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「デモリションレーシング2055」制作メモ

デモリションレーシング2055」は2021年に制作したゲームですが、そういえば制作メモを書いてなかったので書いてみます。。

したきりすずめシステム

自分はいつもシステムから入る方で、このゲームもそうです。
昔話の「舌切り雀」で雀のお宿を出る時、みやげに大小2つの葛籠を選ぶ場面があります。控えめなお爺さんは小さい葛籠を選び財宝をゲットします。一方、欲張りな婆さんは大きい葛籠を選び酷い目に遭います。

事前に中身がわかれば誰も大きい方を選びませんが、どちらがハズレかわからなかった場合あなたならどちらを選ぶでしょうか?また選ばれなかった葛籠を雀がゲットするルールだったら?そしてあなたが雀側の立場だったら?
・・・というのを私は「舌切り雀問題」と呼んでいで、面白いジレンマなのでいつかゲームにしたいと何年か前から考えていました。

まとめると
1) 人数分の選択肢が場に出る 。選択肢は報酬に差がある。
2) 親は選択肢のうち1つに秘密裏にトラップを仕込む
3) 子が順番に1つずつ選んで取っていく
4) 最後に残ったものを親が引き取る
5) トラップ入りを掴んだ者は爆発する
6) 親を交代する

最初のプロトタイプ

最初のプロトタイプでは、数値が書かれただけの得点カードを取っていくだけのシンプルなカードゲームでした。成立してはいましたが、さっそく問題点が見えてきました。

問題点1:すごく下手な人がいるとゲームにならない
身も蓋もないですが、オラオラな感じで毎回一番大きい葛籠を選ぶ人がいると、ほぼその人がトラップを踏むだけのゲームとなり全然面白くありませんでした。下手な人がゲームを壊す問題は他のゲームでもしばしば見られますが、このゲームではシステム的に一度出遅れると挽回するには大きな葛籠を選ばざるを得ず、プレイヤーのせいとも言えないものがありました。
改善策として、選択肢が単なる数字の大小なのが原因では?と要素を増やしてみました。

得点要素を増やす試み
「自分はこのカードが欲しいけどあの人には不要」「自分は不要だけどあの人に渡したらまずい」といった具合に人によって価値が変わるような得点システムを目指しました。
・X個集めるとY点の宝石 (X個未満は0点)
・集めた数に応じて1,3,6,10…点と伸びる宝石
・「ケルト」のように半端に集めるとマイナスとなる宝石
・集めてはいけないドクロ (最多プレイヤーに-X点)
等々
ですが、要素を増やすことでまた別の問題点が出てきました。

問題点2:どれも中くらいの葛籠になる
選択の幅が増えた分、良し悪しが分かりづらくなり、どれが大きい葛籠でどれが小さい葛籠か見えづらくなってしまいました。微妙にサイズが異なる葛籠がいっぱいある、みたいになってしまったのです。結果、トラップを掴むかどうかがランダムな印象になってしまい、ジレンマ感が薄れました。

いろいろ考えた結果レースに

というけで、いろいろ考えた結果レースゲームとなりました。
まず、選択肢をシンプルに戻すことで問題点2を解消させました。その代わりに、ボード上の各車の位置によって都合の良い数字/悪い数字が人それぞれ違ってくるようにしました。
また下手過ぎる人がいるとゲームが壊れる問題に対しては、シンプルに脱落していただくこととしました。「脱落があるゲームはよろしくない」と避けられる傾向にある昨今ですが、個人的にはけして悪いことではないと思っています。理由は、勝てる見込みが無くなったプレイヤーをいつまでもゲームに付き合わせるより、また次回!とした方がサッパリしてると思うし、他人のプレイを観戦するのもけして退屈ではないと思うのです(公園で将棋してるのを取り囲んで観るように)。

位置によって各人の狙いが異なる部分は、コース上に危険物やエナジー的なものを設置する他に、「ウミガメの島(冷たい料理の熱い戦い)」「こぶたのおんぶレース」「キャメルアップ」等でお馴染みの、上に乗ると下の人に運んでもらえるシステムを採用しました。イメージとしては、スリップストリーム(=前方の車の後ろにピタリと付くと空気抵抗で引っ張られる現象)です。

初期のボードはすごろく

初期のボード

さて、最初はまさに「すごろく」といった感じの一直線のボードでした。ゲームの目的が一目瞭然で好きな感じです。
スリップストリームは思った通り楽しいのですが、ある程度差が開くとなかなか起きなくなるのをなんとかしたいと思うようになりました。
そこで、コースをグルグル回るようにしました。

イラストが入る前段階のボード

脱落アリのゲームということもありサクッと終われるよう短めに、9~10マス X3周としました。もう少し1周のマス数を増やしてもよかった気もしないでもないですが、元は20マスだったのでそれと比べると7~10マスも多いです。

最初はSDJという名前だったw

上のボードにSDJ2055と書かれていますが、当初ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)に被せ、略してSDJとなるタイトルにしようとしていました。今年のSDJは…といった話題が出た時「アレではなくw」みたいなのはどうか?と思ったわけです。が、「それはどうかしてる」ってことに途中で気づいてやめました。説明書の冒頭部分はその名残りですw

個人ボード

テーマをレースにしたことで、チキチキマシン猛レースみたいに各車に個性があった方がいいだろうと、個人ボードを用意し性能差があるようにしました。

最初は「飛行」とかもありましたが、乗った乗られたがないのはつまらないのでやめました。
ラフ画の状態。アートワークは久しぶりに長崎のテストプレイ仲間でもある赤瀬よぐさん
(トリックと怪人以来!)
箱絵。さすがの赤瀬さんクオリティ。
世界観的としてはF-ZeroとかスターウォーズEP1あたりも参考にしてます。
それと「デモリションマン」もw

完成

駒があってボードがあって、とボードゲームらしいゲームになったと思います。

成果

これはゲームマーケット2021秋で販売しました。
自分としては「なかなか良いものができたのでは…!?」と思っていたのですが、結果は思ったようには売れませんでした。。やはり人を蹴落とせ!ダメなやつは脱落だ!といったテイストが今の風潮に合わなかったか・・・?コロナ騒動真っ盛りだったのでその影響もあったか・・・?
商売というのは読めないものですね。。

BOOTHにて販売してますのでもし気になったかたは是非。


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