その72

・「殻ノ少女」シリーズを完走した。三部作なのだが、途中でプレイしたカルタグラまで含めると3ヶ月で4本プレイしたことになる。これは私にとっては驚異的な速さで、それほどこの作品が面白かったことを示していると言えるだろう。

・「殻ノ少女」シリーズとは、「殻ノ少女」「虚ノ少女」「天ノ少女」からなる三部作で、全て読みは「からのしょうじょ」である。全ての作品で連続殺人事件が発生しており、探偵である主人公がそれを推理して解決するという形式となっている。
また、本作品群でよく用いられる言葉が「偏執パラノイア」だ。主人公を含め、登場人物の多くがそれぞれの偏執パラノイアを持っており、それが登場人物を非理性的な行動へ導く理由となっている。ネタバレにならない程度の例を挙げると、本作のメインヒロイン(朽木冬子)の母である朽木千鶴は近親愛者であり、実の兄である朽木文弥を溺愛している。このとき、朽木千鶴の偏執パラノイアは朽木文弥となる。

・ネタバレにならない程度に各作品を紹介する。
「殻ノ少女」…昭和31年、探偵である時坂玲人は井の頭公園で出会った女学生、朽木冬子に「本当の自分を見つけ出してほしい」と依頼される。それと同時期に堕胎者を狙った連続殺人事件が発生、また女学生が次々と失踪していき、過去に主人公の婚約者を殺した犯人も浮かび上がる。

「虚ノ少女」…昭和32年、31年に起きた事件の未解決部分を探し続ける時坂だが、女性が相次いで子宮に土人形を入れられて殺される連続殺人事件が発生。それとともに富山の山奥、人形ひとがた集落での因習や事件、新興宗教「天恵の会」の謎も明らかになる。

「天ノ少女」…昭和33年、とある絵画を模した死体が連続で発見される。「殻ノ少女」との関連性が疑われ、時坂は動き出す。その6年後、女児が次々と遺体で発見され、周囲では別の女児が行方不明となっている事件が発生する。過去の事件のしがらみが解消されていき、結末を迎える。

・本作では、ところどころにダンテの『神曲』の引用がある。「殻ノ少女」が三部作であるというところも、『神曲』が地獄編、煉獄編、天国編の三部作であるところに起因するのかもしれない。他にも、全体的にキリスト教的な思想がベースとなっており、堕胎を絶対的にタブー視する思想を持つ人物なども登場する。一方で、近親愛や同性愛など、キリスト教的にタブー視される愛が非常に多く、これは宗教的価値観に対する皮肉なのかもしれない。

・また、本作品群は全てR18だが、いわゆる性シーンは1作品あたりおよそ5〜6ほどと非常に少なく、むしろ死体の血の様子や全身像、子宮などの演出を全て曝け出すためにR18を使っていると言える。

・それぞれの人物が、自らの偏執パラノイアによって非理性的な行動をとる様子は非常に面白い。作品を通しての伏線回収や人物描写もよくできているため。気が向いた方はやってみてはいかがだろうか。

・好きな音楽の話
瑠璃の鳥 (殻ノ少女)
「殻ノ少女」のOPである。イントロに流れる篳篥の音や、サビや2番で主張の強い管楽器の音が音楽を上手い具合に盛り上げている。
「瑠璃の鳥」をアレンジし、最後の歌詞を改変したもので「瑠璃ノ鳥」がある。ピアノ主体になった音楽もだが、歌詞の改変が良い。ネタバレになるから何も言えないが。

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