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 平凡な日常から抜け出すだけで、旅とはいいものである。別に温泉が無くてもかまわない。立派な料理がなくてはならないわけではない。
 なにがしらお目当てをつけて、目指すところへ旅をする。名勝旧跡神社仏閣、である必要もない。
 たとえば昔愛した街へふらりと旅をして、懐かしさに触れるのもいいだろう。昔通った小学校。遊んだ公園。買い物をした駄菓子屋。今はもう変わってしまっていて、存在さえなくなってしまったものもあるだろう。
 当時住んでいた頃は、それが平凡な毎日だったのが、過ぎてしまえば、非凡な思い出に変わる。
 商店街を抜け、昔住んでいた家を見つける。まだ残っている。あれから半世紀近く経つのに、家の周りにあった畑はマンションに変わってしまったというのに、僕が住んでいた家はまだ残っていた。
 こんなに古い家なのに、当然ほうぼう改修はされているようだが、住んでいる人がいる。家賃ってどのくらいなんだろう。安いんだろうなあ。こんなに古くて駐車場さえない家なんだもの。
 僕が住んでいた頃は、ポットン便所に五右衛門風呂だった。小さな庭にはドクダミが植えてあり、とても臭かった印象がある。
 当然中に入ることなどできないので、それらがどう変わったかはわからない。多分、きれいな洋式の水洗のトイレに変わり、風呂もユニットバスかなんかになっているだろう。そうでないと今の人は住まない。
 小学校に行って見る。校門の入り口に作っていた庭のようなものが取り壊されて駐車場になっていた。当然ながら木造校舎は消えてなくなっていた。あの節穴だらけの校舎の床や壁が妙に懐かしい。   
 
 今は便利な世の中、家の中にいて旅ができる。
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