「ミッドナイトスワン」

先日、夫と息子と三人で映画「ミッドナイトスワン」を観に行きました。

少し映画の内容にふれるので、未見の人はこれ以降読まないでください。






虐待を受けてきた主人公のイチカ、トランスジェンダーであるナギサ、イチカの友人のりん。それぞれ心に闇を持っているのだけれど、私には「りん」の闇が深すぎたように思えた。

りんの両親はおそらく子供の言葉を「音」としてしか捉えない、つまりまったく真意が通じない、やっかいなタイプ。こういう親を持つと子供はたとえたくさんの物を与えられても、お金をもらっていても、小さい頃から孤独感に苛まれ続けたのだろうな、と。りんの場合、心の拠り所はバレエだった。でもそのバレエの道も閉ざされた。もう少し生きていればいろんな出会いの中で救いがあったかもしれないけど、そんなの考えられないほど限界だったのだと。

ナギサはトランスジェンダーということで、今まで色々偏見受けまくってきたのだろうけど、イチカと出会って徐々に母性が生まれ、「イチカの親」になっていくごとに顔が幸せそうになっていった。

親というのは、「子供が考える大事なこと」を理解し、時には助け、見守っていくことが理想なのだけど、このあたりは親側もかなり一生懸命にならないと難しい。でもこの子供との本気の向き合いは、子にとって、子が巣立っていくためには必要なプロセスで、親の役目なのかもしれないと思う。イチカはナギサのおかげで孤独ではなくなった。きっと本当の親ではなくとも、親というのは「なれる」ものなんだと、私はそう思う。

思えば私の好きな本「赤毛のアン」も、マリラとマシューがアンの親に本気でなろうとし、結果アンとの間には固い絆が出来たというのが柱となっている話だ。(と私は思っている)

つまり私は『ミッドナイトスワン』を観て、「血縁関係上では親でないが、親になろうという話」がけっこう好きだということに気が付かされた。

この映画、なかなか良かったです。

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