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「ニワトリかラマか」製作メモ

人の記憶は儚くしばらくすると驚くほど忘れてしまうので自分の記憶用として製作過程を残しておきます。

「ニワトリかラマか/Chicken or Llama」はゲームマーケット2018秋にて発売した同人ゲームです。

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最初のきっかけは「パンデミック・レガシー」が大ブレイクしレガシー・システムが流行っていたので、「500円レガシー」とかできないかな?と冗談ぽく思ったことからでした。メモには以下のようにありました。

◆500円レガシーシステムゲーム
カード(お札)に目印をつけるゲーム。
プレイを重ねるごとに目印が積み重なっていく!

カードの背面に傷や汚れが着くことは「マークド(marked)」、牌だったら「ガン牌」などと言い、ほとんどすべてのゲームはそれで台無しになってしまうNG行為です。そこを逆手に取り、目印をつけていいゲーム、いかに目印をつけるかをテーマにしたゲームを作ったら斬新では?と思いついたのが発端です。昔の傷を見て「この傷はたしか寺田屋で襲撃を受けた時の…」みたいな感じのができたらいいな、とw

お札に印をつけるトリック

一見どれも同じに見えるお札ですが、それに目印をつけて追跡する手法が実際にあります。例えば店で目印を付けた壱萬円札で買い物し、閉店後レジにそのお札があるかを確認。もし無ければ売上を誤魔化すためにレジから移動した可能性がある。あるいは誘拐犯に渡す身代金を準備する際すべての紙幣の番号を控えるか秘密の目印をつけ、使われた場所を特定する。
時々映画などにも登場するトリックですが、こういうのをゲームの中で仕掛ける遊びができないだろうか…と以前からぼんやりと考えていました。

基本システムの検討

さて、どういうシステムにしたら紙幣に目印をつけて見分けることが最も活きてくるだろうか?と数パターン考えてテストプレイしました。

A) ババ抜きタイプ
互いに他のプレイヤーから1枚引く行為を数回行ない、Aをたくさんもってれば得点、Bを持ってると減点。というシンプルな動きの中で紙幣に自分だけの目印をつけていきBを引かずにAを引けるようにしていく。

B) 1対1のジャンケンタイプ
同時出しではなく、野球のように攻守を交代制。カードを3枚出し、Aの枚数が多い方が勝つが、AAAはBBBには負ける。勝負に使った紙幣は互いに相手プレイヤーに渡す。これにより自分が目印をつけた紙幣を相手に送り込む。

C) 当てものタイプ
5枚の紙幣の中にアタリがあり、それを当てる。親は自分だけがわかる目印を付けた後シャッフルして場に並べ、まずは子が目印を推測して当てにいき、ハズれたら次に親自身が自分でつけた目印で判別して当てる(「ニワトリかラマか」の原型となったもの)。

試してみると、A案とB案は折り目を活用する難易度が高く、渋いゲームという印象でした(後から考えると「ここで折り目をつける」というフェーズをわかりやすく設ければよかったのかもしれません)。
一方、C案は目印をつけるフェーズが明示されており、テストプレイをしてみると皆ニヤニヤと悪そうな笑みを浮かべてお札を細工しはじめました。「ゲームの勝敗以前にお札を折る行為が新鮮で楽しい」との声もあったので、「これでいこうかな」と思いました。

ただしC案には致命的な欠点がありました。正解のお札になにか共通する目印をつけることを想定していたのですが、親が5枚全部にバラバラの目印をつけ「コレとコレが当り」と覚えられると手がかりがなく、ただの運ゲーになってしまうのです(これを指摘してきたのは例によって赤瀬さんw)。
これで一度は暗礁に乗ったと思われたのですが、自分でつけた目印を自分で答えるのではなく2対2のチーム戦にしチームメイトに当ててもらうとすることで解決しました。秘密の暗号を決める話し合いはゲーム開始時のみにすれば、1回目こそノーヒントに近いですが、複数回繰り返すうちに徐々に共通点が見えてきます。
お札を折ることの楽しみに加え、
・チームメイトと秘密の暗号を相談する楽しみ
・折り目で意思疎通するドキドキ
がゲームに加わりました。
当てる側もチームメイトと「ここが怪しい」とか「これ気にならない?」とかワイワイ相談しながら考えるので、1人で考えるよりずっと気楽にできます。

また繰り返し遊ぶと当りのお札とハズレのお札とで目印の付き方に差がつくことが予想されたので、5枚引いたうちの少数派が当りで多数派がハズレとしました。これにより当りは2枚、1枚、0枚の場合があり、まぐれで当たる確率も減りました(2枚固定の場合だと10%、0~2枚可変の場合は6.25%)。また秘密の暗号の決め方にも、より工夫が求められます。

お札のデザイン

デザインは地元長崎で活躍していたグラフィックデザイナー・川崎啓一郎さんにお願いしました。川崎さんは飲み仲間で本当に何度もよく一緒に飲んでたかたで、困った時はとりあえず相談すると「あぁ、いいですよ~」となんでも引き受けてくれました。しかし、この半年後に癌で急逝してしまい、私にとって川崎さんの遺作となってしまいました。。。

色イメージ

参考資料として1ドル紙幣を渡したところ、ド直球に1ドル札そっくりのデザインが来ましたw。 中央の人物は長崎に縁のある人物からのチョイスでシーボルト、胸にはミープルのワッペンを付けボードゲーマー・アピールです。サニバ鶏などもあしらってます。数字はゲームマーケットの開催日。文字やさまざまな記号が散りばめられていることは、秘密の暗号を決める際の手助けとなります。
例:「R」に折り目がついていたらラマ、等

どうしてニワトリとラマ?

よく「なんでニワトリとラマ?」と聞かれたのですが、この部分はゲームの肝となる箇所なので私も随分悩みました。理想は「髑髏と薔薇」です。タイルをめくって髑髏が出た時の「うああああっ!!」というショックが非常に印象的ですよね。ああいう感じを出したくて、
・インパクトのあるものだといい
・一方はギョッとする絵柄、もう一方は平和な感じ
・一瞬で違いがわかるよう2つの絵面はハッキリ違う方がいい
と、脳みそと目玉、ハトと銃、イグアナ、へび、ダチョウ、こうもり、ひよこ等々、いろいろ検討しました。

お札ss

が、どうもしっくり来ません。だんだんわからなくなってきて「もうこれでいいや!」とエイヤで決めたのが
・ニワトリとラマ
でしたw

ニューゲームズオーダー紙幣

テストプレイにはニューゲームズオーダー・ゲーム用紙幣を使っていました。

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これは本物のお札のようなザラっとした感触の厚みのある丈夫な紙でできていて、軽くなら折り曲げても元に戻って折り目が分からなくなるほど。これが本当に最高でこのゲームにはうってつけだったので、ニューゲームズ紙幣を作ったタチキタプリントさんに相談してみたところ同じ素材で印刷してもらえるとのこと。大きさも元版ではカードサイズだったのを千円札サイズにしたところ本当に本物のお札みたいで、かみさんが「紙幣偽造にならないの?」と心配するほどでした。

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本物のお札みたいな手触りです。

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札束!

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本物の紙幣に混ぜても違和感を感じません

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主だったところは、だいたい以上です。
書いてるうちにニワラマ熱が再燃してきたので、より遊びやすくした調整版をゲムマ2021大阪あたりに出そうかな、、と考え中です。

→ゲムマ2021大阪にて遊びやすくリファインした「ニワトリかラマか・ペルフェクト版」を販売します(ブース番号P17)

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