初恋について

往々にして、初恋は叶わないと言われている。私も初恋は叶わないものだといいと思う。とても詩的だし、初恋ならば大概の人間が経験しているからアーティストたちに愛され、大衆からは共感されるだろう。
そんな私の初恋は、実りはしたものの、綺麗な花を咲かせることはなかった。

私の初恋は、体験保育で行った3日間で生まれたと考えて間違いない。母から聞いただけだが、Aという同い年の男の子だ。泣き顔の彼の隣で笑う私の写真が一枚ある。傍を離れず、執拗に追いかけ回したせいで彼が怯えて泣いても傍にいたらしい。
しかし、保育園の頃ということは3歳程度なので、私に明確な記憶がある訳ではない。

私個人の記憶として、初恋に該当するのは隣の白い家に住んでいた同い年のBだった。Bは三兄弟の末っ子で、私とは同い年になる。B家には私たちと4歳くらい歳が離れた次男、中学生の長男がいた。
当時のB家にはなんでもあった。長男のために買い揃えられたプレステとかゲームボーイ、漫画雑誌を下の弟たちはそれはもう得意顔で遊び倒していた。平成一桁生まれの男子が憧れるものが殆ど揃っていて、クラスではちょっとしたヒーロー扱いである。そのB家で、私も三兄弟に囲まれてゲームをしたのだが、トロかったのでコマンドゲーしか出来なかった。でも、見ているだけでとても楽しかった。
好きになるきっかけというものを意識したことはなかった。ただ、小学3年生の頃にB家が長野県へと引っ越すことになる。小学校でお別れ会が開かれ、最後に1人一枚書いた手紙を渡した。当時仲の良かった女の子に唆されて、そこに、私はBが好きだと書いた。生まれて初めてのラブレターとなったが、返事は、今も貰っていない。
個人的な初恋は実っていないわけだが、まあ、それはとても綺麗な思い出としてしまっている。

そんな私の本当の意味での初恋が、斜陽のものになってしまったのは、全てAのせいだと泣いてしまいたいセンチメンタルな夜もあった。

Bが越した後の白い家には、厄介なことにA家族が越してきたのである。
勿論、当人同士は保育園でたった3日間遊んだ相手など覚えていない。お互いに母親から小さい頃の話を聞かされてはいたが(たぶん私が執拗に追いかけまわしていたことを、Aも聞いてるだろう)、それ以上にフィーリングが合う相手であるという確信があった。3歳だろうが10歳だろうが、そういうものは本能で理解するのだと悟ったのはその時だった。
それほど自然に私はAに馴染み、Aもまた私をすんなりと受け入れた。


長くなりそうなので分割。

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