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(8975)いちごオフィスリート投資法人の分析

さて、以下「いちごオフィス」でお届けします!

まずは物件総額、2259億円、LTVは49.85%。
規模的には、イオンリートの半分くらい、と考えると、けっこう小粒なリートに当たります。
投資対象は中小規模のオフィスです。
東京23区だけで68%程度あり、要するに都心部の中小オフィスに「心築」というリフォームを施すことで物件価値を向上させ、賃料や売却額を増やしていく、という戦略です。
スポンサーもいちごで、同じ方針です。
まず、方針が分かりやすく、オフィスは売る時も買い手が多いので、イオンリートのような売り手不在のリスクは低いと思います。
物件価格は一番高額なもので72億円と、小粒で分散されています。
大型ビルを持っているリートが、大型テナント退去で一気にオフィスリスクが噴出したこともありましたが、テナント面でも分散されています。
さらに中小規模のオフィスは、企業としても買いたい企業が多いでしょう。
ただ、物件の築年数は31年とかなり古いのが、リスク要因でしょうか。
平均築年数を見ていると、けっこう綺麗な右肩上がりなので、イメージと違ってそこまで売却しているのではなく、保有しながら運用している様子がうかがえます。
また、築年数の裏返しとして、建物価格が落ちているので、その分土地値比率はかなり高いです。

個人的な考えになりますが、これからの日本の不動産市場としては、やはり人口減少が痛手となって、都心以外は厳しい、という見立てです。
そんな中で、「希少な立地のいい場所を確保して、物件部分はリフォームしてバリューアップする」という戦略が一番の勝ち筋だと見ています。
人口が減っていく中では、新築主義よりも残った不動産をリフォームして使う、というのがメインになってくると思います。
ただし、新築主義はけっこう日本では根強いと考えています。
そこは矛盾しているのではないか、と思われますが・・・
新築主義は個人の住む住宅では残るけど、オフィスではそこまででもないのでは?と考えています。
中古に伴う科学的根拠のない「汚さ」や「穢さ」を感じるのは、日本人独特の感性でしょう。
生活する「自分の家」ではその「汚さ」に耐えられないけど、仕事ならそんなことより合理性や経済性が勝つと見ています。

また、最近はSDG(笑)などが流行っています。
個人的には全く無視した方がSDGになるのではないかと考えていますが、中古不動産を再生して使うのは、環境にとっては一番優しいと思います。
時代の流れと、いちごオフィスの強みが合致しているのではないか、という見立てです。

・リスク面は二つを想定

1・借入金利問題
LTVが微妙に高く、安全な領域とはいえ、もっと安全に投資したい人には物足りないかもしれません。
それよりも、年々借入金利が少しずつ上がっており、23年4月 0.84%→23年10月 0.9%→24年4月 0.92%
と、絶対値で見るとまだまだ低いものの、嫌な感じはぬぐえず・・・
LTVも低くはないので、このまま金利上昇していくと、少し苦しい感は出てきます。
さらに、日本全体の金利が上昇してしまうと、物件売却においても不利になります。
いわゆるキャップレートが上がってしまうので、物件を安くしないと売れなくなります。
オフィス系リートの分配金は、けっこう売却益ありきなところもあります。イオンリートのことを考えると、そこまで悪いことではなく、むしろ出口や利益確定をしながら、分配金として還元したり、次の投資の原資にできたりもしました。
その出口戦略が高金利でフン詰まってしまうのではないか、と言う懸念はあります。

2.超過分配はしないけど、超過不動産投資はするぜ問題
いちごオフィスでは、超過分配金は出さない方針です。
しかし、今期減価償却は9.8億円に対して、資本的支出は10.4億円と超過してしまっています。
ちなみに、来期も超過する予定です・・・


ちょっと積極的すぎない・・・?!



タイミングや経営方針もあるので仕方ないとは思いますが、個人的には「手軽なリフォームでバリューめっちゃアップ!」みたいなことを想像していた節もあるので、やはり世の中は「何かを得るためには何かを失う覚悟が必要」というアルミン投資家になりそうです・・・
「人間性を捧げる」ダークソウル投資家にまではならないようにしたいところですが・・・
まあ、リスクを煽っておいてなんですが、超過するほどリフォームすることは、そこまで多くないので、一時的な現象だと思います。
(過去ではあまりなく、なぜかここで一気に資本的支出を増大させているのが、ちょっと怖く感じますが・・・)
現在の現金類は228億円あるので、この程度の資本的支出の超過で今すぐどうこうなることは全く考えられないですし、いちごオフィスがチャンスを探し出してリフォームしていることなので、リスク要因として注視しつつも、見守っていこうという投資方針です。
また、このリフォームがいちごオフィスの持ち味なので、期待したいところです。
ただ、巡航DPUがけっこう低く、積立金の取り崩しで2100円は維持していく印象。
ここが本当のリスクでしょう。売却益剥落で、大幅減配・・・
上手く売却を続けられるのかどうか、この辺りがリスク要因でしょう。
そのためにも、減価償却費を目いっぱい使ってのリフォームで価値向上を目指す・・・!
25年4月になると、2034円を巡航で見込むので、現状の取得価格ならそこまで悪くない利回りで回ってくれます。
現在の株価はまだ売却益を見込んだ株価とまでは言い切れないと思いますが、上昇していくなら、と仮定すると、売却益を織り込んだ株価にいずれはなっていくでしょう。(株価が安くなる分には、巡航でもそれなりの利回りが出るので、買いに向かえますから)
ここら辺は、いちごオフィスの「心築」をどう評価するかが、評価の分かれ目だと思います。

※追記


第35期(2022年11月~23年4月30日)において、一口当たりFFOが1947円に大幅低下、しかしDPUは4224円と大幅増加、という現象がありました。ちなみに、FFOは通常は2500円~2600円くらいで、来期以降は通常のFFOに戻っています。
なんか瞬間的なFFO下落があったので、何か見落としていないかと思って調べてみました。

大雑把に言うと、「物件売却したから売却益でDPU大幅増加、物件が減ったことによってFFOが大幅低下」ということのようです。
さらに、ちょうどこの時期はオフィス不況が言われていて、けっこう減額改定やらが多かったようで、それもFFOの低下に拍車をかけたことでしょう。
なお、オフィス不況自体はおおよそ底打ちしているような動きです。(もちろん、油断はできない状況ですが・・・)

ちゃんとした原因がはっきりとあるので、そこまで心配する必要はなさそうです。
また、スポンサーからだけでなく、外部からも物件を仕入れており、半分くらいは外部から買っています。
これはスポンサーだけに頼るわけではない、というポジティブな見方もできますが、外部から買ってくるならスポンサーのメリットは何もないとも見れるわけで・・・
なかなか難しい問題だと思います。
また、スポンサーに売る場合もあるようなので、そういう意味でもセイムボート感はありますね。
実際に、いちごオフィスの投資口の35%くらいはいちご関連の会社が保有していますし。

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