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B&Oシリーズ「限界があるず」

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ゴシック・ロリータファッションに身を包み、2丁の改造アサルトライフルの魔術で人を屠る危険な雇いのテロリスト、ベンテンが活躍する。スタジアムジャケットのウルトラハードボイルド探偵女… もっと読む
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記事一覧

まよなかの無駄遣い

「どの地獄に落ちたいとか、ある?」 彼女はぴたっと足を止め、そのまま2本目の紫メビウスに手をつけるのをやめ、箱に戻す。無造作にジャケットのポケットへしまう。一瞬だけ斜め上に目をそらすと、結局紙巻きを取り出して吸った。くわえタバコでとことこ歩き出す。 強すぎる日差しのせいか、紙巻きはすぐに短くなった。 「……樹になるのは、いや。こんがり焼けたくもないし……だけど、ずーっと、奈落に落ち続けるのも論外……うーん、こまったな——」 ◇1:みちのうえ◇ 私は3本目のいろはすボト

プレイ・フォー・チャイルドフッド/よく遊び、善く祈れ (LoFi-GOTH Fantasy/α.1.0)

発端 +ENTERING+春風に巻き上げられてカラカラと乾いた砂塵が飛べば、ビニール袋は「国道23号線」の標識に引っかかり、知らん顔した能天気な太陽を、きらきらと反射し続ける。 昼下がり。 よくある田舎の、廃車工場、つまりはガラクタの山……スクラップヤード。 三重県境の荒れ地に位置する、瓦礫と油に埋まった畑だ。 俺は正直、ここで死ぬもんだと思ってた。 手錠もされて、抵抗すらできずにだ。 だけど生きてる。 こうしてみっともなく、全裸で座るだけ。鉄臭い地面に膝ついて。 「…

赤白緑そして赤(青色を含む) #パルプアドベントカレンダー2020

◆過激な表現を含む◆ β 夜がやってきた。 今できることといえば、ただ生きることだった。 クリスマスカラーのイルミネーションと鋭い青に桃色の煽情的なネオンサインが、大粒の雨玉と混じって滲む。 土砂降りだ。氷にほど近く冷たい、刺すような雨だ。 そんな日は、多くの路上生活者がそうであるように。 ここにもひとり。青ジャケットの女。無論宿なし、年は十代前後。 彼女もまた、雨宿りには苦労していた。 右目の泣きほくろは、もう自らの涙を吸わずに久しい。 ただ、しくじっただけ

生贄羊と獣の檻(第三回逆噴射小説大賞素振りにして予告)

線を入れる。俺の嫌いな羊葉の肌に。真っ白な首に。ゆっくりと、バターを切る様に丁寧に。 赤くうねる檻の中での死闘は、いよいよ終わりを迎えようとしている。 「………ぅッ」 「眠れ!俺の手の中で!眠れ!この乾いた大地で!」 俺は力を緩めない。 描いた線が頸動脈にぶち当たる、彼女にイノチは残されていない。 そして、痛みを感じるのは俺じゃない。 ぶかぶかのスタジャンに染み込む奴の血。彼女の肉の牢獄から、全部引き摺り出してやる。 彼女が逃げて、俺がこうして妖術師。何の因果。

水玉ハンマー、極楽と:TRACK2『SWEET REVENGE part1』

【承前】 そういうわけで、俺は女を泊めることになった。 普通なら喜ぶべきことだろ。俺だって俗物と欲望にまみれてるからな。 だけど俺が拾った女は、単に家出少女とかホームレスとかとは雰囲気が違ってた。その辺の尻軽とも違う。イチャついて喜ぶ感じじゃない。とことこ付いてくるのに、ジトーっとたくさんの目で見られてるみたいだ。 そいつの名は、伊東緒舟。それしか言わなかった。 「……俺は本道(ほんどう)と呼んでくれ」 「呼んでくれ? あなたも私と同じなの?」 「意味が全くわからんのだけ

水玉ハンマー、極楽と:TRACK 1『OFF NIGHT』

その女は、ぬらぬらと動いている。 スニーカーが地面に接するたびだ。床一面にぶちまけられた血がべちゃべちゃと音を立てて気味が悪い。 「西縁遁寺3番ビルヂング」の1階から3階を占めている「牛見保険センター」。 今日の21時を以て、営業終了となった。これからは、誰も明かりをつけない。永遠に。 女は頭をかく。わしゃわしゃとかき乱す。ぶかぶかなスタジアムジャケットには染みが付いているが、それを気にする素振りはない。 もっと別のもの、何かを探しているようだった。そわそわとオフィステー

ゴスロリ重兵は革命の歌を聞かない:EPISODE FINAL

これまでのあらすじ:安和市革命。日本のとあるディストピアシティをひっくり返す武力抗争だ。そこへ傭兵として、体制側に参戦したゴスロリ重兵こと弁天は、気まぐれで市長が持つと言われる3億円以上のカネの為、レジスタンスに寝返る事となる。そしていよいよ、革命最後の戦いだ。レジスタンスリーダー、キャロルと共に挑む、旧年の終わりと共に始まり、数分のうちに都市機能を完全にマヒせしめた戦いの果てが、今まさに訪れようとしていた……! どれくらいの時間が経ったのだろう。「長い……アー、暇だ」エレ

ゴスロリ重兵は革命の歌を聴かない PART THREE:白黒つけて

向かい合い、待ち構えるは、白い、ゴスロリ。 弁天は鼻で笑う。 「だけどボク、ゴシックの精神ってさ、ボクの服みたいに闇夜と思うんだよね。『光る欲望のシャンデリア』? よく知らないけどとにかくそういう事! それとおっぱいでけぇのも……気に食わねえ」 「………………」 目の前の「白ゴス」はただ夢を集めた生き物ではない。純白であるはずのロリータ服にはあからさまに返り血である飛沫の痕が存在し、そもそも指先は鉤爪だ。手の甲には小型の丸鋸を付けている。顔だって、口元がガスマスクで覆われ

ゴスロリ重兵は革命の歌を聴かない:PART TWO 竹馬の友

【←BACK TO PART ONE】 【総合目次】 痛み止めを飲む。呼吸を整える。((人生とは大聖堂……))これまでで、多くの血が流れてきた。ゴスロリファッションを着こみ、2丁のライフルをぶん回して戦うベンテンでさえ、見てきた血液量が総リットル数で言えば今日に匹敵する日はなかなかないくらいだ。革命の戦い、その大義名分がなければ単なるサイコ・殺人もいい所だ。 だからこそ弁天は理解している。一度流れた血は、もう二度と戻ることが無いと。猪突猛進。城塞めいた役場その13階へとたど

ゴスロリ重兵は革命の歌を聴かない:PART ONE 猩々

(これまでのあらすじ:弁天はゴスロリを着こんだお雇いテロリストである。傘に偽造した二丁のアサルトライフルとその他無数の火器を持ち、いさかいが存在する場所で、きまぐれに、若干報酬にがめつく破壊活動をするのが仕事だ。だから今度の仕事はレジスタンス狩り。錬度の低い相手で、順調に仕事を終えるときだった。『倒すべき都市自治機構の持つ三億円』の居場所をレジスタンスのリーダー、キャロルが知るという。ある目的の為、どうしても弁天は金が必要だった。三億はでかい。はたして大晦日、正月をまたいだ革

【ゴシックロリータ×パルプ】「Bシリーズ:ゴシック・フレンジー・ロリータ・ガンナー!」総合目次

イントロダクション!201X年。名探偵と英雄が飽和した時代、そのすぐあと。ついに日本は数々の大事件と技術の異様な発展によって崩壊した。歪なバランスゲームが、ついに倒壊したのだ。しかし、国が死のうが人が死のうが、一度築かれた都市システムは回り続けて死ぬことがない。崩壊した国家機構を信頼できない権力者が、自らのシマを作る方へと動き出した。ネオシティが林立する、新たなるの未来の幕開けである。 「でもさ、利用した気になってる、私たちが飼われてるだけかもね。だから言うんだ。私はここに

ゴスロリ重兵と無慈悲なる硝煙

「これで掃除は終わり、かな。お茶の前には帰れそう」 こなごなになったレジスタンス部隊の死体が暗い影を落とすビルの隙間、大通りに至るまで埋め尽くしている。立っているのは無慈悲な黒色のゴスロリを着た重武装の破壊者だった。 「——政治とか僕にはわからないけれど、大層大変なことで」 改造89式自動小銃に当然の如く付けられたグレネードランチャーが景気よくポンポンと榴弾を発射し、マンホールを吹き飛ばし、内側も爆破する。敵対者たちはバラバラになるしかないが、破壊者は念のため覗き込む。 「A