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【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキ次回作「一九一一年」について演出家:日澤雄介さん、劇作家:古川健さんに聞いてみた。

TFC LAB PRESENTS PODCAST「BRAINDRAIN」で劇団チョコレートケーキの演出家:日澤雄介さんと劇作家の古川健さんに、次回作についてお伺いしました。

【山下】劇団チョコレートケーキの「一九一一年」の公演が今度7月の10日から18日まで三軒茶屋の世田谷パブリックシアターのシアタートラムでありますと。

【日澤】そうですね。久々ですね。

【山下】このお話をさせていただきたいと思いますが。私はですね『大逆事件』の話、幸徳秋水の話ですか?

【古川】幸徳事件の話です。

【山下】僕、これは実は観てないんですね。どんなお話なんでしょうか? ネタバレにならないところで。

【古川】『一九一一年』2011年に初演をしたんですけども、『大逆事件』を裁いた側の立場から見るって描いてみたらどうかなということで、判事、検事辺りが主要な登場人物になってるんです。

【谷】そうなんですね。

【山下】法廷ものですか?

【古川】法廷シーンもありますけど、むしろ取り調べとかそっちのほうが……。

【谷】なるほど。

【古川】ちょうど1911年から100年で。

【山下】あ、そうか。初演時は、ちょうど100年前ですね。

【古川】処刑があったのが1911年なので、そこから100年後ということで2011年に初演だったんですけども。

【山下】そうか、それで2011年で。

【古川】はい。

【山下】今年はやっぱり10年経ったからとかっていうのもあって、これをやろうとした?

【日澤】それもあります。この当時、この作品自体は王子小劇場の劇場主催の賞があるんですけど。

【山下】佐藤佐吉演劇祭。

【日澤】かな? それで脚本賞を取ってるんです。

【古川】女優賞。

【日澤】あとそう。優秀主演女優賞かな、取ってて。なんだけどあんまり観ていただけてない作品ではあるんですね。

【谷】上演も短かったんですね。

【日澤】そうですね。すごく短くて。なので、ぜひとも皆さんに観ていただきたいなっていうのがありまして。
これ見て分かる通り2011年の12月にやって、この次が2012年の10月になってるんですけど。

【山下】あ、本当だ。

【日澤】あまりにも集客が悪くて。

【山下】そうだったんですか。

【日澤】結構な借金をして……。

【山下】王子小劇場。

【日澤】はい。1年活動を止めざるを得なくて、なかなかいわく付きの……。

【山下】なるほど。

【日澤】でもこれで、例えばCoRichの投票で初めて上位に来たのがこの作品だったりとか。

【山下】だから、作品が良かったのに、というのでもう1回やってみようかと。

【日澤】そうなんです。それこそ10年っていうきりもありましたし。僕もこれ演出4本目とかだったから全然なんでしょうね……今やったらどうなるんだろう? っていうのも含めてちょっとチャレンジしたいなと思ってます。

【山下】これもあれですかね? 女性が……。

【日澤】堀奈津美さんです。

【山下】あとは男性?

【日澤】男性です。

【山下】じゃあまた紅一点の。

【日澤】そう。紅一点システム。

【山下】堀奈津美さんを観に行くのが楽しみだな。

【谷】堀さん、前回出てたよね。

【日澤】そうです。堀さん初演のときも出ていただけていて。堀さん5年ぶりの舞台なのでこれが復帰戦なんですよ。

【古川】そうなんですか。

【谷】DULL-COLORED POP。

【山下】谷賢一さんのところですよね。キャスト自体は10年前と堀さん以外は変わってる?

【日澤】変わってるところもありますし、同じく出ていただいている方でも配役が全然違うので。

【山下】なるほどね。

【日澤】面白いですよ。

【山下】これは初演よりも尺が短くなったりとかしてるんですか?

【日澤】尺は短くはなってないんじゃないですかね。

【古川】たぶんなってないですね。

【山下】ということは2時間くらい? まだ稽古中なんで確定ではないでしょうけど。

【日澤】そうですね。だいたい2時間を目指して。初稿がやはり長くて、それをカットして初演の上演台本作ってたんですけども。

【山下】そっか、初演のときにね。

【日澤】まだちょっと……また初稿からもう1回当たり直してやり直してるんで。だいたい同じなんですけど「これ切ったんだ昔の僕」みたいなのはあったので。

【山下】それは自分で意識しながら。面白いですよね。

【日澤】「これは復活させよう」みたいなのはありましたね。

【山下】初稿はちゃんと残してたんですね。

【日澤】そうですね。データでも残してるし、カットしてる前の初稿の台本があるのでそれを見て。

【山下】初稿を残しておくのも貴重なことですね。

【日澤】このときはまさか再演するとは思ってないんですけど。でもまあそうですね。

【山下】それはすごく勉強になりましたね。

【日澤】劇団の台本……僕結構自分でやった演出台本は全部残してる。あんまり書き込みはしないほうだからまっさらなんですけど。

【山下】この舞台の見どころは何ですか?

【日澤】見どころですか? どこでしょうね?

【谷】思わせぶりですよね。(笑)

【日澤】さっき古川君ともちょっと外で話したんですけど。10年経って構造を再確認して、それを初演のときには結構勢いで持ってっいっちゃってたなっていうのが演出的には「ここ全然構造掴めてないな」とか。
やっぱり事件の話なので事件がこうなってくっていう……裁く側から見てこうなってってるよっていうこれを「うわっ」って行っちゃってたので、そこを1つ1つ、階段っていうか積み木を積んでくような感じで今作っていってるので。

【山下】なるほど。

【日澤】そこの、からくりというか、歯車がガガガガガって動いて行く感じみたいなのは、ぜひ楽しんでいただければ。ちょっとサスペンスでもありますし。

【山下】そうなんですね。

【日澤】みんな偉い人が出ますから。

【山下】日本近代史に残る……。

【日澤】大審院長とか。

【山下】すごい人。なるほど。

【日澤】なので、そういう意味ではすごく硬質な作品であるのは間違いないんですけれども、その中ですごく葛藤があったりとか。紅一点の堀さんが管野須賀子を演じるんですけれども、この方の居住まいとかもぜひとも観ていただきたい。自由って何なんでしょうか? っていうのをね。
(※:管野須賀子:明治時代の新聞記者・著作家・婦人運動家・社会主義運動家であり、幸徳事件で処刑された12名の1人で、大逆罪で死刑を執行された唯一の女性でもある。)

【山下】自由ね……。

【日澤】この時代にちょっと古川君は問うてるんじゃないかなと私は思ってますけども。

【山下】なるほど。この前、周庭さん、アグネス・チョウさんが解放されましたけど。

【古川】そうですね。

【山下】今、香港で起きている問題とか、ウイグル自治区で行われている綿花労働の話とか、ミャンマーもそうですけど。そういった自由がないところっていうのがまだありますけど、そういうのに通底するところがあるんでしょうか?

【日澤】どうなんでしょうか?

【古川】そもそも別に外国に例を取らなくても日本の自由がどんどん制限されていってますよね。我々は気が付いてないだけで。

【山下】そっか。

【古川】報道の自由ランキングだって先進国の中で相当下のほうだし。だからそういう意味で言うと、我々が気が付かないうちに、いつの間にか権力っていうのは暴力装置に化すんだっていう問題提起は10年前初演したときよりもさらに……。

【山下】強くなってると。

【古川】身につまされるというか、僕は危機感を持っているところなので、そういう考えるきっかけになったら嬉しいなというふうには思っています。

【山下】そうですよね。さっき古川さんが「演劇をやりたいから戯曲を書いてる」っておっしゃっていて。これたまたまお書きになって再演なんですけど、僕たち観客にとっては、小劇場ファンにとっては観ることによって考えるきっかけを与えてくれるのがすごく演劇のいいところなんですよ。
演劇って単に観て楽しむだけじゃなくて、それを観ながら共体験して、思考を始めさせてくれる体験であるっていうのは、演劇のすごくいいところだなと思っていて。
そうすると、劇場を出て「ああ面白かった」で終わらないわけですよ。「あれはなぜだったんだろう?」っていうのをずっと考え続ける。それらの問題が自分にまとわりつきながら一生付いて回るっていうのが、これがね僕、演劇の最大の魅力だと思うんですね。
これは他のメディアではなかなかなくてですね。

【古川】そうですね。もちろん腹の底から笑って劇場出たらすっかりすっからかんになってっていうのも非常にいい演劇体験だとは思うんですけど。

【山下】それはそれでいいですけどね。それも1つのありだと思います。

【古川】でもその知的好奇心を刺激してなにがしかの考えるきっかけをお客さまと共有するっていうのも、もう確実に演劇の持っている強みと言うか、魅力の1つだと僕は思うので。

【山下】そうなんです。知的好奇心を刺激してくれるんです。本当に。

【古川】「僕はこう考えてるんですけどみなさんはどうですか?」っていうところでお帰りいただくっていうスタンスで作っていきたいなっていうのは思っています。

【山下】そうなんですよね。まさに。答えって分からないじゃないですか? 正解なんか誰も分からなくて。だって時代によっても変わるし。
だからそれを「俺はこうだよ」で「貴方はこうだよ」っていう、それを対話できる場所を作ってくれるだけで本当に僕は演劇のみなさんありがとうっていう感じが毎回してますよね。

【谷】それでそのあとに、例えば山下さんと一緒に観に行ったとしたら飲めるじゃないですか。

【山下】そう。昔はね。今は……。

【谷】今は、ダメなんですよね。

【山下】だから本当は演劇体験って、演劇と共にそのあと居酒屋とかでしゃべりながらっていうようなことも含めてが、やっぱり小劇場ファンのすごくいい演劇体験なんだけど。

【谷】そうなんですけどね。もうしばらくそこは辛抱ですね。

【山下】でも本当に7月10日の公演前にお2人来ていただいて。

【谷】お忙しいところ本当にありがとうございます。

【山下】ありがとうございました。

【日澤】こちらこそ、ありがとうございました。

【山下】ということで最後に。お2人とも、もう3時間近く色々お話をしましたけど、古川さんいかがでしたか?今日話をさせていただいて。

【古川】なかなかしゃべるのが苦手で……。

【山下】そうですか? 声がいい声だから。

【古川】でもこんなふうにしゃべる機会ってあんまりないので、今日はすごい、いっぱいしゃべれたなっていうのが少し嬉しい気持ちです。

【谷】良かったですね。

【山下】ありがとうございます。では日澤さんいかがでしたでしょうか?

【日澤】本当にざっくばらんに色々とバラエティ豊かに話せたので。僕ね、これ見て。

【山下】これなんです?

【日澤】チョコレートケーキのTシャツなんですよ。

【山下】なんかちょっとかわいいじゃないですか。

【日澤】そう。だからこれが劇団の初期のほうのやつなんです。

【山下】ちょっとカメラ寄りますね。

【日澤】これ、今日色々と生い立ち話すっていうことなので。

【山下】これはもうシアタートラムでは買えないんですか?

【日澤】買えないです。もうこれは絶版です。

【山下】じゃあ買えないので見るだけです。

【日澤】全然売れなくて……。

【山下】本当ですか? かわいいじゃないですか。

【日澤】そうなんです。これね、その当時のお客さまがアンケートに文字を書くんじゃなくていろんな絵を描いてくれていたんですよ。

【山下】上手いね、これ。

【日澤】そのうちの1枚で。すごく味があっていいなと思ったからTシャツにして売ったんですけど全く売れなくて。僕とか古川君も持ってます、その当時のみんな。

【山下】チョコレート色のTシャツ。

【日澤】そう。これとあとね、ネイビーがあるんです。今日昔の話もするかなと思って「こんな団体でした」っていうのを。

【山下】初演からお話をしていただきました 。

【日澤】そうなんですこれ、げ、きだんチョコレートケーキって。

【山下】「げ」なんだ。「げ」があるんだね。面白いですね。ありがとうございました。

【日澤】はい。本当に楽しい時間ありがとうございました。

【谷】ありがとうございました。

【山下】谷さん、いかがでしたか?

【谷】いやもう本当に、今日はファン目線ですから。素晴らしいいい時間で、共有できて良かったです。

【山下】ということでですね、本当にお時間ありがとうございました。

【日澤】ありがとうございました。

【古川】ありがとうございます。

【山下】小劇場好きとしていろんな人に来てもらってですね、こうやって話をしてるんですけど、この番組のいいところは「こんなところをしゃべっても活字とかにならないだろう」っていうようなところまで割と細かく聞くように、わざとしていて。あとでこれ文字起こしをしてもらってnoteにあげるんですね。この文字起しのゲラを読むのが僕はすごい楽しみで。

【日澤】ああ、そうなんですね。

【山下】活字になったら毎回ものすごく面白いんですよ。

【古川】そうなんですか。

【山下】1ヵ月くらいかかるんですけどなるべく早く活字にもしますんで。これ動画と音声の編集してまた来週にはアップしていきたいと思いますんで。
ということでまた来月も谷さんの観劇に始まって、いろんなものをゲストを呼んでやっていきたいと思いますが。日澤さん古川さんありがとうございました。
じゃあカメラに向かってさようなら。

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)


---- 担当: ブラインドライターズ 角川より子 ----
いつもご依頼をいただき誠にありがとうございます。
目の前の情報がすべて正しいと疑わずに過ごしてしまいがちですが、そんな私のような人たちにも、考えるきっかけを演劇を通して与えてくださっていることを知り、勉強になりました。
そして文字起こしをした活字を楽しみにしていただいているご様子を伺うこともでき、とても嬉しかったです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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