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【PODCAST書き起こし】オフィスコットーネの綿貫 凜さんへ演劇人生について聞いてみた(全7回)その2 演劇の制作修行期

【PODCAST書き起こし】オフィスコットーネの綿貫 凜さんへ演劇人生について聞いてみた(全7回)その2 演劇の制作修行期

【綿貫】……そういう時間が1~2年くらいありまして。だから、次に就職するとあまり休みとかも取れないから、旅行とかいろんな行ける所に行ったりとかする中の1つとして……ちょうど『劇団3○○』からチケットのDMがきて、そこのチラシに「お手伝い募集」って書いてあったんですね。

【山下】制作お手伝い募集。

【綿貫】ただ「お手伝い募集」って。

【山下】公演のお手伝い募集。

【綿貫】で、チケットは買ってたんですけど、これは何なんだろう? と思って。もしアルバイトだったら、アルバイトはいくつかやってたんで、ちょっとやらせてもらおうかなと思って電話したんですね。「アルバイトをやりたいんですけど」って言ったら、「アルバイトではありません」って言われて。

【山下】「お手伝いはアルバイトではない」と。

【綿貫】そうですね。「暇な時間に来ていただいて、簡単なお仕事を手伝っていただければいいです」って言われて。で、「どういうお仕事ですか?」って言ったら、「コピーをとったり、小道具を作ったりとか」って言われて。

【山下】え~、面白いね。

【綿貫】「特にそういう専門的な技術はないんですけど」って言ったら、「でも大丈夫です。いろんな仕事があるので全然大丈夫です」って言われて。で、「稽古場に行けるんですか?」って言ったら、稽古場に行けるっていうんですよ。

【山下】そうか、稽古場でやってますよと。

【綿貫】そうなんです。それで、やっぱり芝居は見たことたくさんあったんですけど……。

【山下】稽古はなかなか見れないですよね。

【綿貫】見れないんですよ。いったいこの作品がどんなふうに作られているのかっていうことにもちょっと興味があって、全然本当にその2か月間だけ、稽古から本番までわりとベタについてずっと……ああ、こういうことなのかっていうのは、ちょっと学園祭的なノリではあったと思うんですね、期間限定で。打ち上げもちょっと学園祭の打ち上げみたいな、楽しくやって、その2か月がすごく楽しかったんですね。でも全然仕事にしようとかは全く……やっぱりある程度お客さんとして扱ってもらえるので、すごく楽しい思い出しかなかったっていうのが、たぶん最初の入口ですね。
でも、その当時はそういうかたちでこの業界に入ってくる方が多かったと思います。

【山下】わかります。それは他の業界も……制作会社もわりと似てますよ。アルバイトから、「じゃあうちの社員になる?」とかって普通にありましたから。

【綿貫】で、「撮影見れるよ」とか、「ドラマの撮影現場行けるよ」とかそういう感じ?

【山下】いや、もうそんなの言わずに、バイトで来てるから、「じゃあお前社員になっちゃえよ」みたいな。「誰かいいやついない?」とか。「彼の弟が今あいてるからちょっと呼んで手伝ってもらって」とか、そんな感じでした。

【綿貫】ああ、そうですよね。そういうパターンはすごく多かったと思うんですけど。私も御多分に洩れず、そういう学校とか行ってなかったので、ただ見てるだけではなく……たまたまそのときに自分がそういう状況だったから、ちょっと一歩入って、後々思い出になるかなぁと思って、2か月間とっても楽しかったんですよね。

【山下】本公演のときも行ってらっしゃったんです? 上演中……客入れとかそういうのも。

【綿貫】ずっと……私ともう1人で、2人しかいなかったので、お手伝いが。

【山下】じゃあ大忙しじゃないですか。

【綿貫】大忙しですね。2人で交代交代で。で、私、当時運転免許持ってて、車持ってたからけっこう重宝されて。衣装を取りに行ってほしいとか、運んでほしいっていうものがけっこうあって、それでけっこう車で言われた所に取りに行ったりとか。でもちょっと後半とかは、稽古見たいのにとか思いつつ……稽古見れないんだ……みたいな。でも「取りに行ってきて」とか言われると、「あ、わかりました」みたいな感じで。

【山下】渡辺えりさんとも話しされたんですか?

【綿貫】ええ~と、いや、それはかなり上のほうな感じだし、やっぱり劇団の稽古もかなり日々煮詰まっていってたので……。

【山下】なるほど、そこはちょっと。

【綿貫】すごい……ちょっと大変な世界だなぁって。

【山下】それは感じたんですか?

【綿貫】いや~、感じました。やっぱりすごい……。

【山下】稽古を見ると、やっぱり全然違いますか?

【綿貫】そこで、人間の……ドラマよりもドラマチックなことが日々目の前で……。

【山下】いろんなものをむき出しにしていかないといけないから。

【綿貫】人間がむき出しになっているものをいろいろ……。

【山下】そうしないと作れないんですよね。わかります、わかります。

【綿貫】作れないんですよね。ぶつかり合いとか罵り合い……話し合いみたいな日もありましたからね。今日は稽古やめて話し合うみたいな日もあったし。

【山下】価値観をすり合わせていかないといけないから。

【綿貫】そうですね。だから、芝居を見ていた側からすると、「え? こんなふうに作られてるんだ」ということには衝撃でしたし、本当に、見てるのと中に入るのは全然違うんだなっていうことをものすごく体感した。

【山下】それは作り手と、観客で見てるだけだと全く違うことがわかったと。

【綿貫】そうですね。ただ本当に、本当に、たぶん今のお客様もそうですけど、最近わりとお客様を稽古場に入れて見学をするとか……例えばバックステージツアーとか、わりと体験型のものがいろいろあると思うんですけど、私たちのときは本当にそういうことがなかったので、そういうかたちでしか、たぶん裏側というのは見られなかったと思うんですけど、本当に衝撃ですよね。でもすごく楽しかったんですけど、逆にいうと、本当にこんなに大変な思いをして、こんなに精神的に追い込まれてボロボロになったものが、そんなふうには見えない華やかなものが舞台に乗っているという感じだったので……。

【山下】じゃあ、それをお手伝いしたときにバーン! と感じられたんですね。

【綿貫】そうですね、衝撃でしたね、なんか。

【山下】その衝撃がずっと残り続けるわけですか?

【山下】いえ……だからそれはそれで終わりにしようと思って。

【山下】2か月くらいですよね。

【綿貫】はい。ああ、楽しかった……ありがとうございました~みたいな、もう本当に楽しかったです~って言って終わったんですよ。
そしたら、その公演が終わってから1か月くらいとか、ちょっと時間をおいて……自宅にいて、次のバイト何にしようかなみたいに探してて、ちょっと目星もつけ始めて、でもぶらぶらしてたんですよ。自宅だったんで。

【山下】それはいいですね。

【綿貫】昼間いて。そしたら、当時は家電ですよね、家電に渡辺えりさんから電話があったんです。

【山下】ええ~、代表から。

【綿貫】で、家にいたんで、ぶらぶら。「何してるの?」って言われて、「いや、次の仕事を探しています」みたいな。そしたら、ちょっとお家で食事会みたいなのあるから来ないか……みたいな。

【山下】渡辺さんが誘ってくれたんですね。

【綿貫】そうなんですね。ちょっといろいろ話をしたいということで。で、え~、そんな、お伺いしちゃっていいのかなと思いつつ、でもすごく好奇心が強いので……。

【山下】そりゃそうですよね、行ってみたいですよね、面白そう。

【綿貫】そう、行って見たいんですよね。それで、そういうところにのこのこと行っちゃうんですね、私。本当に何の考えもなしに、すぐのこのこと。

【谷】誰でも行くんじゃないですか、誘われたら。

【山下】誘われたら行きますよね。

【綿貫】そうですかね。

【山下】来るなって言われてるのに行っちゃうんじゃないから全然いいんじゃないですか。

【綿貫】そうですよね。で、行って、そこで他の劇団員の方たちと一緒に食事して、いろんな話を聞かせていただいて、それもすごく楽しくて。
それがあって、やっぱりそのときの『劇団3○○』もけっこういろいろ過渡期は過渡期の時代だったので、ちょっとプロデュースみたいなことも考えられていて、製作を探してるんだという話になって。それで、やらないかっていう。

【山下】制作をやってくれないかと。

【綿貫】そうなんですね。そう言われて、「製作って何ですか?」って言ったら、受付でチケットを売ればいいんだって言われて。

【山下】ざっくりしてるなぁ(笑)。

【綿貫】そうですか……って言って、「それならできると思います」って。営業とかをやってたので、そういう窓口で対応するのは得意ですみたいな。会社に行って営業してたわけだから、できますみたいなことで。
で、それもやっぱりそんなに深い考えもなく、やっぱりちょっとだ、さっき言ったコピーライターみたいな感じで、ちょっと体験してみようかということで、その翌年の……当時『ベニサン・ピット』で……。

【山下】ベニサンありましたね、森下の。

【綿貫】そうなんです。やるからっていうことで、オーディションもやって、新しく……劇団員が少なくなったのでキャストも取って、ちょっとバッと大人数で面白い新作をやりたいんだっていうことで、その1年後くらいにそれが決まっているということなので、それをちょっとやってみないかということで、期間は一応2か月間でいいっていうことで、公演が終わるまで。
それは東京のベニサン・ピットと、当時山形……えりさんの。

【山下】地元ですよね。山形出身。

【綿貫】そうなんですよ。それで山形でもそのあと公演が……。

【山下】山形市でやったんですか?

【綿貫】そうです。山形の古い公民館みたいな、大きい……かなり広い、1000人くらい入る、大きい街の中心にある。

【山下】でかいですね!

【綿貫】その当時は、新幹線とかまだ直通でなかった時代なので、バスで行ったんですけど、バス移動だったんですけど。

【山下】山形公演も行かれたんですね。

【綿貫】そうですね。2か月だか3か月、その公演を1年後くらいにやったんですよ。でも、全く舞台のことがわからないんですよ、私。だから機材の名前1つわからないんですよ。何がそこで今行われているかもわからないし、どういう段取りで作られてるかも、目では見てますけど、意味が全然わからないのと、皆さんが話してる内容がわからないんですよ。

【山下】単語がわからないんですよね、業界用語というか。

【綿貫】単語がわからないんですよね。「バラシ」のことを、「バラシ、バラシ」って言ってるのが、私が聞き間違えたのか「崩し」とか言ってて。深くは関われないですよね。だからお手伝いみたいな流れで稽古場にいて、言われたことをやるっていうことしかないので、最初は。関われないですよね、機材の名前とかもわからないし、それはいったいどういうふうに進んでいくかもわからないので。まあ、稽古場はとりあえずお手伝いみたいな感じでいて、そのあとチケットを販売するみたいなことはそんなに難しいことではなかったので、それもやりつつで。
地方公演なんかは、逆にいうと宣伝活動がすごく大事なので、事前の。前のりして、渡辺えりさんと一緒に車でいろんな所に回ってお願いするわけですよ。

【谷】運転もするんですか?

【綿貫】運転もずっとしていろんな所を回って宣伝させていただいて、「1週間後にやりますとか2週間後にやりますのでぜひ来てください」って。

【山下】地方のテレビ局とかラジオ局とかに行くんですか?

【綿貫】そうですね、ラジオとかも行きましたし、あとは市長を訪ねたりとか。

【山下】おお~、すごいですね。

【綿貫】あとは本屋さんでサイン会をやりながら宣伝したりとか。

【山下】じゃあ、山形だと八文字屋とかね、大きな本屋さんありますね。

【綿貫】そうですね……くらいで、あとは同級生の家を回ってチラシを渡して、口コミで誘ってほしいっていう。ただ、農家の方もすごく多かったので、雨だったら行けるって。

【山下】ああ、わかる。当日券になっちゃいますね。

【綿貫】そうです。2日あって、どっちか雨だったら行けるっていうふうに言われたりとかして。それが1年後、そういうかたちで……だから、初めて製作をやったのがそれですよね。そのときのチラシとかパンフレットとか残ってますけど。

【山下】あるんですか?

【綿貫】ありますね。

【山下】すごいですね。綿貫コレクション。

【綿貫】いえいえ……残ってますね。

【山下】そのときって、制作の先輩とか……。

【綿貫】いえ、誰もいないです。

【山下】いないんだ!

【綿貫】誰もいないですね。やっぱりその時代は、たくさん演劇はありましたけど、劇団っていうものが主流で、劇団に役者さんが……劇団員がいて、劇団員が小道具、衣装、大道具、いろんな役割を担ってた時代で、その中に劇団員が製作っていうのを兼務していたんです。だから私のことを指導するのは、劇団員の製作担当の先輩です。

【山下】なるほど、なるほど。じゃあ、その人はいろいろあって教えてくれる。

【綿貫】そうですね。ただ、出演してらっしゃるので……。

【山下】忙しい。

【綿貫】忙しいですね。やっぱり、すごいダメ出しをくらったあとは落ち込んでいて……。

【山下】もう製作どころじゃないですね。指導どころじゃない。


【綿貫】そうですね。ないですね、それが正確にいうと第1回目の、全く意味がわからない、全く何をしてるんだか意味がわからない状態のまま……ただ、すごく……そのときもすごく楽しかったんですね。

【山下】なるほど。大変だけど楽しかった。

【綿貫】そうですね。やっぱりそんなに深くはできないので、表面的な感じしか携われないですよね。だから、そんなに苦しいとか……他の皆さん、役者さんとか他の部門のスタッフの方はすごく大変だったと思うんですけど、全く意味がわからない人間がそこに1人ポツンといるので……。

【山下】いわゆる新人ですよね。

【綿貫】そうですね。新入社員が撮影現場にいるみたいな。

【山下】研修で来て……。

【綿貫】すごく楽しいけど……意味もわからないけど撮影は楽しいみたいな。

【山下】でも、僕らの新人の撮影のときもそうだったですよ。撮影行って、「山下、あれ持ってこい!」とかって、で、終わったら「ああ、面白かった~」っていう感じ。

【綿貫】そうですよね。

【山下】全然責任感ないから。

【綿貫】そうですよね。

【山下】それで終わっちゃう。

【綿貫】けっこう、わりと扱いも「座ってていいよ」とか……。

【山下】それは僕らはなかったです(笑)。

【綿貫】結局何もできない、叩きもできないし……あ、衣装とかは、縫うのとかは少しできたので、衣装とかそういうのは、衣装を縫うくらいはできるんですけど、それ以外、何か技術がすごくあるわけではないし、専門用語なので照明の手伝いとか音響の手伝いとかが一切できないんですよ。

【山下】照明、音響難しいですからね。

【綿貫】難しいし、落としちゃいけないし……ガチャッとか。で、歩いちゃいけない所を歩いて怒鳴られたりとかもするくらいの程度なので。

【山下】わかります。

【綿貫】だからそういう人間はあまり入れられないですよね、舞台の上のほうには。

【山下】ここ、近寄らないでっていう感じ。

【綿貫】そうです。私的にも、余計なことしちゃいけないっていうのがあったので、皆さんに飲み物を買ってくるとか……。

【山下】僕らもお弁当配ったりとかしましたよ。同じですね。

【綿貫】お弁当買ってきたりとか、そういうことを……。あとは飲み屋の宴会隊長みたいな。

【山下】そうそう、仕切ってね。とか、お店予約してあります! とか。

【綿貫】そうそう。そういうことだったので、すごく楽しかったですね。1回目は。

【山下】楽しいですよね。学園祭と同じ感じがしますよね。

【綿貫】……の、延長上にたぶん、それもすごくあったと思うんですよね。

【山下】責任とか役割とかいろいろ

【綿貫】そうですね、そのあとですね、いろんなものごとにぶち当たっていって、本当に言葉とか、芝居がどうできていくかっていう組み立てられる方法がわかるのに、5年くらいかかるじゃないですか。いろいろ段階が……見てますけど。だからそういうのがわからないときは何をやっても怒られるので……もう、何をやっても怒られるんですよ。まあ、できてないんで。だから辛かったですよね。

【山下】そのあと、渡辺えりさんの仕事を2か月、3か月おやりになって、そのあとどうなんですか?

【綿貫】1回目はやっぱりすごく楽しかったし、ちょっとできるかもしれないって思って……(笑)。

【山下】思いますよね。それは、根拠のない自信、大事だと思います。若い人は。

【綿貫】そうですね。……ちょっと、できるかもしれないなぁ……って。

【山下】アハハ!!

【綿貫】だから、わかってなかったからですね。その深さみたいな。だから、「じゃあ次もやります」みたいな。もう次も決まってたんですよ。

【谷】3○○が。

【山下】そうなんですか、公演が。

【綿貫】そうなんです。で、その頃はやっぱりプロデュースをやってた頃で、けっこう……篠井英介さんとか深沢敦さんとか、いろんな俳優さんとかと一緒に劇団でやってた……ゲストをお呼びしてやってるっていうかたちだったので、けっこう大きい公演も多くて。

【山下】有名な人ばっかり。

【綿貫】そうですね。それもすごく魅力的ですよね。

【山下】深沢さんも篠井さんもすごいキャラが立ってて面白い。

【綿貫】そうですね。すごく魅力的で、そういう方たちと一緒にお芝居を作ってみたいっていう欲望がメラメラと……。何もわかってないのにそういうのがあって、それで、本当に浅はかで何にも考えてないんですけどそっちのほうに行って。それで劇団には5年くらいいたんです。

【山下】ということは3○○に5年くらい在籍して、製作部にいらっしゃった。

【綿貫】はい。ただ、年に1回しか公演はやってなかったので、その当時。

【山下】プロデュース公演は別にやってた?

【綿貫】いえ、劇団のプロデュース公演ですね。えりさんがゲストを呼んできて、新作を書いて、劇団員も出てっていう。

【山下】なるほど。それが年1だったんですね。

【綿貫】年1回しか、その当時……。

【谷】毎年2か月とか3か月。

【綿貫】そうですね。それ以外は、相変わらず暇だったので、結局またバイトの生活に。他の劇団員の方もそうなんですけど、芝居がないときはみんなめちゃめちゃバイトするっていう状況で、私もご多分に漏れずバイトをしてたんですけど、ちょっとずつちょっとずつ、飲み会とかで知り合いとかが増えていって、だんだんだんだん他も手伝ってくれっていう感じ……。

【山下】ああ、劇団関係者の。

【綿貫】そうなんです。

【山下】なるほど、横のつながりですね。

【綿貫】手が足りないから受付手伝ってくれとかっていうのは、ちょっとずつちょっとずつ、宴会を経ていくたびに……。

【山下】営業になってたんですね、宴会が(笑)。

【綿貫】みたいですね。そういう、受付をやるみたいな人もいないので、ちょっとずつちょっとずつそういうのが増えていって、ちょうどそれと同時に、劇団主体みたいなものからプロデュース公演みたいなものが一気に……。

【山下】変化してきたのかな。

【綿貫】変化してきた。

【山下】劇団性からプロデュース公演へ。

【綿貫】ちょうど90年代中盤くらいから。
私の印象としては、最初に携わったときなんかは、劇団員の方は他劇団に出るのは禁止っていう感じがあったんですね。

【山下】あったんですね~! そうなんですか。

【綿貫】それをするためには、座長にすごい許可を取らないといけないとかで、何のために他劇団に出るんだとか、すごくそういうことを問われていくんですけど、今は全然そういう垣根が全くないじゃないですか。

【山下】ですよね。どこでやってもいいみたいな。

【綿貫】どこでやってもいいし、誰が何やってもいいみたいな。こんな自由になるとは思わなかったんですけど、その当時はやっぱりスタッフもそうでしたし……あそこではやってほしくないとか、そういうのがすごくあったところから、90年代中盤は、少しずつプロデュースで、新しいユニットというか、違う名前で、劇団内で別のユニットが立ち上がるみたいな、そんな時代にも差しかかってたので、やっぱり製作が足りないんですよ。

【山下】そうですよね、それはそうですよね。

【綿貫】そうなんですよ。で、劇団員がやるわけにもいかないし、そういうのは。

【山下】プロデュースというのは製作じゃないですからね。

【綿貫】そうなんです。それで、やっぱりちょっとずつちょっとずつ……5年いた中ではどんどんどんどん仕事が増えていった感じです。

【山下】なるほど。じゃあもう、どんどんどんどん業界の中で、仕事手伝って、手伝ってっていうのが増えていった。

【綿貫】そうですね。それで少しは……だんだんお金も少しずついただけるようになっていったので……。

【山下】仕事も覚えてくるし。

【綿貫】そうですね。バイトもしてましたけど、バイトやりながら、それをやりながら。で、バイトも休めるバイトを選んでいたので。出版社のバイトとか、そういう休めるバイトを選んでいたので、なんかうまく両立できたっていう感じですね。だから5年間くらいはそれでずっと……。あ、なんかこれお仕事になるかもっていう。

【山下】思われたんですか?

【綿貫】5年後くらいにはなんとなく……もしかしたら、これやっていけるかも……みたいな。全然具体的に何も考えてないんですけど、仕事がいっぱい、断るくらい来てたから。

【谷】ああ、そうなんですね。

【綿貫】そうなんです。もういないんで、他に人がいないんですよ。

【山下】やっぱり制作部ってそういうところかもしれないね。

【綿貫】本当に人がいなくて、みんな連絡してくるので、お断りしなくちゃいけないくらい。

【谷】フリーのCMの、プロマネがいないっていうのと同じかもしれないですね。

【山下】CMのプロマネ……制作っていうんですけど、僕らも。だから、制作が足らない、制作が足らないって、もうずっと……映像業界も同じ。

【谷】それでけっこうギャラが高くなっちゃったりしてね。

【山下】だから今はちゃんとお金を払うようになって。

【綿貫】それはやっぱり、最初の頃はギャラを払わなかったからそういう……。

【山下】ギャラは1日何万円とかで安かったんですけど、だんだん1本で何十万とかっていう話になって。

【谷】需給バランスが逆になっちゃったからね。

【綿貫】でも本当に、製作1本でやってるっていう人がいなかったんですよね。だから役者兼っていう人は多かったんです。

【山下】そうそう、役者をやりたいから制作をやってたっていう感じですよね、そもそもがね。

【綿貫】そうなんです。そもそもが役者として出たいけど、小道具とか衣装はできないから、製作をやってるっていう人もすごく多かったので。劇団て、やっぱりそれぞれみんな得意なこと……自分はこれしかできないからっていって任せられる。例えば宴会を仕切るのがうまい人はそれで宴会部長になってるし、私みたいに運転が得意とか、車を持ってるっていったら、そこはもう運転手みたいなことで、みんなそれぞれ得意分野を活かしていけるとかっていうことも、私にとっては、なんかすごくいやすいなっていうか、一般社会で印刷会社とかに務めてたとき……サラリーマンですよね。やっぱり息苦しさとか、合わないなっていう。

【山下】役に自分を合わせていかないといけないんですよね、会社員って。

【綿貫】そうです。会社員がどうしても合わないのと、一般社会と自分のずれ……みたいなものをすごく感じてたことがあるので、なんかすごくいやすいなと思ったんですよ。何してもいれるんだ、ここに。得意なことがあれば。

【山下】認めてくれる感じがある。

【綿貫】そうですね。それで、なんか居場所があるなっていう。ああ、なんかここに、もしかしたら私いれるかも……って思いましたね。

【山下】これ、なんか大事ですよね。演劇界だと居場所が見つかるかもしれませんねっていう。みんなきてくださ~い、みたいな。

【綿貫】そうですね。一般社会に馴染めない……馴染めなかったんですね、私も。

【山下】それはありますよ、みんな。みんな持ってて、それで無理くり馴染もうとしてるか、そうじゃなくて飛び出すかっていうことだと思うんですね。

テキスト起こし@ブラインドライターズ
(http://blindwriters.co.jp/)

☆いつもご依頼をいただきありがとうございます。

今回は、劇団の裏話? のようなお話で、またまたとても楽しく作業をさせていただきました。次回はどのようなエンターテイメントのお話が聞けるか、次に担当させていただくのを楽しみにしております!引き続きのご依頼をお待ちしております。
ブラインドライターズ 担当:小林 直美 

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