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夏目漱石 「夢十夜」「第一夜」

 11月7日(日)にオンライン朗読会のイベントに参加します。
題材を何にしようかいろいろ探していましたが,最終的に夏目漱石の「夢十夜」の「第一夜」に決めました。
朗読にちょうどよい長さの短編だったのと、なによりとても幻想的で美しいところに惹かれました。

「第一夜」は「こんな夢を見た」という書き出しから物語がはじまります。
「私」が腕組みをして枕元に座っていると、仰向けに寝た女が静かな声で「もう死にます」といいます。輪郭の柔らかいうりざね顔、真っ白な頬、赤い唇、長い睫、憂いを帯びた真黒の瞳の女で、死ぬようには見えず「本当に死ぬのか」と何度も確認しますが、静かな声で「死ぬんです」と答えます。
そして「死んだら大きな真珠貝で墓を掘って埋めて欲しい。そして墓の側に座って100年待ってくれれば、きっとまた逢いに来るから」と言い残した後、涙を一筋こぼして死んでしまいます。

「私」は言われた通りに、その墓石のそばで、毎日が昇り、日が暮れるのを数えて幾年月を過ごします。とうとう苔むした墓石をながめて、騙されたのではと思っところ、石の下から青い茎が「私」の胸のあたりまでむくむく伸びてきて、真っ白な百合の蕾が花開きます。「私」はその花弁にそっと接吻をして、「100年はもう来ていたんだな」と気が付きます。

第二夜以降も、幻想的だったり、ちょっと怖くて、ひやっとする不思議な物語が続きます。夏目漱石というと、「坊ちゃん」や「吾輩は猫である」等「明治の文豪」のイメージが強いですが、昔話的な幻想的な文章も残しているのですね。
たった一人で100年待った「私」の前に女が百合の花となって逢いにきて、その花弁に接吻するところが、とても綺麗で切ない感じがしました。一目で恋に落ちたのですね。出会ってすぐ別れがきてしまうのに100年待ち続けて違う形で出会うのって、とても浪漫を感じました。
朗読会ではそのあたりをうまく表現できるといいなと思います。


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