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パン屋にある冬のオアシス

「10年に1度の寒波」
「交通機関の影響に警戒」
「水道管の凍結に注意を」

凍える日々が続くと、パン屋にある冬のオアシスが恋しくなります。

パン屋で働いていた頃は、1年中半袖だった私。

パワハラとか決まりとかではなく、自主的です。
冬でも汗をかいていました。

全スタッフが着込む中で私だけ半袖だったのは、パンを焼くポジション「カマ(オーブンのこと)」を担当していたためです。

パンを焼く温度は200℃以上。フランスパンなどハード系なら250℃以上に設定することもあります。
メインで使用する3段分の大きなカマと、小さなオーブンの前に立ち続け、湯気の立つ焼き立てパンを次々取り出す私は、常に熱とともに働いていました。

スタッフはカマ前が温かいと知っていますので、凍えるような寒さの日は、隙を見ては暖を取りに来ました。
「今いい?」と作業が落ち着いているか聞いた上で、入れ代わり立ち代わりカマ前に集まってきます。

まさに冬のオアシス!

カマが出す熱を全身で吸収しようとする姿は、まさに朝一番に日光浴をするワオキツネザルのイメージです。

1日の焼成が終わって電源を落とせば、室温が下がったとすぐに肌で感じられるほど、カマの熱は重要な暖房の1つでした。
その代わり、夏場は灼熱地獄と化すので誰も近づきません。
冬にだけ現れるオアシスです。

パン屋勤務を離れて最初の冬を迎えた今季、冬場のカマ前に戻りたい気持ちが強くなってきました。
(もちろん理由はそれだけではないですが…)

早朝に布団から脱出し、真っ暗闇の中「寒い」とつぶやく息さえ白い出勤時間も、今なら耐えられそうです。
冬のオアシスが待っていますから。

やはり私は、パン屋で働くのが好きみたいです。

ではまた。

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