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ポール・バーホーベン『ブラックブック』やっと観た

シャロン・ストーンがアレしてアレする『氷の微笑』以来、ポール・バーホーベンの作品はほとんど観ていた。学生だったときはとにかく時間がたくさんあったのでなんでも片っ端から観ていたのだ。

シュワちゃんの顔がロールケーキみたいになる『トータル・リコール』、やたらと残虐な『ロボコップ』、虫が凶暴すぎて人間が容赦なく死ぬ『スターシップ・トゥルーパーズ』などいずれも傑作SF映画だった。
『インビジブル』や『ショーガール』は人間のしょうもない悪意をこれでもかとネチネチと描いて、後者はラジー賞まで受賞した。

同郷のルトガー・ハウアーを主役に据えた(『ブレード・ランナー』でブレイクする前だ)『危険な愛』を京都の某レンタルビデオ店で発見したときは狂喜したものだ。あまり面白くなくて内容はすっかり忘れてしまったが。

バーホーベンの無駄に残虐だったり、エロかったりする作風は、幼少期にナチス占領下のオランダはハーグで過ごしたためとよくいわれるが、どういうつながりなのかはよくわからない。

大学を卒業してから忙しくなって2006年の『ブラックブック』はまだ観ていなかったのだが、これはまさにナチスかつオランダな作品なのである。

そんなわけで先日なんとなくTSUTAYAでレンタルして観てしまいました。

けっこう面白かった。

残虐性はそれほどでもなかったが、なんの必然性もない脱ぎは健在であった。ナチスの将校との危険な恋愛といえば『愛の嵐』を思い出すが、もちろんあんな芸術性を感じさせるエロでもない。

グロ少なめだったかわりにスカトロのサービスがあった。もちろん嬉しくもなんともないが。

ストーリーは、ナチスが支配するハーグで、家族を殺されてしまった主人公のユダヤ人女性がレジスタンスに身を寄せるが、ことの成り行きでナチスの司令部に潜入することになって、、、というものだ。
映画は主人公がイスラエルのキブツで学校の教師をしているシーンで始まるのだが、全体としてはユダヤ人が自分たちの国家を欲した理由がよくわかる作りになっている。もちろんバーホーベンがそんな高尚な理由で本作を作ったとは思われないが。

バーホーベンのことだから、ナチスもレジスタンスも良い面も悪い面も同じように描く。善人もいれば悪人もいる。ひとりの人間に善と悪が同居していることもある。
それは公平な視点とかそういうことではなくて、単に彼の世界の切り取り方がそうなってるだけのことと思われる。

主演のハリス・ファン・カウテンというオランダ人女優のことは知らなかったのだが、いま調べたら『ワルキューレ』でトム・クルーズの奥さんやってたっぽい。全然おぼえてない。
でも本作での存在感は素晴らしくてもう忘れないと思う。

他のキャストも知らない人ばかりだった。バーホーベンがハリウッドと決別してオランダで製作したものなので私でも知っている人は登場しないようだ。ハリウッドでの経験がよほどいやだったのか、ビジュアルエフェクトもほとんど使用してないそうだ。とはいえ、あのスカトロシーンはリアルなものを使ったりはしてないと思う。だがしかしバーホーベンなら、、、というようなことを考えていると夜も眠れなくなるのであった。

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