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ウン十年ぶりに高校数学をやってみた

うちの子高3がまだ中学の時、学校の数学について行けなくなりました。帰国子女なので小学校の算数があやふやだった影響もあったみたい。

生活全般に自信を失って見えたうちの子を見て、一肌脱ごうか!と、高校1年になった子供の数学の家庭教師をすることになりました。

ただ私自身は文系なので、数Ⅱまでしかやっていません。一方うちの子、プログラミングは得意で理系の道を行きたい。理系だといつか数Ⅲもやるのか…という不安を抱えながらの船出でした。でもウン十年振りに数学を学び直すなんて滅多にない貴重な経験。その幸せな日々と、また数学教育について考えたことを書きます。


1 数学とプログラミングとの関係
 高校でSTEMコースに行きたいと三者面談で言ったら、先生は「この成績で?」と目が点になったらしい。確かにうちの子、中学の数学の成績は1でしたので。でも教えてみると、考え方がロジカルだし、何とかなりそうだ、とすぐに感じました。

家庭教師を始めて驚いたのが、うちの子が数学における等号や「代入」の意味を取り違えていたことでした。プログラミングにおけるイコールや代入と同じだと考えていたようで、道理で混乱するわけだ(ただし三角関数はプログラミングと共通している部分が多いので、ほぼ感覚的に理解できるらしい)。ですので、まずは数学における等号や代入の意味を説明するところから始めます。

また、確率に「モンティホール問題」というのがあります。これをやっていた時、子供がにわかにプログラムを書き始め、ドア開けを無限に試行するプログラムで答えを出しました(正解でした)。そんなやり方ある?と思いましたが、「プログラミングで分かる答えをなぜ数学で出す必要があるのか?」とうちの子。面白い発想の違いです。ここからが、数学を学ぶ意味みたいのを説明する私の「にわか家庭教師」の始まりでした。


2 今数学に何が求められているのか

では、こうしたプログラミングの時代に数学には何が求められているのでしょうか。過去のように、暗記や、時間内に正確に計算ができること、パターン認識ではなくなっている気がします。

代わりに思い浮かぶのは、切り口の設定、試行錯誤、プレゼン(説明・証明)、他の学問領域などさまざまな知見を使った課題解決などか「これから求められる能力」と考えられます。

これらを、数学で本来学ぶことが求められる「論理的思考力」などと組み合わせて学ぶ、というのが理想形ですが、それにはどんな学び方が良いのだろう、と自問します。


3 チャート先の抱える課題
教材は、ひとまずうちの子が学校で使っている「青のチャート式」です。Amazonで買って何十年振りに手にしたチャート式。懐かしい感覚と、むかし問題が解けなかった時の気持ち悪さが同時に沸いて来ます。

このチャート式、上記の「今求められていること」と微妙にズレていることが分かります。
例えば…
・現実世界との関連が薄い。数学の歴史を教えない。抽象史上主義。具体と抽象を行き来できるのが大事だと思うのだけど、「この抽象論についてこい」みたいな説明や設問が多い…大学に行ったら具体と接続するのかな?
・マニアックな公式を覚える系の内容がまだまだ多い。
・最後にこれが一番課題だと思うのが、説明や設問の日本語があまり論理的でなく「わかってるよね」的な忖度を強いる国語力の不足。

今の高校生に求められる能力と、チャート式の古さとのギャップに悩まされる日々でした。

4 高校や大学の試験の抱える課題
さらに、ひとまずの目標として大学の試験をクリアする必要があります。こちらにも、チャート式と同じような時代とのギャップを感じる課題があります。
・試験では電卓やエクセル使えません。計算が煩雑になる確率統計を暗算でやるのはかなり苦痛な「作業」です。確率が試験に出にくいのは電卓やエクセルが使えないからか。
・穴埋め問題の課題。穴埋め問題って、出題者のロジックを忖度する力を測っていると言えますが、それは今求められる能力なのだろうか、別解も含めて、目的に至るアプローチが大事なのでは。穴埋めは、他人が描いたコードを読み取るのと同じ苦痛だ、とうちの子は言っていました。分かる気がする。

5 私のアプローチ
成績アップだけが目的の教え方はしないと決めました。始めた当初だけは、最初はクイックサクセスを得るために手っ取り早く点数が上がるテクも使いましたが、徐々に、本来の数学力が付きそうなやり方に移行しました。具体的には以下のようなやり方です。
・チャート式の国語力不足を補うように説明する
・解法の暗記はしない。解答に至るロジックをたどる。最近はネットで解法の色々な解説を見ることができるので、良い時代です
・単なる暗記だけの問題を見抜き、そういう問題は時には大胆に無視する
・公式の証明はできるだけ見る(何なら、公式ができた歴史も見る)


やり方が正解だったのかどうかは分かりません。でも2年ほど経って、数学がうちの子にとって「どちらかといえば得意な科目」になったのは良かった。あとは大学に受かってくれれば。
ただそれよりも、この年でチャート式をやる経験は貴重でしたし(この年で数学Ⅲを始める人はレア)、子供との濃い時間が過ごせたことが何より代えがたかったです。世の親御さんも是非!

#数学
#チャート式
#家庭教師
#プログラミング

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