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【PODCAST書き起こし】演劇のプロデューサー森元隆樹さん(三鷹市スポーツと文化財団)に聞いてみた。(その3)三鷹で劇場が立ち上がって演劇などのプロデュースをはじめた時のこと

【山下】はい、じゃあ森元さんが三鷹市芸術文化センターで勤務することになりました、ということで。森元さんにいただいたメモをパワポに書いてきたので、それをちょっと紹介したいと思います。1995年、三鷹市芸術文化センターがこけら落としになったということですね。
【森元】そうですね。
【山下】はい、ちょっとこれは僕も全然分からず、ご説明をお願いします。
【森元】とにかくオープニングを、フェスティバルというかラインアップを組んでくれと言われて。最初はとにかく狂言の『三番叟(さんばそう)』というのはおめでたい演目ですので。
【山下】『三番叟』ね。おめでたいやつだから。
【森元】野村万作先生と息子さんである萬斎先生に演じてもらうというところから、というのは割と既定路線というか。
【山下】これはもう決まってたんですか?
【森元】まあほぼほぼですね。
【山下】なるほど。
【森元】「ラインアップ、その辺りからですかね」って話したら、もう。これに市長のあいさつとか、そういうのも入ってきますからね。
【山下】そうそうたる2人ですからね。万作さん、萬斎さん。
【森元】そうですね、本当に。うちの星のホール、三鷹市芸術文化センター、能舞台を組めるんで。
【山下】あそこ組めるんですか?
【森元】あるんです。能舞台一式はあるんですよ。
【山下】へえ。橋掛りのところなんかも作れる。
【森元】だから、このあと、野村万作先生と萬斎先生の狂言の会を毎年やっていただくことになるんですけども、最初のうちは星のホールでやってました。のちにお客さんがたくさん来てくださるんで、三鷹市公会堂というところに行きましたけども。
【山下】もっと大きいところに、大きいホールですね。そうなんですねえ。能舞台が組めるんですね、あそこ。いやあ、知りませんでした。へえー。
【森元】それで飾って。
【山下】毎年いらっしゃっていただいているんですか?
【森元】そうですね、ご縁で。
【山下】「東西狂言の会」。
【森元】野村万作先生と萬斎先生に。のちに何年目かからかな、関西の茂山家。
【山下】茂山さんね、京都の。
【森元】東西狂言の会というかたちでやらしていただいて。これは昔はときどきあったと思うんです、いろんなところで。最近はもう珍しくなってしまった。関東の野村家と関西の茂山家の狂言が一度に見れるということで。
【山下】珍しいですよね。
【森元】非常にご支持いただいて、毎年続けて。
【山下】だから「東西」狂言の会って言うんですね。
【森元】そうなんです。
【山下】ああ、分かりました。なるほど。
【森元】で、やらせていただいているという感じですね。最初は、先ほどちょっと先に言ってしまいましたけども、三鷹しか見れないものとか、三鷹だけで見れるオリジナリティのある演目を、とか、自分がいいなあと思うパフォーマーとか劇団だけをお呼びできたら、ということでやっていこうと。
【山下】それ、もうすごくいいことじゃないですか。一番楽しいじゃないですか、やってて。
【森元】そうです。もう不文律、ただの不文律ですけど。
【山下】その不文律、楽しいですよね。
【森元】いやいや(笑)。やっぱりでも自分の、お客様との感覚、もしかしたら私が並べているラインアップを「なんであんなラインアップなんだ」と思う方もいらっしゃるかもしれないけど、それはでも変な話、世の常ですから。自分としては、自分が面白いと思うものを出してないと、やっぱり……。
【山下】怖いですよね。
【森元】いや、やっててつまんない。
【山下】つまんないですよね。
【森元】つまんないというか、自分がおいしくないと思っているラーメン出しているようなものですから。せめて「自分はおいしいと思うんだけど」と言って「この味は合わない」と言われると、「ああ残念です、仕方ないですね」って言えるけど、自分でも「おいしくないな」と思いながら出して「まずい」って言われたら、「うーん、やめようかなあ」と思うと思うんですよね。
【山下】そうですよね。僕、森元さんに「おいしいんじゃないの」って教えてもらった新しい劇団が、三鷹で初めて見たものがものすごくあるんで。
【森元】そうですか。そう言っていただけると。
【山下】それは本当に。最近のiakuとか、あれも初めて三鷹で見たので。やっぱり、それは本当にすごいなあと思います。
【森元】そう言っていただければ、本当にありがたいです。僕は、もうとにかく自分としては、ここの劇団はいいところがある。でも、例えばの話なんですけど、これ後でもう1回言うかもしれないんですけど、いろんなところを見に行って、決めて、小さいところ、小さい劇場でやってて、三鷹はやっぱり大きいですから、それでなかなか自分たちの良さが出せずに「あーあ」というときもあったりするときもあるので、なかなか。あとさっき言ったように、「こういうテイストの芝居は好きじゃないなあ」というのは人それぞれだと思うので、自分としてはいいところがあるなというところだけをやって。今、山下さんが言ってくださったように、例えば「iakuすごい気に入りました」とか言ってもらうと、本当うれしいなあという。
【山下】谷さんとかどうですか? 三鷹のイメージ。
【谷】三鷹のイメージは、一番、最初が「城山羊(しろやぎ)の会」だったんです。
【山下】山内ケンジさんの。
【谷】で、いきなり森元さんというか、知らないおっさんが前説で出てきて。
【山下】この方ですね。
【谷】この方が出てきまして、いろいろ携帯切ってくれとか説明して、なんかその流れでいきなり撃ち殺されちゃったんですね。「えっ、この人って劇団の人だったんだ」と思って(笑)。
【山下】三鷹市のホールの人が殺されるっていう舞台だったんですよね、本当に。
【谷】すごかったですよ。あれ、『水仙の花』かな?
【森元】『水仙の花』。
【山下】それで森元さんは、そのあと森元さんの大好きな暗転になるわけですよね(笑)。
【森元】そうですね、そうですね。
【山下】で、暗転があいても、森元さん殺されたままだったんですよね、あれ。
【谷】妻と一緒に行って2人ともびっくりしてたんですよね(笑)。「あの人、そうだったんだ」とか言って。
【森元】山内さんには遊ばれてるだけ。
【谷】最初、「切符の辺りにいた人だよね、あの人」とか思ってて。
【山下】客入れの案内された方だった!ですよね。
【谷】「劇団の人だったんだあ」と思って(笑)。
【森元】いえいえ。僕は、さっき言った劇団を自分がやってるころも、役者は全然やってないんで。
【山下】あ、そうだったんですね。じゃあ演出のほうだけだったんですね。
【森元】はい、役者は絶対できないと思ってました。
【山下】あれは山内さんから言われたんですか?
【森元】最初は山内さんとご一緒したお芝居のときに「前説やってください」って。前説とか後説を頼まれることは結構あるんですよ。劇団のほうでちょっと人手が足りなくて、「前説と後説をお願いします」と。僕は「頼まれればやりますよ」ってやって。最初の公演のときはなかったんですけど、2回目ご一緒したときに、前説終わりで石橋けいさんが出てらっしゃるんですけど、「きれいだ」と言って引っ込んでくださいみたいな。途中でもなんかちょっと出番があって、「うん? なんかおかしなことになってるぞ」と思ったけど、まあまあその程度ならと思ってやってたんですよね。そしたら、なんか2年に1回ぐらい山内さんとご縁をいただいてご一緒してるんですけど、だんだん増えていくんですよ。どの公演だったかな、あるとき稽古初日なんでって言って、顔合わせ。主催ですし顔を出したら、山内さんから「原稿は2枚だけです」って言われて、原稿用紙を2枚配られたんですけど、僕のセリフしかなかったんですよ。2ページ全部僕だったんですよね。「森元さんのとこしかないです」とか言われて、「うっそー」みたいな。

まあそんな感じですけどね。そうですね。先ほど言われたように銃で撃たれて死ぬとか、でも銃で撃たれて死ぬとかも素人ですから。役者の方は上手に。
【山下】「うっ」ってやってますよね。
【森元】「うっ」ぐらいは、なんて言うんですか、素人芝居でやるんですけど。
【山下】血のりなんか。
【森元】血のりもありましたね。「ここ、ぱっと押さえてください」とか。稽古の時に本当に倒れ方が分からなくて思いっきりいって、頭ガーン打ったりとかして。
【山下】危ないですね。倒れ方難しいですよね。
【森元】本当に病院でスキャン撮ってもらったり。
【山下】マジですか?
【森元】やりましたよ。自分で勝手にやったんですけど、それは。
【山下】いやいや、大変でしたね。
【森元】大丈夫かなあと思って。ってぐらい本当に素人なんです。そうですよ。途中で「もう1回出てください」って言って、そこになんかト書きが書いてあって、「号泣する」って書いてあったんですよ。「うわっ、演技だあ」と思って、「前説だけじゃないんだ」と思って、「号泣する」って書いてあって。実は城山羊さん、いつも1カ月ぐらい稽古はおやりになるんですけど、僕呼ばれるのって3日前なんですよ。セリフだけ渡されて「覚えてきてください」って言われるんですけど、3日前に行ったら山内さんが「じゃあやってください」と言って、やると、「はい、オッケーです」みたいな感じで。
【山下】なるほど。狙ってますね。
【森元】なんにも。いやいやいや、僕のところは、たぶん山内さんの中ではオアシスなんだと思うんですね。
【山下】でも山内さんはそれを狙ってると思う。稽古時間をわざと短くして。
【森元】そうなんですかね。
【山下】じゃないかなあ?
【森元】セリフを間違ったら「森元さん、そこ違います」とかは言われるんですけど、僕がまた同じことが言えない。あと山内さんのセリフって、「えー」とか「ででー」とかつないでいくのが多いから、劇団の中心メンバーの岡部(たかし)さんとか、本当上手だなあと思いますけど。
【山下】うまいですよね、岡部さん。
【森元】だからその、役者をやることになるわけですよ、曲がりなりにも。そうするとしばらくすると、すっと女優さんと絡むシーンとか出てきて。『水仙の花』のときが誰だろう……岸井さんかな。
【山下】岸井ゆきのちゃん。
【森元】ゆきのちゃんか、松本まりかさんか。
【谷】松本まりか。
【森元】松本まりかさん。松本まりかさんも岸井さんも、今もう。
【山下】今、二人ともブレイクしてますよね。もうすごいことになっていますよね。
【森元】やっぱり山内さん、役者さんを見る目がすごいから。岸井さんのお父さん役だったり、まりかさんとも絡んだりとかするんだけど、お2人ともすごい女優さんでセリフ覚えるのすごい早いのに、僕のとこだけなんかちょっとうまくいかないみたいな。それは全て僕がいけないんです。
【山下】いやいや、それはまあ呼吸が合わないと。
【森元】それは、僕が同じことを同じように言えなくて。例えば箇条書きに書いてあって要点を言うだったらできるんだけど、ちゃんとこの通り言うってのがなかなかできなくて。役者じゃないんですよね。だから、本当に直前にまりかさんに「合わせましょう」と言われたりとか、まりかさん、他のところは完璧なんだけど僕のところだけちょっと自信がないみたいな。本当に申し訳ない、本当に申し訳なかった。でもまりかさんは、舞台に立ったら完璧でしたね。僕は適当。本当に申し訳ないけど、まりかさんが上手に「もう森元っていう人はあんな感じだ」と途中から思ったんだと思うんですけど。本当に申し訳なかったと思いますね。
【山下】いやいや、でもすごい印象的でしたよ、あれは。

またちょっと1995年に戻すとですね、オープニングフェスティバルで『シティボーイズなひととき』と『ア・ラ・カルト バレンタインバージョン』などって書いてあったんですけど、これ、シティボーイズはシティボーイズさんですね。大竹まことさんとかの。

【森元】そうです。何が好きだったって、東京来て最初いろいろ芝居見てるところにラジカル・ガジベリビンバ・システム。
【山下】面白いですよね。あれ面白かったですね、本当に。
【森元】ラフォーレ(原宿)で体育座りで、もう一生懸命見てました、本当に。一番お芝居で、「ああ、こういう芝居があるんだなあ」と思う原点が。
【山下】宮沢章夫先生がお書きになって。
【森元】竹中直人さんとか、いとうせいこうさんとか。いとうせいこうさんは当時編集者だけど、いとうせいこうさんとかは本当に素人でも上手。まあもともとやっておられたのかもしれないですけど、だけど本当にすごいしセンスいいし、好きだったんですよね。なので当時シティボーイズさんが入られていた事務所に。
【山下】これは森元さんが連絡したんですか、自分で。
【森元】はい、もちろん。電話して、企画書を作って行ったんですね。僕が好きな……これももしカットだったらカットなんですけど、僕は、一番好きな番組は『タモリ倶楽部』なんですよ。
【山下】『タモリ倶楽部』さっきも出てました。さっきの収録でも。
【森元】そうです。(笑)
【山下】面白いですよね。
【森元】『タモリ倶楽部』大好きで。1週間『タモリ倶楽部』待ってるぐらい。本当にあの番組のぬるさっていうか。でもあとタモリさんすごいじゃないですか、博識ぶりが。
【山下】すごいですよね。あの人は知ってますよね、本当に。
【森元】なんでも知ってるなという。だから、本当に『タモリ倶楽部』大好きでビデオ全部録ってるんですけど。だから「シティボーイズ版タモリ倶楽部」っていう企画書作って。
【山下】ああ、「そういうのをやりませんか」って言って。
【森元】そうです、そうです。
【山下】もう完全にプロデューサーですね、それは。
【森元】春に、当時は天王洲とか、のちにグローブ座で『シティボーイズミックス』みたいなシティボーイズ・ショーを春にだいたいやっておられて、だったので秋ごろに。そっちが本公演だから。タモリさんも『笑っていいとも!』があって、『タモリ倶楽部』があって。シティボーイズさんに「ちょっと『タモリ倶楽部』的なサブカルチャーの詰まったようなものをやってもらえませんか」って言ったら、オッケーもらえて。
【山下】それは面白いですね。「ラジカルみたいなことやりませんか」みたいな話ですからね。
【森元】『シティボーイズなひととき』というタイトルで。
【山下】どんなやつだったんですか?
【森元】もうね、「どうぞ内容お任せ」って言ってて。もちろん昔やったコントをもう1回やるとかもあったんですけども、ピン芸。
【山下】へえ、1人ずつ? きたろうが1人でやるとか、斉木(しげる)さんとか。
【森元】そうです、そうです。きたろうさんは落語。
【山下】えーっ!
【森元】落研だったらしいんですよ、きたろうさん。
【山下】きたろう、落語何やったんですか?
【森元】たぶん僕の記憶では『粗忽長屋』。
【山下】『粗忽長屋』!
【森元】『粗忽長屋』ってすごい難しい話だから。きたろうさんが……言っていいのかなあ。難しいんですよ、『粗忽長屋』って。滑稽噺で特にイリュージョン。あれをお客さんに信じ込ませるというのは、本当に落語家さんでも腕がいる。滑稽噺って特に腕がいりますからね。もちろん人情噺も腕がいりますけど。だから、枕は大爆笑だったんですけど、本編に入ってからちょっと受けが良くなかった回があって、ラストで3人が出てきてしゃべるときに「今日のきたろうの落語の点数をみんなアンケートに書いてください」って(笑)。
【山下】(笑い)それ、みんな分かってるわけですね、大竹さんとかも、斉木さんとかも。
【森元】本当に。49点だったかな、平均が。だけど「いやあ、『粗忽長屋』かあ」と思って。
【山下】でもチャレンジャーですよね。いい意味でね。
【森元】チャレンジャーです。あと、意外に思われるかもしれないんですけど、大竹まことさんが漫談、それが人生で初めて。
【山下】1人で漫談? 大竹さんが漫談。はあー。
【森元】当時ですよ、25年前。今でこそ大竹さんってピンでいくらでもしゃべりますけど、ステージでピンで漫談で世相をぼやいて。
【山下】面白そう。
【森元】最後に「いかがなものかと」って言うんです。というので、ずっとつないでいくという漫談をやられて、それはものすごく受けておられましたけど。それを初めてピンでやるっていうんで、舞台監督さんは他にいるんですけど、舞台袖で僕がいたらあの大竹まことさんが結構緊張しておられて、「森元君、帰っていい? 帰っていい?」って、ずっと僕の首絞めたり(笑)。「もう帰っていい? 帰っていい?」とか、「いや、出てください」みたいな。とかいうので割とこういうラフな……。でも僕はそれを目指してたんで、すごいうれしかったですね。
【山下】でも、それがもう入った年に叶うっていうことですか? オープニングフェスティバルから。
【森元】そうですね。うれしかったですね。あと、『ア・ラ・カルト』って青山円形劇場で。
【山下】遊◎機械(ゆうきかい)/全自動シアターの高泉(淳子)さんと白井晃さんのね。
【森元】僕が三鷹に勤めたころにはもう5回目ぐらいだったんですけど、その前の年ぐらいから見ていて、そのショーももちろんすばらしくて、内容もすばらしかったんですけど。
【山下】僕も見てました、『ア・ラ・カルト』。
【森元】まずどの世代が見ても面白い。
【山下】うん、ハートウォーミングなね。
【森元】小劇場のファンの人が見ても、とんがっているところもあれば、ご年配の夫婦が見ても、必ず最後いい感じで終わるし。
【山下】そう、すごく気持ちいい感じで終わります。
【森元】しかも12月になると青山円形劇場で『ア・ラ・カルト』がある。
【山下】クリスマスに必ずやるんですね、毎年やってたんです。
【森元】だからすごい「ああ、『12月が来るとこの劇場でこの芝居がある』っていう作り方ってあるなあ」と思ったんですよ。
【山下】いいですよね。
【森元】それが、のちにうちに太宰のやつを6月にやるのは、そこからのインスパイアっていうか。
【山下】さっき言っていた太宰治のファンだったのが、そこにつながっていったんですよね、たまたま。
【森元】そうですね。三鷹は太宰にゆかりがある街なんで、太宰の朗読会とか、太宰治の作品をモチーフにした演劇とか始めるんですけど、それは『ア・ラ・カルト』を拝見させていただいて。もちろん『ア・ラ・カルト』のショー、ステージとしてのレベルがすごい高かった。やっぱり、中西さんのヴァイオリンとかおしゃれでしたもん。
【山下】そうですよね。中西俊博、ヴァイオリン良かったですよね、生演奏で。
【森元】本も面白かったですし。
【山下】そうですよね。白井さんと高泉さんと。
【森元】みんなお客さんが期待していてその上を行くから、「ノリコさんと結婚してください」というあの2人の話とか本当に面白かったので、大好きでしたね。それでいつもクリスマスの時期だったので、1日だけバレンタインバージョンというかたちで「バレンタインデーの話として作ってもらえませんか」って言って作ってもらったりとか。
【山下】新作を?
【森元】そうですね。新作というか中身が。もちろん新作ですよね。
【山下】『ア・ラ・カルト』のバリエーションですよね。
【森元】「『ア・ラ・カルト』を、いつもクリスマスの夜のレストランという設定だったのを、バレンタインデーの日のレストランという設定でやってください」とか。
【山下】これは公演は2月だったんですか?
【森元】2月14日だったかなあ?
【山下】14日に。1日だけやったんですか?
【森元】1日……ちょっと忘れた。1日か2日だった、どっちかだったと思うんですけど。
【山下】これもまた森元さんが遊◎機械に連絡して。
【森元】青山円形劇場のほうですね。青山円形劇場プロデュースだったので、当時のプロデューサーさんにお話を持って行って、「なんとかやってもらえないですか」って言って。
【山下】そういえば、青山円形劇場は公共ホールなんでしたっけ、そういえば。
【森元】そうですね。
【谷】東京都ですよね。
【森元】そうですね。文化庁さんかな。
【山下】あそこが割と公共ホールで新しいことをやってた始まりかもしれないですね。
【森元】あそこでフェスティバルもやってたんです。「悪のフェスティバル」とかありました。
【山下】面白かった。すごく見に行きました。
【森元】だから、そこは少し参考にしてたかもしれません。その辺りとかを、そうですね……青山さんがありましたね。先ほどそれを申し上げなくて失礼なことしましたけど。
【山下】いえいえ。
【森元】青山さんのそういうフェスティバルとか。
【山下】本当熱量ありましたもんね。若い劇団に向けて。
【森元】ありましたね。私も大好きな劇場でしたから。
【山下】『青い鳥』も青山円形劇場でやってましたもんね。
【森元】よくやってました、はい。
【山下】でも1年目からこうやって自分のこういう、やっぱり予算が1年目はあったということなんですか?
【森元】逆に言うと、その予算が多いのか少ないのかもよく分からなかった。
【山下】確かに。最初分からないですよね。
【森元】すごく分かりやすく言うと、三鷹市からの補助金、「これぐらいの文化予算を演劇に割り振ります」と言われて。仮ですよ、仮にその金額が3千万円だったとしますよね。そしたら「3千万円の補助金でいろんなことをコーディネートしてください」と。
【山下】割り振っていくんですよね。
【森元】演劇もあれば、落語もあれば、映画もあれば、狂言もあれば、やっていく。いろんな劇団とかアーティストに交渉していくんですけど。もちろん湯水のようにはないけども、そのなんと言うですかね。熱意しかなかったですけど、「この予算で、収入このぐらいなんで、なんとかこの予算で作ってもらえないか」みたいなことを。「損はしないけど、三鷹予算あるね」とはとても思ってもらえないようなご提案だったと思いますけども、心意気だけで来ていただいたりもしたことがあったと思うんですけどね。「なんか頑張ろうとしてるから行ってあげましょうか」というのもあったと思うんですけど、そういうので、例えば「1億円の予算を組んで7千万円稼ぎます」と言ったら、収入率70パーセントで、3千万円三鷹市からいただいて、三鷹の市民の人が喜ぶ。三鷹の市民の人が喜ぶだけじゃなくて、三鷹以外のところからも来て。
【山下】行って、三鷹のことをいろいろ知ってもらうと。
【森元】そうですね。遠くから来てくださって、「三鷹って面白いことやるね」というのが、三鷹市にとっての誉れになると信じてやってましたから。
【山下】それは絶対あると思います。いや、なってます、なってます。
【森元】いろいろ商店街でお金も、食事してくださるかもしれない。
【山下】三鷹の商店街いいですよね。
【森元】三鷹のイメージアップになると信じてね。「三鷹の人がどれぐらい来るの?」ってよく聞かれるんですよ、市の人からは。でも「三鷹以外の人がわざわざ三鷹に行きたいと思うものじゃなかったら、三鷹市民の人も喜ばないと思います」というのは、僕は言うんですよ。
【山下】おっしゃる通りですね。
【森元】だから三鷹市外の人がたくさんきてくださる、あれは行きたいと思うものは、「それが三鷹に来るの」って、三鷹の人が喜んでくださるんじゃないかなと思ってやってるんですけども、そういうふうに予算使います。だから仮に言うと、2億円使って1億7千万稼げれば3千万。逆に5千万しか使わなくて、2千万稼げば3千万。そこはだから担当者としてどれぐらい頑張ってどれぐらい収入を。黒字にはしなくて、収支でとんとんが目標。
【山下】とんとんにする、ですよね。公共ホールはそうですよね。
【森元】あまり稼ぎ過ぎない。いってもランニングコストとかありますから、結局黒にはならないんですけど、事業だけで。黒にしてもいいんだけども。
【山下】家賃とか減価償却費とかありますもんね。
【森元】黒は求めないけど赤字過ぎると。
【山下】持続可能になりませんからね。
【森元】特に三鷹市芸術文化センターホールって、割と三鷹、武蔵野辺りって自分たちでヴァイオリンとかピアノとかやってる人多いんで。
【山下】へえええ、やっている人が多い。そいえば、コンサートもやってますよね、市民の皆さんがいらっしゃって。
【森元】だから一般利用でものすごい倍率なんですよ。
【谷】そうなんですね。
【森元】よく箱もの行政っていって、ホール作ったけど「利用率低い」「なんのために作った」「税金の無駄遣い」とか言われますけど。
【山下】逆なんですね。逆なんだ。
【森元】放っといたら100パーセントなんですよ。だから、うちの主催事業があまりにも多いのにお客さん入ってない、支持を得られてなかったら、やめたほうが市民利用になるんですね。
【山下】なるほど。
【森元】だから、やる以上はちゃんとお客さん入れる。やる前は、企画書を市に出す段階では「これは、お客さんそんなにいらしていただけないかもしれないけれど、やる意義がある公演です」という言い方はするんですよ。それで予算を認めてもらう。けど、やる以上は、仕掛ける以上は絶対に満杯にしようっていう。もともとこの企画では難しいと思ってても、満杯になるということは一応税金の無駄遣いはないはずなので。フルキャパですから。
【山下】そうですよね。
【森元】だから、これは入らなくていい企画とか思う人もいるかもしれないですけど、「やる以上は絶対」というのは。やっぱりお客さん少ないと寂しいですしね。
【山下】そうですよね。
【森元】若い劇団とかにも「満杯って考えなくていいんだよ」「普段通りやればいいんだよ」って言うけど、そこに向けて客席をどう作るかということは一緒に考えたりはしますけどね。
【山下】客席が毎回変わるから、座席数も変わってきますよね。
【森元】そうなんです。そこができるから若い劇団も呼べるというところはあります。
【山下】だから、劇場自体は割とあんなに広いのにすごく狭くして、本当100人ぐらいしか入らないような感じで。
【森元】変な話、「今日は薄いね」って言っても、お席をちょっと離したりとかもできますし。
【山下】そうか、そうか。
【谷】通常の舞台で何席ぐらい?
【森元】250です。250でやると、若い劇団だと2公演とか限界になるけど。
【山下】たくさんできないですね。
【森元】僕としては、あとでその話はたくさん出てくると思うんですけど、2週間ロングランでやって、1週目に「面白いらしいね」っていって2週目に延びるというのが理想なので。
【山下】そうですよね。
【森元】だから木曜日に始まって、「面白いらしいね」というころには公演が終わっているというと、やっぱり寂しいですし、もったいないと。
【谷】行く機会がなくなっちゃいますもんね。
【森元】はい、だから「なんとか頑張って2週間やりましょう」っていうんで。
【山下】そうですね。確かに長くやったほうがいいことだな。それは本当に。
【谷】いいことですね。
【森元】若手の劇団にもそういうことが言えるのは、うちのホールがそういう可動式で、いろんなふうに客席が作れるからというところは。
【山下】あれはそもそも設計の段階からそうなってたんですか?
【森元】そうです。そうです。
【山下】すごいですねえ。
【森元】すごいかどうか。僕が来たときには、もうなってましたから。
【山下】そうなんですね。
【森元】割と簡単にまっ平らにできて。
【山下】ねえ、本当に。奈落に落ちるのもあって、いろんな仕掛けがあるから。
【森元】そうなんですね。


文字起し:ブラインドライター
---- 担当: 橋間 信市 ----
本番組を拝聴して、まず思ったことですが、私はこれまでに一度も演劇を見に行くということがなかったということに気がつきました。縁がなかったと言えばそれまでですが、観劇に行くきっかけがなかったように思います。お三方のトークを伺って、また、トーク中に出てくる劇団・演目について、ネットでググっているうちに、コロナが落ち着いたら、ぜひ一度は足を運びたいと思った次第です。三鷹市芸術文化センターの存在も存じ上げなかったのですが、いろんな企画に取り組まれておられるとのこと、ぜひ伺ってみたいと思いました。
ご依頼まことにありがとうございました。

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