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【POD CAST書き起こし】三鷹の森元さんに演劇プロデュースのことを聴いてみた:全5回(その5)太宰治と桜桃忌にちなんでの公演と三鷹のこれからについて伺う。

【山下】そういう意味では三鷹さんの『”Next” Selection』ていうのは新しいこれからのところをいっぱい発掘してきたんですけど、またこれからもずっと力がある限り続けていくという。

【森元】そうですね。淡々とというか、良いところがあれば。でも無理して数合わせで劇団をお呼びしようとは思わないので、良いなと思うところがあったらお声をかけて丁寧にやっていけたらなと思いますね。

【谷】今年は8月ですか?

【森元】今年は8月の頭と9月の頭で2劇団ですね。

【谷】そうですか。その前にあるのがiakuさん。

【森元】iakuさんと小松台東さんで今年は暮れに城山羊の会さんを予定して。

【谷】小松台東さん僕大好きなんですよ。

【森元】ありがとうございます。松本さん頑張ってほしいなと。良い作品を作られているので。

【谷】そうですよね。宮崎弁ですよね。

【森元】宮崎弁でね。

【山下】宮崎のご出身なんですか?

【森元】宮崎のご出身です。小松台東っていう町に住んでいたんです。

【谷】そうですか。

【山下】そんな町あるんですか。

【森元】小松台東、まあ小松台西もあるんでしょうけど、宮崎の人が言うには住宅街らしいんですよ。

【山下】有名なんですね。

【谷】最初ね、小松、こっちだったら台東区の台東だと思っちゃいますよね。

【森元】台東ってよく言われます。「コマツタイトウ」って読まれますね。

【山下】そうか。台東区だからね。同じですものね。

【森元】たいていは台東区がくるんで。小松台東(こまつだいひがし)っていうのは宮崎だと一発でみんな読むんでしょうけど、東京ではなかなか。

【山下】そのあとに『”Next” Selection』が。

【森元】今年は劇団普通っていうところと桃尻犬。

【山下】ちょっとですね、せっかく三鷹さんのお話なので、三鷹さんは6月の太宰治の桜桃忌に必ず太宰治にちなんだことをされていますけど、これは森元さんが入ってきてからお始めになったんですか?

【森元】そうです。三鷹市芸術文化センターができたのが1995年の11月。私が偶然採用されたのが1994年の9月です。勤めてみたら芸術文化センターの斜め前には禅林寺があってそこに太宰のお墓があります。それから太宰が生きて最後亡くなるまで三鷹に住んでいましたから、そういうゆかりが非常に太宰は未だに読者が途絶えない。本当にこの間も言ったんですけど、今読んでも最近のエッセーっていうくらい文章が滑らかで、暗いとかいうイメージの方もいるでしょうけど確かにそう感じる作品もあるんだけど、実際には本当に明るさに満ちてユーモアに満ちた作品がたくさんあるんですね。女性の告白体みたいな、女性言葉で書いたり、『女生徒』とかですね、いろいろあるので、太宰っていうのは本当に文章がうまい人だなと思っているので、それでまず朗読会。

【山下】スライドを少し。こんな感じですね。

【森元】いろんな俳優さんに朗読をしていただいてということですね。毎年違う方に出ていただいてということで朗読会をしていただいたり。これが先行して始まって後に太宰治作品をモチーフにした演劇公演ていうかたちで。

【山下】2004年から。

【森元】そうですね。いろんな劇団に。これ太宰の作品をそのままやっていいですよ、やってもいいし、モチーフにしてセリフ使ってとか、このシーンを膨らませてとか、太宰が出てくるその頃の話みたいなのは何でもいいですよと。

【山下】太宰治かどうか分からないこともありますね。

【森元】そういうのをやっています。それで太宰を顕彰していけたらなということで、今のところまだ太宰の作品をそのままやる劇団はないです。やっぱり創作意欲というか。

【山下】分かります。

【谷】CHAiroiPLINさんも。

【森元】やりました。CHAiroiPLINもやりました。

【谷】やりましたよね。最終日に行ったら小道具が全部あれですよね。プレゼント。

【森元】あー、プレゼント。

【谷】プレゼントか。オークションじゃないんだ。早い者勝ちでっていうね。

【森元】はい。早い者勝ちでしたね。

【山下】CHAiroiPLINは時々それやりますね。

【森元】あれゴミになるのでね。でも何か欲しいものがあればどうぞっていうのは。

【山下】リユースしたほうがいいですよね。

【森元】昔ある劇団がCHAiroiPLINじゃないですけど、ボーリング場のシーンがあって、ちょうど潰れたボーリング場からボーリングの球が出てくるところとボーリングの球を結構もらってこられたんです。あれ作ろうと思ったら結構大変なんです。

【山下】大変ですよね。重いし。

【森元】だからそれを借りてきたのはいいんだけど、最後いらないよーみたいな。

【谷】重いしね。

【山下】しかも山ほどあるんです。廃棄量がすごい半端なかったみたいなのがあって、そういうのはあったりしましたけどね。

【谷】すみません。脱線しちゃいました。

【森元】いやいや、いろいろ太宰のことはやって。

【山下】あれも毎年やるっていうのは決めてらっしゃるんですね。

【森元】別に決めてはないですね。今は決めてないです。またこの劇団にちょっと作ってもらいたいなと思った年はやる。

【谷】そういうときにやると。なるほど。あれは6月の桜桃忌を意識されてる。

【森元】そうですね。それを意識しています。前回これ申し上げたかもしれないですけど、青山円形劇場さんの『ア・ラ・カルト』が12月にいつもやっておられて、それが12月が来ると青山円形劇場で『ア・ラ・カルト』があるというふうに劇場を認知してもらうっていうのは素敵だなと思ったので、三鷹のホールでも6月になると太宰の朗読会とかお芝居とかあるかなと思ってもらえるとしたらそれは素敵なんじゃないかなと思ってやってましたね。

【山下】ということでですね、あと15分くらいしか時間がなくなってきた。だいたい今日終われそうな感じの構成にしていますが、森元さん今まで20数年、26年目ですか? やってらっしゃいますけど、これからどういうふうにしていこうかなとかそういうのはあります?

【森元】でも本当に一つ一つのことをきちんと終わらせていくというのは、どんなに周りの方から見て小さな公演とか、三鷹市の人からもよく聞かれるのは今年の目玉ってどれですかとか聞かれるんですけど、私たちも目玉的なものもあったりするけど、手掛ける以上はどれも一緒なんですよね。お客さんのほうで三鷹で見た公演、まあお口に合う合わないはあると思うんだけど、三鷹で見た公演はすごく面白いのが多かったねとか、落語にしても面白いラインアップだねと言ってもらえるように一歩一歩丁寧にやっていくだけなので、強いて言えば今まで思ってた劇団を決して妥協というか数合わせじゃなくて、良いなと思ったお芝居はもっとたくさんの人に見てもらえたほうがいいので、僕が良いお芝居だと思うけどなという劇団や芝居を呼んできて上演する。そしてきちんと成功させる。劇団にとっても、三鷹でこの時期にこの公演ができて良かったって言ってもらえて、やっぱり今なかなか演劇ってお金になるのが難しかったりもするところがありますが、映画とかのキャパシティーに比べて。

【山下】人数がね。

【森元】映画だと大ヒットということになると億とかね。使うお金も大きければ入ってくるお金も。だからなかなか演劇の世界だけで食べていくとなるといろいろな劇団の方がある時期に諦めてしまったりとか、ここで終わりにしようとかいうことも出てくると思うんだけれども、良い作品を作っているなという劇団には少しでも応援ができて、もうちょっと頑張ってより多くのお客さんに見てもらえる、三鷹の次とかに行ってもらえたり、三鷹でたくさんのお客さんを集めるような公演ができるとか、そういうのを一個一個丁寧にやっていって次の世代に託していけたらなと思いますね。だから自分も偽らずにやれたら、劇団の不利益にならないようにどれだけ寄り添えるかっていうことだけですよね。それは簡単じゃないので、こちらは良かれと思ってやってもそうは取ってもらえないときも当然ありますから。私もいろいろ今日しゃべらせていただいてますけど、力足らずのところまだまだたくさん、失敗する部分もたくさんありますから、そういうのを経験していきながら、良い芝居が増えれば演劇が好きっていうお客さんが増える。そうすれば演劇をやろうっていう人も増える。ますます良い芝居が増えるということだと思うんですよね。

【山下】人生豊かになりますよね。劇場って栗山民也さんの本でやっぱり心の健康? 学校は頭の健康、体の健康は病院。劇場は心の健康を保つ場であると。僕はアートは全部そうだと思っていて。やっぱり不要不急じゃないのかもしれないけど僕は絶対にたいせつなものだと思います。

【森元】そうね。だから今アンケートとかで万全な感染症対策とこちらは思って一応やらせていただいています。それでも人から見れば甘いって言われるのかもしれないけど、やれる限りのことをやってお客さんをお迎えして、アンケートに「やってくれてありがとう」とか「久しぶりに笑って元気になった」とか書いていただけると良かったなって思いますし、今のところありがたいことに三鷹の劇場で出演者の方、スタッフ、お客さんから「陽性反応が出たんですけど」っていう連絡をいただいたことは今日現在ないので、本当にそれもありがたいなと思っていますけど、ガイドラインに沿いながらなんとか良い公演をきちんとお客さんに届けられるように。今はそこが優先にはなりますけれども、ずっと思っているのは演劇を見るお客さんが見に行ってみようかなと、一度三鷹のホール見に行ってみようかとか、三鷹じゃなくてもいいのでお芝居見に行ってみようかというお客さんが増えればいいな。そのためには良い芝居が増えればいいな。やっぱり高いお金、結構チケット代高いからそれであまりにお口に合わない芝居が2回3回続くとやんわりやんわり足が遠のくかもしれない。それもテイストにもよるからあれですけど、そのためにも三鷹のホールでやってる公演は最低でも僕自身は良いところがある劇団なんですよというものを紹介したいなと思いますね。

【谷】ぜひこの番組をお聞きになったり見ている方は三鷹市芸術文化センターですので、星のホールですよね。駅からちょっと遠いんですけれども、駅から徒歩15分。

【山下】商店街とかもいいですよね。

【谷】瀟洒(しょうしゃ)な街ですごく良いですし、近くには先ほどの太宰治のお墓がある禅林寺。そこは森鴎外のお墓でもあるんですよね。

【山下】らしいですね。

【谷】なので、昼公演とかだったら帰りにそちらにも顔を出すとかいうこともできますし、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。

【森元】よろしくお願いいたします。

【山下】ということで、あと8分くらいで終わらなきゃならないんですけど、森元さんいろいろありがとうございました。2回にわたって。後進にこれから継承していくということが森元さんのあれでもありますけど、そこをぜひしっかりやっていただいて。

【森元】後進は後進でやると思うんですけど、森元さんていう人は、こういうところを大事にしてたなっていうことだけは伝えておいて、あとは自分たちの好きなようにやればいいと思うんですけど。

【山下】それは良いですね。背中を見せるという。

【森元】全然違うかもしれないけど自分に偽りをなくやってもらえればいいなと思います。

【山下】わかります。嘘をつかないで生きていくってすごく難しいじゃないですか。それができたのは森元さんは幸せだったのかもしれないなと思います。

【森元】いや、仕事に関しては本当にありがたいなと思っています。

【山下】やっぱりこの25年で三鷹の演劇とか落語もそうですけど、ああいったものが一つのブランドになっていったんじゃないかなと。大きなブランドじゃないかもしれないけど知る人ぞ知る。どうですか谷さん。三鷹のイメージは。

【谷】三鷹はね、僕、横浜だからやっぱり遠いんですよ。だからなかなか最初のほうは行ってないんですけど、さっき出た小松台東さんとかそういうところから接点が生まれて行くようになって。楽しいですよ本当に。

【森元】よくこだわりの店みたいなのありますよね。西荻窪辺りとか。そこの店に行くと良い雑貨があるんじゃないかとか、たまに行ってみたいしなんか気になると。どこにでもあるものだとわざわざ三鷹の遠いところまでは来ていただけないと思うので、そこは奇をてらうとかではなくて本当に良いものだけ仕入れて評価は決めてくださいっていうふうに思いながらやるかなと思いますね。

【山下】あとはそれを継続してきた力だと思うのでそれは。

【谷】本当にすごいですよね。

【森元】いやいや、本当に無邪気にやっていただけなので。

【山下】谷さんどうですか? 最後にこれ2時間くらいお話しさせていただきましたけど、何か最後に。

【谷】なんでしょうね。とにかく僕はこの『”Next” Selection』のメンバーというか劇団名を見て本当に今となってはすごくびっくりしちゃうんですよね。

【森元】今は、大きい芝居やってる劇団はたくさんありますし。

【谷】本当に2012年なんていうのはマームとジプシー、はえぎわ、モナカ興業っていうのは皆さん名前は知らないかもしれないけどすごいですよね。森さんですよね。

【森元】モナカ興業は森さんです。演出家のほうがすごく著名になられて。

【谷】最近僕はアゴラのほうに会員になっていて、結構アゴラ系を見ていて玉田企画とか。鳥公園も一昨年くらいかな? 西尾さんの公演見てすごく良かったんですよね。そこら辺をいち早く森元さんが見つけて育ててきたんですよね。

【森元】そんなことはないと思います。本当にその時その時で良いなという劇団をずっと見て、すごく力も付けてこられたからとか、さっき言った、すごく良いの作ってるけど前回ちょっといまひとつだったから、2連勝されてるしそろそろ、とか、ずっと見ていく中でこれ飛びぬけて良い作品作られたなとか。

【山下】それは出会うとうれしいですよね。

【森元】でも一応劇団名は言わないですけど、中には1回見て1回で決めた劇団もあります。あまりにも面白かったので。でも一応DVDとかちょっとお貸しいただいて過去にもクオリティー高いもの作っておられるなという。かと思えばずーっと1回目から見てちょっとしばらく目離れてまた見てみたらっていうのは、はえぎわさんとかそんな感じですよね。はえぎわさんはすごい初期のころから見てたけど、カオスな芝居作っておられたので、エネルギーすごかったんですよ。すごい狭い小屋にぶち込むだけぶち込んだみたいな感じでやってた。

【谷】川上友里さんとかね。

【森元】面白かったんですけど1回ちょっとはえぎわさんを見ない時期があってまたしばらくして見たら面白くて、お声かけて。この年とかは、これ9月10月だからだいたいその前の年とか前の前の年くらいに声かけているんですよ。でもその2012年の2月か3月にマームとジプシーとはえぎわさんが同時に岸田國士戯曲賞を取ったんですね。岸田國士戯曲賞を取った2劇団が登場みたいな感じだったんですけど、本当にたまたまです。マームとジプシーさんとかはまだ桜美林で大学の劇団としてやっておられたころから見ていて、偶然ですけどいろんな事情があって見る機会があって、大学の学内の施設で公演をやられていて、その頃から見ていて、すごく良くなられたなというので、お声かけさせていただいたというのはありますよね。

【谷】なるほど。本当に今後とも続けていっていただきたいし、良い劇団を発掘じゃないですけど見せていただきたいですね。

【森元】可能な限りやっていきます。よろしくお願いいたします。

【山下】私も本当にいつも学ばせていただいています。

【森元】いやいや、うちも本当に全部全ての公演を見て決めてますなんてとても言えないので、偶然見れた劇団だけなので、それでお口に合う、良いなと思ってもらえる劇団が見ていただける方の中に生まれたら本当にうれしいなと。劇団のことも応援できたら本当にうれしいなと思いますね。

【山下】また新しい『わが星』みたいなものが生まれるといいですね。

【森元】それは、本当にいつも思っています。

【山下】ではちょっと時間もあれなので、最後にお知らせです。このTFC Podcast BRAIN DRAINではnoteを開設しておりまして、noteでこういった記事とか今日お話したことを文字起こししてBRAIN DRAIN書き起こしとして超長文の記事が出ていますのでそれも合わせてご覧ください。
ということで2回にわたって森元さん来ていただいてありがとうございました。

【森元】ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

【山下】これからもよろしくお願いします。では、カメラに向かって、また次回! さようなら。ありがとうございました。

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)
担当:越智 美月
ご依頼ありがとうございます。
「劇場は心の健康を保つもの」という言葉がとても印象に残りました。コロナウイルスの感染が拡大し、不要不急という言葉を毎日のように聞くようになりましたが、芸術鑑賞は不要不急ではないと私は思います。体は健康でも心が健康じゃないと何もできなくなってしまいますし、劇団も発表をする場がないとモチベーションが下がってしまうので、感染対策をしてぜひ続けていってほしいなと思います。
ありがとうございました。

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