆樹さん(三鷹市スポーツと文化財団)に聞いてみた。(その4)年間予算とプログラム作成、そして、コロナ禍での公演の苦労話

【ジングル】TFC LABプレゼンツ『みんなで語る小劇場演劇』。

【山下】年間の予算とプログラムっていうのは毎年、年度ごとに作っているんですか?

【森元】そうです。もちろん。

【山下】それはどういうふうにして、提出するんですか。年度末の……。

【森元】毎年7月頃に、来年度はこの補助金の中から予算はこうだっていうのが、提示が来るんですよ。ずっとオープンしてから毎年、本当にカットカットカット。やっぱり、景気がそんなによくない時代になっちゃうでしょ。毎年5%、今年は3%カットとか、だから補助金というのはどんどん少なくなって、今コロナがあって。

【山下】今年は大変でしたね。

【森元】来年度も本当に、もう結構大幅なカットが来て。

【山下】今年はちょっと予算運用が、本当に、また。

【森元】それでも、何とか寂しくないように、と思うので。そこは例えばですけど、落語会とか、そういうので、割と売れそうだなと思ったら、できるだけ経費をチラシを作るだとか、いろんなことをしながら。

【山下】これ、ちなみに三鷹のチラシです。

【森元】落語のね。

【山下】落語会の。こういうのが来てます。

【森元】落語も結構やってるほうだと思うんで。

【山下】そうですよね。本当に。

【森元】だから、経費で抑えられるところは、一生懸命抑えて。

【山下】そう思います。伯山さんですね。これ神田伯山さんの独演会。こういうすごい方を呼ぶんですね。三鷹さんは。

【森元】はい。だから何とか、去年と同じぐらいのボリュームでやるっていうことを、7月とか8月に。

【山下】夏ぐらいにもうやるんですね。

【森元】そっからまずは私の上司に説明をやって、次にうちの財団の中で一番偉い方々にいって。次に三鷹市の担当部署に説明をして、次に理事会評議員会に。有識者とか。

【山下】なるほど。ちゃんとガバナンスがしっかりしてますね。

【森元】その後、財政課のヒアリングとかあったりとか、だから僕が説明をするのは、そこまで、理事会評議員会までですけど。あと議会とか。だから、実際にはうちの企画が来年はこういうことをやりたい、それでこういう予算がいただけたらっていうのは、夏頃から始まって、という感じですよね。

【山下】秋ぐらいには決まるんですか。

【森元】いや、ほぼほぼ、決まるっていうか正式は本当に3月の末です。

【山下】年度末の、もう完全に年度末になってから。

【森元】はい。だけど4月5月、じゃあ何もやらないのかって、そうはいかないから。

【森元】準備しないといけないですもんね。見切りでやると。

【森元】そこはね。いざとなったら執行停止になりますよっていう。

【山下】それを事前に。

【森元】停止条件というのがあります。急に、チケットも売り切れているんだけど中止にするよみたいなことは、一筆約束した上で進めていってチケットも売って、今のところありがたいことに、コロナとか出演者急病とかじゃない限りは中止になったことはないですけども、そんな感じですよね。最終的にはもう3月の議会で決まるっていう。
最初のうちは私がね、一生懸命それを説明してたりして、そのときに市役所の方もね、なかなか私のことが、雇ったはいいけどちゃんとやるのかなこの人、みたいなところが絶対あったと思うんですよ。

【山下】最初はね。入ったころはね。

【森元】だから初期にやった劇団だとね、例えば、これ名前出しても、劇団にあれじゃないですよ。こういうやり取りがあったっていうだけなんですけど、例えば一生懸命説明してますよね。聞いたことないわけですよ市の担当の方とかは。「拙者ムニエル」とか、「猫のホテル」とか。

【山下】三鷹市の担当の方はね。何それみたいな。その単語わからない。

【森元】猫ニャーっていうのは? みたいな。

【山下】「演劇弁当猫ニャー」面白かったですね。

【森元】そうですね。だから、最初はすごい一生懸命もちろん今もそうなんですけど、説明してこういう劇団でこういうところが優れててという説明をして、ぜひ来年招聘したいみたいに言っていったときに、市役所の方がね、じっと僕を見て、森元さんの熱意はわかりましたので一つ教えていただけますか。この劇団は日本で何番目の劇団ですか。って言われたんですよ。わーなるほどなって思って。

【山下】そういうふうに質問されるんですね。

【森元】やっぱり市役所の方って、プライオリティーっていうか、優先順位って考えるんですよね。何番目っていうのが。

【山下】何番目っていうのがあるっていう評価軸が面白いですね。

【森元】今のいいセリフだなと思いながら、いつか市役所の脚本書くときがあったらこれ使おうかなとか。

【山下】面白いですよね。

【森元】思いながら、でもちゃんと予算をもらう立場ですからそこは別に心の中で、ちょっと考えて、20番目ぐらいですかね。って、真顔で。仮にそれが200番目の劇団でも、それは向こうの方が20番目って書いているからこれ議会で独り歩きするのかなと思いながら、いうぐらい最初はね、そういう質問が来たら。あとは、ケラさんとご一緒したときがあって、ケラさんとご一緒するときに、企画書っていうか審議説明する、上司にも説明するときは、ケラリーノ・サンドロヴィッチって書いてあって。

【山下】誰やねんっていう話ですね。

【森元】(日本人です)って、それはそういうもんなんですよね。なんで日本人だけどそういうネームでやっておられますみたいな。だから、やっぱりそういう中で最初の2、3年は、なんかやっぱりね、有名な女優さんとか、有名な男優さんだったら、あ、その人来るのって。

【山下】はいはい。わかりやすいですもんね。

【森元】わかりやすいし、俺ファンなんだよねっていう話になると思うんです。さっき言ったような地方回るような公演だと、だいたい1人ぐらいそういう方が入ってたりされるから。だけど、うちが仕掛けたときにシティボーイズはわかってたかもしれないですけど、ア・ラ・カルトにしてもそうだし。

【山下】「遊◎機械全自動シアター」はわからないと。

【森元】そうですね。だから、それで最初のうちはそういう説明が必要だったんですけど、何とかお客さんもたくさん入って、新聞とかにも、今度こういう公演があると結構雑誌とかでも取り上げて、それはデータで出しますんで。

【山下】それPR効果がありますもんね。

【森元】結果報告って出すので、そしたら……。

【山下】PRって大事ですよね。

【森元】3、4年ぐらい経ったときに、結構、盛り上がってるらしいね、って頑張ってねっていって、3、4年目ぐらいからあんまりそんなに言われなく……。

【山下】言われなくなった。

【森元】「ままごと」って書いてあっても、普通書いてあったら「ままごと」って?言われますよね。

【谷】「ままごと」、「はえぎわ」とかね。

【森元】そうですね。「サンプル」とかね。

【山下】「サンプル」とかどういう意味なのか、わけわからないですよね。

【森元】なかなかね。わからなかったと思うし、頑張ってねって市の人に応援してもらえるように、ぜひ見に来てくださいみたいな感じで言って……という感じで。だからこれをやりますやりますだけじゃなくて、これが予算としてちゃんと収まってるか、あとバランスが取れているかとか、やっぱり公立ホールでやる以上絶対必要なことなので。

【山下】我々もこのポッドキャストのプロジェクトも予算書をちゃんと作ってやってるんですよ。それの結果報告がね、大事なんだなとかっていうのが、よくわかりました。確かに。

【森元】それで、やっぱり実際に見てもらったりとか、見に来てもらえばまた直接な評価かもしれない。見にね、お忙しいですからなかなかそうは簡単に見に来ていただけなかったときに、ちゃんと頑張ってやって、お客様からもご支持いただいてますって、言うのはやっぱり結果。

【山下】結果の提示ですね。

【森元】あと個人情報を隠したアンケート。アンケートをコピーして渡して。

【山下】アンケートね、入ってますもんね。必ず三鷹の。

【森元】そうですね。そういうのを見てもらって、盛り上がってるんだね、なんか楽しそうだから今度見に行くよとか、いつでも来てくださいみたいな感じで。少しずつね、実績を作っていって、でもそこにはやっぱり公立ホールで仕事をするっていうことのある程度の制約は、そこはしっかり押さえながら、どういうふうにバランスをとって、でも自分のやりたいことをやっていくかっていうことを計算していかないと、ただやる、やりたいです、やりたいだだけだと市民の人から離れてっちゃう可能性はあるので。

【山下】これは、でも、会社で新しいプロジェクトを立ち上げる人も同じですよね。

【森元】はい。そうですね。

【山下】多分、我々のこのチームも同じだと思うんですよね。それを上の人の支持も得られながらファクトを出していって、結果こうなっていますよっていうのを出していくと、なんとなくじゃあやっていいよっていうふうにね。

【森元】なんか面白かったねって。

【山下】続けていいよってなるかもしれないですね。

【森元】だから、何でもそうですね3、4年はかかるのかなというのはありますけどね。ただやる以上はとにかく、成功。東北新社のこの企画においても、どういうコンセプトであるかわかりませんけど、私とか先ほど言ったように本当にこれは入らないかもしれない、これはあまりお客様は少ないかもしれないけど、今やる意義があるっていう言い方をする。でも、そういうことを言ったけども、やる以上はすごく支持を得たということを何とか出せるようにすると、ああ言ってたけど、すごい支持されてるねみたいな、そこは、頑張りますよね。

【山下】プロデューサーとしてすごくいいお言葉を。僕もプロデューサーなんですけど、すごいなって思って。

【森元】いやいや。

【山下】ちょっとだけ時間あるので最後に、今日はこれで最後にしますけど、今年は本当にコロナになってしまって、そのときにね、森元さんたちはどういうふうに、三鷹は会員のこういう機関紙を発行しててですね、こういうのがあるんですけど、僕も会員にならせていただいてるんですけど、今年は、でもコロナでもう大変なことになっているっていうのをですね、観客席の作り方とか、おっしゃったのでちょっとその話をしていただきたいなと思って。

【森元】最初は2020年2月3月の頃はまだ他の劇場でやってる劇場もあったりとかして、でも結構早くから2月の下旬には、ここまで公演全部中止にはできないか、3月中旬まで中止できないかとか、すぐ来たんですよ。結構。

【山下】それは上の方から?

【森元】市のほうから。

【山下】なるほど、それは行政ですからね。

【森元】それは市の前段階として、国が言って、都が言って。それで来たなと。最初はいろいろ万全にやりますから、何とかやらせてもらえないですか? とは、言ってたんですけど、やっぱり何とか3月15日まで中止にしてください、で終わって3月31日まで中止にしてくれ……。

【山下】なるほど。緊急事態宣言は4月6日あたりに発出でしたよね。

【森元】やがて、ちょっとずつ、ちょっとずつ伸びてったんですね。ここまで、もう4月の頃には、もう来年の3月頃までは中止にできないから、もう今を飛び越えてますよね。もう見えないから。市の方もどうだみたいな話とかも来たんだけど、いや来年3月は。それはやむを得なかったらもちろんそういうことも考えるけども、今からもう来年の3月まで全部っていうのはちょっと勘弁してもらいたい。

【山下】もう2月の公演のチラシが。

【森元】ありますけどね。でもだからそれはいろいろ話し合いをしてもらって、じゃあ12月末でどうか10月末でどうかって言って。もちろんコロナの対策をちゃんとやることが大事だから、もう2月3月の頃は結構何とかできないかって話をしてたんですよ。2月の終わりから3月中旬ぐらいまでは。

【山下】2020年の2月から。

【森元】そうです。2020年の2月の中旬から3月上旬ぐらいまでは何とかできないかという方向で……。

【山下】だから、学校が休校になる頃ですよね。

【森元】はい。やっていたんですけど、3月の中旬ぐらいからは、勇気ある撤退はもう厭わない。要するに、中止延期はもう厭わないから、状況を見て判断させてくださいって言って、市と協議をして、じゃ6月末までは中止にしてくれと。そこまでは……。

【山下】全部中止あるいは延期。

【森元】中止か延期。例えば毎年やっていた太宰治の朗読会も6月の20日頃だったかな。もう出演者の方も交渉終わって、作品も選んでチラシも作ろうかってところだったんだけど中止みたいな。申し訳ないみたいな感じで。非常に残念なものはもちろんいくつもあったんですけど、延期で、いくつかはもう中止になりました。それは、例えばうちのホール1年前でほとんど埋まっちゃうんで、振り替える日がない。

【山下】振り替えができないんですよね。

【森元】出演者の方々も皆さん人気も実力のある方ばっかりですから、要するにないんですよね。こっちのホールの空いてる日と出演者の方の空いてる日なんか、合致。そしたら、残念だけど今年はって言って中止。それから、あとは延期。だから、なんとか日が合えば延期。ところが、もともと1公演で100%……。

【山下】満席にするってことですね。密になってしまう。

【森元】満席の公演だと密になっちゃってるから、これを50%にしなきゃいけないって言うんで、出演者の方に頼み込んでもちろん出演料は倍とは言わないけども、1.5、1.8というような話とか、1.2とか……それはいろんなご相談の上なんですけども、2公演にしていただく。

【山下】1公演だったのが2公演になる。

【森元】はい。志の輔師匠は、ほんとありがたいことに2公演いただいて。

【山下】あれは、2日間になりましたよね。

【森元】あと、東西狂言の会は、12時と3時にしてもらったのかな。

【山下】2公演にしたんですね。

【森元】もともと3時だったのを12時と3時にしてもらって、ただ、2公演にしたら、50%になるかっていったらそうではなくて……。

【山下】なんですって、これは僕も知らなかった。

【森元】ここから、ほとんどの人が2枚とか買っておられるので、これを離さなきゃいけないんですよね。これがパズルみたいにね、この2人をこっちにやったらここにもともと座ってた人はこっち行ってもらって、まずどっちの日程を希望しますかっていう往復はがきを募って、それが返ってきてそれも50パー50パーになってないんで、4・6とかでわかれてるんで、そっから例えば志の輔師匠だったら、8月15日と16日だったんですけど、8月15日を希望8月16日を希望、どちらでも……。

【山下】あと、どっちでもいいっていうのがありましたよね。

【森元】どちらでもいいっていうのを作ったんですよね。項目として。なので、どちらでもいいっていう人を少し少ないほうの公演に振り分けたりして。でもパズル1日かかりました。それで新しい席のチケットを送ってみたいな。だから、あれがちょっと大変すぎちゃって。

【山下】職員の人と皆でやってて、もうパズルみたいになってた。最後にパズルが組みあがったんですよね。

【森元】そしたら、もう大歓声が。

【山下】わーっとなったんですって。

【森元】おそらくそういうもんですよね。パズルでこうやって、何ていうのかな……。

【山下】ジグソーパズルの最後の1ピースがカチッとはまるのね。

【森元】ジグソーパズルとか、迷路とかで、おそらくこの道行けば出るってわかったときに駆け足になったりするじゃないですか。最後のね、20手ぐらい見えてきたんですよ。

【山下】20手。次が見えたと。

【森元】湧きあがりましたもんね。おーみたいな。いける! みたいな。

【山下】それ聞いて、そこまでの努力があったんだなって思って、あの公演が。本当にびっくりしました。

【森元】いやいや、それでも、やれるかどうかもわからなかったし、でもね、本当に何て言うんすか。可能な限りですけどね、もちろんマスクしてフェイスシールドして、チケットもぎる人はゴム手袋して。

【山下】そうですよね。完璧な感じで。

【森元】やるだけのことはやって、ありがとうって。もちろんキャンセルも受けたんですよ。コロナのご時世なので、キャンセル希望の方は、キャンセル受けますよってやりましたよね。大変でしたね。

【山下】怖いからね。来れない人も。大変でしたね。持続することが大事だと思うので、本当に続けていただいて、僕も楽しみにしてますけど、実はこのポッドキャストのプロジェクトで落語講談っていうのをやっていて、それと小劇場を僕がプロデュースしてるんですね。またその時にもまた森元さんに来てもらいたいなって思ってますけど。

【森元】僕で良いのかどうかわかりませんが。

【山下】いやいや、こんなそうそうたる。

【森元】今日みたいなね、まだ演劇たどり着いていないので。

【山下】そうですね。

【森元】これ、怒られるんじゃないですか。

【山下】いや、僕ね、でも幼少の時の森元さんの話を聞きたかったんですよ。

【森元】山下さんそう言ってくださるけど。

【山下】1回ね、森元さんにフリーペーパーの取材をしたときにちょっとだけ聞いたんで、学生の時代に演劇を始めたっていうのを聞いたんだけど、それ以前とその演劇はどうだったのかなっていうのをやっと聞けたので、これはこの機会ないと聞き逃すと思ったんです。

【森元】山下さんにはそう言っていただけると。お客さん付いてきてください。

【山下】本当に。

【谷】よそではあんまりしゃべったことないんじゃないですか。

【森元】インタビューを受けて1、2回。

【谷】ここまで深くはないでしょう。

【森元】ここまで深くはないですね。

【山下】このBRAIN DRAINだからできるこの深い。

【森元】親父が警察官だっていうのはしゃべったことないですね。確かに。

【山下】貴重なお話を本当に。

【谷】ありがとうございます。本当に。

【山下】ありがたいです。最後に決まりのあれがありまして、このTFC LABのPodcast Station BRAIN DRAINの番組なんですけど、このBRAIN DRAINでは、noteを開設しております。本日のトーク内容とか、これ書き起こしをしていただいてですね、それをまた文字原稿にしていきます。ここにはBRAIN DRAINのいろんな番組のものが載っていますのでぜひチェックしてください。ということで1995年で、まだ開館したところで今日の話は終わりましたが、この後20数年続く森元さんのプロデュースはいかがなものかということでですね、ちゃんとまた聞いてみたいと思いますが、とりあえず、皆さん今日はこれで終わりますので、ありがとうございました森元さん。

【森元】ありがとうございました。

【山下】さようなら。

以下 文字起し担当 ブラインドライター 石田さんから
この度文字お越しを担当いたしました石田です。ご依頼をいただきましてありがとうございました。音源の中で、座席が密にならないようにジグソーパズルのようにはめていかれたというお話は、とても聞き入ってしまいました。コロナの中、イベント運営等まだまだ大変だと思いますが、これからもどうぞご活躍ください。

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