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岩波新書から3冊

先日、買取させていただいた膨大な数の岩波新書の中から、値付けをしながらなんとはなしに除けておいた3冊。これといった理由や目的もなく、ただタイトルと帯のコピーを見て面白そうだなと直感で除けただけの3冊が、なんとなく共通していて、大袈裟に言えばこれから自分がどのような視点でものを見て、考えて、選択して、生活していくか、という示唆を与えてくれるのではないのかということに気づき、驚いた。

「東西/南北考」 ーいくつもの日本へー 
自分の周りには実に様々な方角が付き纏っていることを思い出す。小学校や会社の名前、ましては今営んでいるカフェや古本屋にも方角が…。それはともかく、今の社会は長年、「東西の軸」に沿った「ひとつの日本」を目指すものであった。がしかしすでに「ひとつの日本」は破綻している。「南北の軸」に転換してみることで、縄文以来、北海道・東北から奄美・沖縄へと繋がる「いくつもの日本」が見えてくる。視点を変えることで「予定調和(ひとつの日本)」の世の中から「カオス(いくつもの日本)」が見えてくるという著者。コロナやBMLなど世界的なカオスのいま視点を変えて考えるいい機会ではないか。著者は「東北学」で知られる民俗学者の赤坂憲雄さん。

「当事者主権」
“当事者が社会を変える”と帯に書かれたコピーが目に飛び込んできた。当事者主権という言葉も聞き慣れないけど、どういうこと?当事者とはニーズを持った時、人は誰でも当事者となる。ここでは障害者、女性、高齢者、患者、不登校者、引きこもり、精神障害、社会に適応しなかった人たち、レズビアン、ゲイの人たちを指している。しかし悪いのは何かしら「問題を抱えた人たち」でではなく、彼らに「問題を抱えさせてしまった社会の仕組みやルールである。「平均」や「標準」を基準に作られた「現代社会」を、当事者たちが声を上げることにより「最後のひとり」に合わせて制度設計していこうという話を、実際に各地で起き始めた当事者たちの運動を交えてまとめたもの。自分たちも、皆さんも、きっと何かの当事者のはず。障害者運動の中西正司さん、女性運動の上野千鶴子さんの共著。

「自治体・住民の法律入門」
本当にこのようなタイトルの本は今まで全くと言っていいほど視界に入ってこなかったので、この本を除けたのが不思議でならないのだけれど…。今の政府に大きなストレスを感じているひとりだけれど、極々身近な地域問題のストレスもいつか大きく感じる立場(自治体での役員)になるのではという見えない恐怖感から手にとってしまったようだ。実際、今まで頑張って来てくれている自分たちの親世代の高齢化も進み、その時は本当に近づいている気がする。その時がきたらきっと役に立つこともあるのかもしれないということで、目次だけさらっと目を通し、そっと本棚に挿す。著者は法学者・兼子仁さん

◎東西/南北考 ーいくつもの日本へー 赤坂憲雄 2000年
◎当事者主権 中西正司・上野千鶴子 共著 2003年
◎自治体・住民の法律入門 兼子仁 2001年
いずれも 岩波新書

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