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わたしのえせゆび

陽ざしという 

小窓のひし形はがたついて

たりないひとつの光がひっこ抜かれ 

青紫をした硝子色を

こともなげに通る 


ころがり寝そべっていると

あおむけになった雲はわりと近くに

いるようで

都心の芝生に 仰向けの人々

しみこむような窓に居座る光芒と

密かに出くわしている


涅槃がくしゃみをしているので 

目をとじると皮膚に覆われて

眼球が暗がりにつつまれる


ロッカーにしまっていた

椅子の脚を

慎重に取り出しては

人工木馬の足に

なってしまいそうだ

みつとも 

しまわれないで 

運ばれてもいかないで 寝すごした


建築物の角部屋を味見したくて

ただかじった

むこうみずで完全じゃないように 

おもむろにかじった

そうして 摩天楼へ抵抗する歯形がのこった


|陽ざしという小窓|




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 今月は読みかけの詩集と小説に耽りました。今読むことができてとてもよかった。それらを読了したのち、現在『雪の練習生』を読んでいます。ずっとタイミングを待っていた『優しい地獄』と同時に読み進める予定です。

 多和田さんの作品を自ら読み始めて一年半くらいですが、ずっとその文体に魅了されています。『犬婿入り』から始まり『パウル・ツェランと中国の天使』と今年もたくさんの作品に触れ、去年と同じ時期に同じ本を再読しました。また来月からも多和田さんをはじめとした多くの作家さんの作品に触れたいですね。詩の執筆ももっと頑張っていこうと思います。



また来月の一月に、こちらでお会いできますように。

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