見出し画像

お伽草子(ショートショート)

  

桃太郎

 今は昔、翁と媼ありけり。翁、山へ柴刈に、媼、川にて洗濯をするなり。媼、川上より大きな桃が鈍武羅故鈍武羅故と流れ来る様を見、拾わんと欲す。あまりに大きい故、持ち帰りに難儀を感じ、翁に分けづ独りで食うなり。
 其の夜、媼発情したりて、翁と契れり。其れにて誕生したるは桃太郎と名づけられる也。
 桃太郎、粗野にして頑強、猿、雉、犬の子分を連れて悪しき事ばかりするなん。
 翁、厄介払いと思いて桃太郎に鬼退治に行くよう勧めるなり。桃太郎承知し、媼が作った黍団子を犬、雉、猿に渡し、鬼退治へ行くことを盟約せしめん。「命懸けの仕事に団子1つかい」と猿陰口叩くも空し。
 一方鬼ヶ島にて鬼達。野卑にて粗暴なる桃太郎が襲撃にくると知り、防御をせしめん。其れまで平和に暮らしたるに何の因縁があってか、侵略せしめんと欲すは如何ばかりか理不尽にて候なり。さめざめ泣く鬼あり。
 鬼太郎(ちがった)桃太郎、三匹の家来を率い鬼ヶ島に至る。雉が空から門の閂を外し、一気に雪崩れ込むなり。戦おうとする鬼無く、皆早々に降参致すなり。桃太郎、侵略の限りを尽くして凱旋仕る。
 桃太郎、一気に村一番の大金持ちになりける。翁と媼も贅沢の限りをするなり。鬼共は皆従順の姿勢を取るため、角を全部折ってしまいたり。
 目出度し目出度しにて御座候。
 

浦島太郎

 こどもたちが、おおきなかめをうみべでいじめていました。それをみたりょうしが「これこれぼうずども、かめをいじめてはならぬ。ここに30円あるから、これをやろう。そのかわりかめをわれにわたしたまえ」といいました」こどもたちはせっかくみつけたかめを30円ぽっちでうるのをしょうちせずにねをつりあげようとしました。りょうしはいかり、こどもたちにラリアットやスープレックス、バックドロップ、などプロレスわざをほどこし、こどもたちはおそれてにげていきました。りょうしはやさしく「もうガキにつかまるなよ」といってかめをにがしてやりました。すうじつご、かめがこのまえのおれいにやってきました。りゅうぐうじょうへごしょうたいしますといってきかないので、しかたなくかめのせなかにのってりゅうぐうじょうへむかいました。かいちゅうでいきができないりょうしはもうすこしでしんでしまうところでしたが、すんでのところで、りゅうぐうじょうへつくことができました。そこではおとひめさまがおでむかえして、たいやひらめのまいおどり。きゃばじょうもびっくりのかんたいでした。すっかりここがきにいったりょうしでしたが、そろそろいえにかえらなければなりません。そのことをいうと、おとひめさまはたまてばこをわたし「けっしてなかをあけてはな、、、」までいったところでりょうしはたまてばこをあけてしまったので、りゅうぐうじょうはみなパニックになりました。りょうしのそのごのことはだれにもわかりません。

一寸法師

 子供のいない夫婦が不妊治療のおかげで、やっと子宝に恵まれたが、身長がわずか3㎝と異常な未熟児であった。にもかかわらず、心身ともに健康であり、産科では奇跡の赤ん坊とばかりにTVニュースにもなった。研究材料に是非この赤ん坊にアメリカまでつれていきたいとの申し出があり、夫婦ともに渡米することになった。それから20年。あいかわらず身長は伸びずに3cmのままであった。アメリカでは1インチボーイと呼ばれ人気者となった。ところが誘拐犯がこの子をさらっていってしまった。救出するべく、FBIが躍動する。発見。銃撃戦。1インチボーイは犯人の口の中に入り込み、針で刺し始めた。それが奏功して、犯人は逃したが、1インチボーイは救出された。犯人の遺留物の中に大きなハンマーがあった。これを女FBIの隊員ジェーンが振ると、あら不思議、1インチボーイは6フィートにまでなった。この不思議なハンマーについては科学者のもとで研究が進んでおり、結果はやがて発表されるものと思うが、6フィートになった20歳の子供はもう大人であり、アメリカの重要機関で働くことになった。もちろん女FBIの隊員ジェーンとはいい仲になって。
 

一寸法師2


 奇跡が起きた。子供のいない老夫婦のもとに子宝が恵まれた。これも住吉様へ祈ったかいがあったというものじゃ、と話し合っていたが、生まれてみて驚いた。3㎝しか身長がない。「これは・・・」化け物ではないか。夫婦は恐れた。だが神からの贈り物として大事に育てることにした。ところが成人しても子供は一向に身長が伸びない。これからさき、どうしたものかと夫婦で悩んでいると「武士になりに京の都に行きます」という。その身長でか、と翁が問うと「武士に身長は関係ありません」と答えた。それから針を刀に麦わらを鞘にして京に向かった。文献にはお椀の舟に箸の櫂でいったとあるが、果たして箸が櫂の役目をするとも思えず、お椀もくるくる回るだけで前には進みがたいと思われる。おそらく歩いて京を目指したかと推察する。
 京では、運よく大きなお屋敷に家来として仕えた。そしてそこの娘に恋をする。ある日、町をその娘と歩いていたら、鬼が現れ、娘をさらおうとするではないか。わずか一寸の武士は鬼に立ち向かったが、あっさり飲み込まれてしまう。だが彼は鬼の腹の中から針の刀で刺しまくった。おそらくは日本でフェンシングが行われた最初の案件であろう。鬼はたまらず、一寸法師を吐き出し、打ち出の小槌を落として逃げていった。
 奇跡が起きる。その小槌を娘が振ると、一寸法師はみるみる大きくなり、6尺ほどにもなった。6尺になった若者はやがて中納言にまで出世して、翁媼も呼び寄せ、娘と結婚し、幸せにくらした。

小太りじいさん

 腹の出た小太りなじいさんが山へ柴刈に行った帰りに、夕立にあったのじゃ。じいさんはそこで木のうろを見つけて雨宿りをしていたが、雨が止んだ頃にはすっかり居眠りをしておった。
 賑やかな音で目が覚めると、樵たちが宴会をしているのであろうか、楽し気な音楽が流れてきた。じいさんはつられて、踊りながら宴会の中へ入っていったのじゃが、宴会は樵たちではなく、鬼達の宴会であったのじゃ。
 じいさんは驚いたが、ここぞという時に磨いておった腹踊りを見せて、鬼達を笑わせた。すっかりじいさんの腹踊りを気に入った鬼達は「また明日も来てくれよ。約束をたがえぬように、お前の大事なものを預かっておく」といって、じいさんの出っ張ったお腹を取ってそのまま去っていったのじゃ。
 お腹の脂肪を取られて、6パックになって帰ってきたじいさんを見て、ポッと頬を赤らめる婆さん。それを見て驚く隣の小太りなもう一人のじいさん。話を聞いて、明日は自分が行くといって、もう一人のじいさんが宣言し腹踊りの練習を一晩中しておったのじゃ。
 さて次の日になって、木のうろで待っていると、果たして鬼達はやってきたのじゃ。ここぞとばかりにじいさんは出てきて、腹踊りをはじめた。だが、じいさんの踊りは昨日のとどこが違うのか、鬼達には受けなかった。「もういい。昨日の腹は返してやるから、もう帰っていい」
 そういうと昨日のじいさんの腹を出っ張った腹のまた、その上に腹をくっつけてしまったのじゃ。さあ大変。かつての小錦以上になったじいさんは、大太りじいさんになって、泣いて帰ったとさ。
 その後、そのじいさんがライザップにいったかどうかは定かではない。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?