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お通夜の意義

お通夜はなぜ大切なのか。

一番は儀式を通じて身近な方の死を受け止めていく時間が私たちには必要だからだと思う。

普段と変わらない生活を過ごしているだけでは受け止めることが出来ないのが、親しい方との別れなのではないでしょうか。

別れは寂しいことだけど、いなくなってしまったということを受け止める場。仏教に出遇うということも大切だけれども、お通夜という短い時間ではこれが精一杯だとも思う。

もちろん仏教に出遇い、そして別れという悲しさから救われるということも多くの方が経験していることです。仏教を通して死を受け止めていく。

亡くなった方の前で、自分もいつか亡くなるということを感じながら仏教を聞くことで、今生きているということを大切にしていく場でもあるけれど。

お通夜で急に自分の気持ちを切り替えるのは難しい。気持ちに区切りもつけられないけれども、仏教がいつもより、遺族のそばにあるという時間がお通夜という時間です。

気持ちに区切りなんてつけられないけれど、でもいつか前に歩んでいくためには、儀式をして故人を弔ったという気持ちは必要です。

身近な方が亡くなったときというのは、当たり前のことだけど自分の中により強く、自分もいつかは亡くなるという気持ちが残る場所です。

一度強く思ったら、どこかで思い出すかもしれません。

死というのは「不幸があった」と言われるように、一般的には私たちは出来れば避けたいものです。しかし、そうでなく私たちにも必ず訪れるものとしてどこかのタイミングで受け入れなければいけない。

出来ればその時が訪れるより前に。

文章に起こしたのでこうやって言えますが、お通夜の場でしっかりと伝えられているかなぁと先日改めて感じさせていただきました。

月刊住職の令和5年正月号を読みました。
記事の一つに、お通夜を大切にしている一人の浄土宗の住職のお話が載っていました。

もちろんお通夜はお坊さん皆が大切にしていることではあるけれども、仏事の大切さを伝えられているかということがあります。

その住職は、
「昔の人は魂が身体から抜け出た時に死ぬと考えていて、魂が動くのは陽が落ちてから。魂が抜け出たご遺体に異変がないように夜を徹して家族がご遺体を守るのがお通夜の習俗です。
死者を送る儀式とは、魂をちゃんとあの世に送りだせるよう皆で力を合わせること。ここを押さえておかないと、仏教の何たるかが伝わらず、お骨を荼毘にふすだけに終わるからです。」

月間住職2023年1月号

私の不勉強もありますが、浄土真宗では魂という概念をもっておらず、ここまで具体的にお通夜の意義を説明出来ない。宗派により考えが違うので、それが良いとか悪いとかではないですが、具体的な意味を喪主さんが感じたほうがお通夜の意味がより深まるのではないかと感じました。

また、炉前のお勤めでも必ずお話をしているとのことで。(私は炉前ではしていない・・)

「十分間で拝んでなんて言われますが、もう少し早く行かせてくれとお願いします。お戒名はこんな意味合いで付けましたと伝え、知恩院に伝わる国宝の阿弥陀二十五菩薩来迎図を模写したものをコピーして必ず持参し、二十五人の菩薩を従え阿弥陀様が南無阿弥陀仏の声がするところに必ず迎えに行きますよ。だから南無阿弥陀仏を一緒に称えてねと。たとえ十分しかなくても、浄土教の教えの一つでも持って帰ってほしいのです。」

月間住職2023年1月号

南無阿弥陀仏を称える理由が明確だなと思います。

亡くなられた方はお浄土から見守って下さるという話を私もしますが、この住職が説明する浄土へのお迎えは、喪主さんはじめ、よりイメージがしやすいのではないでしょうか。

浄土真宗では死後の世界を明確に出来にすることが出来ないと思っています。死んだことがないから分からないというスタンスでいます。

実際に分からないからそれでいいのだという思いと、宗教者はそこをはっきりと示す役割があるのではないかとも思います。(浄土から見守っているでしょうと伝えていますので)

逆に浄土でと、分からないことを濁してしまっているのではないかと。お通夜という悲しい場で、分かりませんと言ってほしくないと思います。

浄土から見守っておられますよと言ってほしい場でしょう。分からないけれど、浄土から見守っておられるという言葉に頼っている。僕がこの住職の具体的な考えを羨ましく思う理由だと思います。

故人や残された遺族にとっては、和やかにお別れを迎えることができることが大切です。お話が本当の話であるか、そう伝わってきたという話か、明らかに伝説だという話もあるでしょう。

お通夜、その時に重要なお話とはどんなお話なのか。

遺族の気持ちに寄り添っていくことが一番大切で、そこには一旦、宗派というものは関係ないのかもしれない、とも思った。


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