収集

私が滞在していたアパートのエントランスには、大きな本棚があった。

戯曲や、演劇のパンフレットのいくつかは表紙を向けて並べられていた。

アパートを出るときも、戻るときも、いつもこの本たちに見つめられていた。

アパートを去るとき、私はアパートのオーナーにいい本棚ですねと言ってみた。彼女は、夫のものだと言った。彼女の夫は今いるのかわからなかった。

グレーに近い水色のセーターを着た彼女は、自分の部屋に戻っていった。変わらず本棚をとっておいてほしいと思いながら、私はアパートを後にした。

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