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鈴木亘『医療崩壊 真犯人は誰だ』読んだ

ちょっと話題になっていたこの本を読んでみた。年金問題などに深く関わってきた鈴木亘先生の著作であるからなにかしら得るものはあると思われたからだ。

結論からいうと、原田泰先生のよりはだいぶ核心に近い内容だった。

なぜ欧米よりも圧倒的に少ない新型コロナウイルス感染者数と死者数なのに、医療は逼迫ないし崩壊したのかという問いに答えていくものである。

そのような疑問を持つのは当然だが、そもそも本邦とは比較にならないほどの死者を出し、超過死亡がはっきりプラスになっている国々の医療が崩壊していないという前提のほうが私にとっては疑問なのだが、、、

まあ崩壊していないと言い張ったもの勝ちなところはあるだろうし、病は気からとも言うのでいいのだろう。じゃあなぜ本邦は言い張ることができないのかと問うこともできるが、とりあえずそれは置いておこう。

本書では医療崩壊の容疑者をいろいろあげている。中小病院が多すぎるとか、病床数ばかり多くて肝心の医師が少ないとか、病院間の連携がいまいちとか、フリーアクセスと不十分な集約化、政府が病院に強制ができない、などなど。

いくつかは以前からわかっていたことで、新型コロナウイルスの騒ぎでよりはっきりした。おおむね妥当な指摘と思われたが、もちろんいくつかは的外れなのだが、医療業界の中にいなければわからないこともあるのでしかたないと思う。

特に、医師の数が足りていないのに集約化ができないのはかなり問題だし、患者が原則として好きな病院を受診できるフリーアクセスは重大な欠陥である。重症患者を応需できない中小病院が多すぎるのも、ICUの数が足りない状況では大問題になる。そんな病院でも貴重な医師を配置しないといけないからね。

どうしてこんなことになるかというと政府に強制力がないからだ。とにかく政府が強い権力を持つことを嫌ってきた戦後レジームがよろしくない。病院に機能を制限しろとか、そんなに医者雇わなくていいだろとか、統廃合しろとか、政府や自治体は命令できないのだ。

もちろんフリーアクセスもよろしくない。
政府や自治体が、軽い症状で大病院に行かないでくれとお願いはできても、命令はできない。病状が改善しても大病院から退院してくれない患者に対して、なんの強制力も発揮できない。

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