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蝙蝠は小指ほどの雲をつかんだ


こうもありふれている

目の前は感触だけはあって、そう 光とは言えなかった
 臆にいると
 やわらかな 粘土のよう
 きいろい
 灰になったぬくもり

腰掛けた音の出ない電報を受け取ると
動悸がまたたいて
音階のない風呂桶の壁面に鹿の鱗がひっついて止まっている
骨をつたい
拾う気力が露先に垂れていく

外は土砂降り、
魚が小脇に細身の鳥を抱える
エントランスホールの椿の花首から

空中庭園の
芍薬に浮かぶ

夕方になると
花爆ぜる
ブランコのあわいへと

心底を寂れさせた

腐りゆく無言の空想を祖先と共有して
思いつきなんて花瓶にしてしまえ
はじめて遠のくからきこえてきた
断絶の雲を越境し
どこからか来た雨に打たれ
どこに向かうのかまだわからない雨となる


・循環する越境とその断絶する雲・


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おひさです。一ヶ月ぶり6月の投稿です。
今月は個人的に慌ただしく、上旬に詩を書いたっきりでした。また新しいことを始めるべく、数年前までいた世界に再浮上してみようと決断しました。こちらの詩の投稿が続けられるかどうかは分かりませんが、出来るところまでやってみようと思います。そのときは、どうぞよろしくお願いします。

なので本はあまり読めない月でしたが、『太陽諸島』を読了しました。今作は語りのほとんどが海の上です。『地球に散りばめられて』が陸のみ、『星に仄めかされて』が陸と海。そして、『太陽諸島』。こう書いてみると、陸と海に揺蕩いながら、それぞれの語りにおける現実と思考の幅、土地から土地へと進むスピード感に違いがあったように感じます。わたしの中では、『地球に散りばめられて』の印象が強いので、この作品に限った話になりますが、登場する人物たちの移動のみならず、時間的な移動もあり、前後を行ったり来たりと読みながらページを繰っていた気がします。再読して改めて確認したい所存です。

今は、『穴あきエフの初恋祭り』の文庫を見つけたので、それと、ハン・ガンさんの『別れを告げない』を読んでいます。一旦落ち着いたら、読書も詩の執筆も再びやっていきたいです。

ではでは、今月はこの辺で。
またどこかでお会いできますように〜

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