大名力『英語の文字・綴り・発音のしくみ』なんとか読み終えた

長いことかけてちんたらちんたら読んでいた大名力先生の力作『英語の文字・綴り・発音のしくみ』をようやっと読了したんである。

内容は多岐にわたっていて、いきなり日本語の50音表の考察から始まる。英語関係ないやんけと面食らうのだが、言語学の重要な一分野である音声学の導入として日本人に親しみ深い50音から始めるというわけである。

50音はいっけん適当に並んでるようにみえるが音声学的には理由があるのだという解説のあとに、音声学の入門編がある。他書で音声学を学んだ人はここはとばしていいが、そうでない人はじっくり読むことをおすすめす。ここをわかってないと、以降のことが理解しにくいからである。

第2章以降が本番である。まず英語の文字の読み方である。Aはなぜエィと読むかみたいなことに始まり、母音字(母音ではない)の読み方、子音字の読み方、母音字や子音字が重なったときの変化などなどの解説である。
英語は綴りと発音の乖離が著しいことで悪名高いが、それなりに規則性はあるようだ。しかし、パターンがけっこう多い上に、例外がめちゃ多い。規則性について知ることじたいはとても楽しいのだが、結局は個別に覚えるしかないよねって結論にしかならない。たくさん単語を覚える前なら、規則性をマスターする意味もあったのかもしれないが。。。

第3章も引き続き綴りと発音である。内容語は最低3字以上という縛りがあるので子音字を重ねたり、黙字をいれたりするやつ。接辞の付け方、縮約形、固有名詞のルール。。。ここでも例外が多いのであった。

第4章はなぜか突然、分綴法である。改行するときに単語を途中で分断するときのルールだ。文字ごとにどこで切れてもいい日本語とはぜんぜんちがうね。

第5章はこれまた唐突に文字の分類である。ただこの章はめちゃ面白かった。表音文字と表意文字みたいなよくある分類だけでなく、文字と記号の違いに始まり、世界の文字を系統分類してある図まで男の子の胸をドキドキさせる要素満載だ。
さらに文字の発達の過程もシニフィアンとシニフィエから解説してくれるのもいい。人間が調音できる音素の種類は有限であるのに対して、表したいものはほぼ無限にあるので、表意文字を無限に生み出すよりも、表音文字を有効活用したほうがいいとかそんな話です。

第6章はアルファベットの歴史。エジプトのヒエログリフ、原シナイ文字、フェニキア文字、ギリシャ文字、エルトリア文字、ローマ字というおおまかな流れは理解できた。
さらにギリシャ語・ラテン語とヨーロッパの諸言語での文字の名称のゆらぎ、ゴシック体などの手書き書体の変遷、印刷技術の発明とキーボードの配列へと話は展開していく。ときどきパワポのプレゼンに関して、フォントのことをやたらうるさく言う人がいらっしゃるが、こうした歴史に敬意を払えということであろう。学会発表の予行演習のときにフォントのことを突っ込まれたら、カロリング朝の文字改革に想いを馳せて怒りを堪えるのである。

第7章は正書法の発達とか発音の変化とか。2章と3章の綴りと発音の関係の歴史的経緯の解説といったところである。

そんなに分厚い本ではないのだが、情報がパツンパツンに詰め込んであるので読みすすめるのに時間がかかってしまった。理解があやふやなところもけっこうある。

しかし英語の綴りのいい加減さに腹が立っている人、フォントのことで文句を言われてムカついている人は、気分転換に読むときっと面白いんじゃないかと思うのであった。

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