三題_2

3題話2 騒音・指輪・雑草

  自分のため息すら、うるさいと思った。

 窓から聞こえてくる自動車の音も、下校中の学生たちが笑いあう声も、やかましい。
 腕時計の秒針さえも、騒がしい。
  何度も耳を塞いで、何回も叫んでも、なにかしらの音はいつでもまとわりついてきた。 
 耳栓をして、その上からヘッドフォンで塞いだら、ようやくまともになったが、今度は耳栓とヘッドフォンが手放せなくなった。
 インターネットだけに閉じこもるのは、必然だった。相手のペースに合わせることもなく、自分のペースで、見たいときに使える。見たいものだけを見れた。
 映像は、すぐにうるさくなってやめて、漫画や、小説に落ち着いた。人差し指を動かすだけの日々を、1ヶ月ばかり過ぎた頃、とあるページに辿りついた、挿絵のある小説というべきか、絵に小説を足したのかは、わからないが、色合いと、文字の感覚からして、童話のようだった。
 竜の指輪を偶然にも拾った少女が、植物たちの声を聴き、助けを借りながら届けに行く物語だった。
 道中で、雑草ともいえるような存在にも耳を傾ける少女の姿を見て、素直に感心してしまった。


 何度も、子供っぽいと思いながらも、結局は最後まで読んでしまった。
 何かが急激に変わるわけでも、決心が固まるわけでもないが、面白い物に出会えたことに、静かに喜びを覚えていた。
 とにかく、誰かに伝えたい。ただ、それだけだった。レビューを書き、著者にコメントを送り、ブログを開設して感想を書いていった。
 キーボードをリズムよく打ちこむ音は、不思議と嫌いではなかった。一つ感想を送っては、一つレビューを書いて、何度も、何回も、繰り返した。
 何日過ぎていたのか、わからないが、30回ぐらいブログを更新していた時、妙な肌寒さと、水の匂いが、鼻に届いた。


いつしか、外では雨が降っていた。


 自然と、ヘッドフォンを外して、音を楽しめていた。屋根に当り、それらが流れ落ちていく音、傘に当り、地面に落ち、靴で跳ね上げる音。
 嫌いじゃないかも、と思った。

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