ある生協の静かで過激なブランディングについて

 農産物の輸入の仕事をしています荒川防火水槽研究会と申します。名前は趣味のブログからそのまま使っています。今回は、「生協のブランディング」について書いてみます。

 山口義宏さんの"デジタル時代の基礎知識「ブランディング」"という本を最近読み、この戦略を身近で忠実に実現しているのは生活クラブさんという生協だと感じました。生活クラブは首都圏を中心に40万人の組合員を有し、高い品質基準で有名です。

 では生活クラブのどういった点がそう感じさせるのでしょうか。

 まず同組合のブランドターゲットは「品質に高いこだわりを持つ消費者」です。子供をもつ比較的収入の高い家庭の母、というイメージ。一方セールスターゲットは「有機並みの製品を買いたい一般消費者」だと思います。有機の製品を扱う会社にはオイシックスなどがありますが、生活クラブの品質基準は有機顔負けであり、"生産者の顔の見える感"は有機製品を凌駕しているように思われ、生協が有機市場を侵食していると考えられます。

 生活クラブの知覚価値としてのコアバリューは「消費者による組合だから安全安心を実現できる」ことですが、具体的なベネフィットには「高品質な製品を宅配で常に買えること」、エビデンスとしては「消費者代表が生産者を定期的にチェックすること」が挙げられます。驚くべきことに、組合員代表が自らチェックに行きます。

 このように、組合員=ブランドターゲットが自ら生協の運営にまで関与するので、接触頻度は当然高くなります。「消費者自らがやらなければ大企業から不安全な製品を買わざるを得なくなる」という"リスク喚起"のインサイトは、組合員が運営に携わることで当然に生協のコアバリューと一致・連動することになります。

 生協はサブスクリプションモデルなので組合員への加入が重要なKPIですが、知名度の低さがこれまで課題でした。しかし昨年テレビ番組の「カンブリア宮殿」に取り上げられたことで知名度がアップし、加入増にうまくつなげているといいます。これまでも口コミが重要な組合員加入の入り口であったと考えられますが、デジタル時代は口コミにとっては追い風です。ただし生活クラブには識別度の高いマークがありませんので、この点は埼玉が基盤のコープデリや、福岡が基盤のグリーンコープの方が上手です。

 生活クラブの設立は1965年。歴史的な一貫性も驚異的であり、一周回ってブランドが見直されるべき組織であるとおもいました。

 #ブランディング 

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 #山口義宏


 

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