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【夢うつつ絵本】 たまごの見た夢12p


「わたしはまた夢を見なかった」と、暗い顔の王様が話し始めました。

「そこはただの暗闇。まるで海の底に沈んでいるような夢だった。上も下も分かりやしない」

「それはまだ夢を見てないんだよ」

隣に座る王様が笑って言いました。

「でも確かに寝ていたぞ? わたしは暗闇から目が覚めたんだから」

「そりゃ夢の途中を歩いてたんだ」

反対側に座る王様が言いました。

「なんてつまらない」

そう言って暗い顔の王様は頭を抱えてため息をつきました。

しかし、この王様は暗闇で自分の姿が見えていた事は誰にも言いませんでした。

それはまるで自分が輝いているようだったと思い出しては今でも頭を傾げています。そしてそれは、決して怖い夢ではありませんでした。

つづく

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