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かんぴょう巻き

 近くの寿司屋のランチが食べログで激賞されていたので行ってきた。ランチ寿司1000円。江古田の「鬼朝」。食べてみて、びっくり。なるほどこれは1000円じゃない。お寿司が大きくてネタもそれぞれの魚のおいしい味がする。エビの頭のお味噌汁もついてくる。これもうまい。全然臭くない。旨味だけがエビの頭から取り出されている。そもそも黒板に書かれている握りの値段とランチの値段が釣り合わない。黒板ではイカ一貫400円するのに、握り7貫にかんぴょう巻きも付いている、みそ汁もついている、そんなランチが何故1000円なのか。

 お会計をする別のお客さんが感動を板さんに伝えているのを横で聞いていると少しだけ訳が知れた。板さんがお客さんに話す。

「最近、夜に客が入らなくてよお。今日のネタもランチで出すネタじゃねーんだ」

 なるほど。しかしもちろんそれだけじゃないでしょうよ。一流の腕と一級の食材を金持ち以外にも食わせてやろうという心意気と見た。

 握りもおいしかったが俺が特に感銘を受けたのは、かんぴょう巻き。俺が食べたかんぴょう巻きの中で、最もしょっぱく、最もおいしいかんぴょう巻きだった。

「今じゃ、どこもよお、かんぴょうを自分で煮たりはしないんだ。出来合いを買ってきてよお。でも、料理ってのはよ、自分で作らないとうまかならないんだ。俺はそれは思うね」 結構喋り好きの板さんだった。どうする家康は、最初どうかと思っていたけど、今は面白いそうだ。

 お嫁さんの食べたちらし寿司の椎茸もこれでもかと黒くしょっぱく、おいしかった。日本酒に合うだろうねえ。二万円ほど握りしめて、1回夜に行かなきゃダメなのかね。

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