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私の好きな絵本

下書きで書き溜めていた、絵本の紹介です。うちにある絵本の中から選んだ、私の好きな絵本です。思い付くままに書いていったので、順番にあまり意味はありません。
大人になってからも私が絵本を好きな一番の理由は、ユーモアあふれる絵と言葉を同時にたっぷり味わえるからです。つらい状況でも自分の心を守って生きていくために、ユーモアは欠かせないものだと思っていて、だから私は絵本に、どちらかというと道徳心よりもユーモアを求めます。
それからもう一つ、私は大人になってから絵本を朗読する楽しさを知りました。子どもたちが幼いころは、それをいいことに心ゆくまで朗読したものでした。今はもう背表紙を眺めるだけの日々ですが、いつかそのうち、自由な時間が増えて驚くべき積極性が芽生えた暁には、朗読のボランティアに募集してみてもいいかな・・・とひそかに思っています。


これは宝物の一冊。がまくんとかえるくんシリーズは、大人になってからブックオフで全巻そろえました。『ふたりはともだち』の「おてがみ」というお話に教科書で出会ったとき、そのなんともおしゃれな言葉の運びにほれぼれしたのを覚えています。私にとって「おてがみ」は、人生で初めて、文体というものに惚れたお話です。光の少ない川べりのような色合いの絵も大好き。ふたりの関係は永遠の憬れです。


いつもの見慣れた場所から、ふいに見たこともない不思議な空間へと迷い込む。そんなことが、もしかしたらある日自分にも起こるかもしれない! 実感を持って、そう思わせてくれる絵本です。この絵本に出てくる呪文はもうすっかり覚えていますが、外で唱えたことはありません。やっぱり何となく怖くて。


お茶の時間にとらがやってきて家中のものを食べてしまうという、とんでもないことが起きているのに、困りつつも取り乱すことなく、あくまでも穏やかな様子のお母さんとソフィー。お父さんが帰ってきて「じゃあ夜はレストランにしよう!」となり、にこにこ和やかにレストランで食事をして、今度トラが来たとき困らないようにと、トラ用のごはんを買って帰ります。この絵本全体に漂う、非現実的な朗らかさ、おおらかさに惹かれます。


絵も文章も、たまらなく大好きです。読みながら笑いそうになります。ラルフ、分かるよ。誰でも、あくたれるときがあるよね。そして、あくたれすぎて見放されて、生きる厳しさと人の温かさを知るときがあるよね。


自分も何度か転校を経験しているから、この心細さとうれしさが、すごく分かります。引っ越したばかりのアパートの静かな郵便受けが、ありありと思い浮かびます。最後のページ、お友達ができた喜びでいっぱいで、ふたりの笑い声と、春の野原の匂いが、絵本からあふれ出してくるよう。


どの絵本も朗読するのが楽しいかこさとし作品、一番好きな一冊を選ぶとしたら、今はこれです。歌舞伎役者になったつもりで読みます。最後の「残念無念、不覚の至り、しまったしまった口惜しや」は、日常的に心の中で使っています。


長い髪の話で盛り上がるお友達ふたりに対する、まあちゃんの切り返しが好きです。私だったら、どうせ私の髪だけ短いもん・・・といじけてしまいそうなところを、力強く自分の世界に引き込んで魅了していくまあちゃん、かっこいい。


最初は静かだけれど、だんだんどんどん弾んで高鳴っていく、言葉のリズムが美しい。最後のページ、黄色い花にだけ色がついていて、まさにこれは、雪深い土地における、春のはじまり。私は山陰に住んでいるのですが、日本海側の冬は、本当に空も大地もどんよりくすんで灰色で、そんななか、最初に目に飛び込んできた花の色の鮮やかさで、春のはじまりを知るのです。


絵のタッチと言葉のリズムが楽しくて、音読しているうちにだんだん気持ちが軽くなる絵本。なんだか分からないけれど、カングルワングルさんのもとに、いろいろな生き物が集まってきます。カングルワングルという名前自体が口に心地よくて、何の脈絡もなく口に出して言いたくなります。


風船を手に入れたすーちゃん、ねこちゃんに奪われたくなくて、びっくりするくらい露骨に意地悪な態度を取ります。すーちゃんの気持ちも、ねこちゃんの気持ちも、絵の表情から同じくらい強くく伝わってきます。風船の鮮やかさと捻れた心のコントラスト。最後、ふたりがすべてを手放すシーンの清々しさが好きです。


これを読んだ子どもはみんな、こんなベッドが欲しいと思うことでしょう。ジョージーが探し当てた、「m」で始まる呪文の言葉がいったい何だったのか、絵本の中で明かされていないところがいい。読むたび、「m」で始まる言葉たちに、思いをはせることができます。


『ぼくにげちゃうよ』で知って以来、マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本は大好きで、何冊か買い集めました。物語というより、詩に近いかもしれません。『ちっちゃなほわほわかぞく』のように、小さな冒険に心を震わせながら、大きな愛にほわほわ守られて生きていきたい、子どもにとってこの現実世界が、そうであってほしい・・・と夢想します。


海に住む、大きな大きなうみキリン。海原で水面から顔だけ出しています。海の波は、うみキリンが遠くのうみキリンと話をするときに立つのです。大きな体が魚たちの家にもなっています。遠くからシルエットを見ると、ちょうど船のように見えます。この絵本を読んでから、海で遠くの船を見るたび、「もしかしたらあれは、うみキリンかもしれない」と考える癖がつきました。


最後はおやすみ系の絵本を、3冊まとめて。

長女がとにかく寝付きの悪い幼児だったので、無意識のうちに、眠る系の絵本が増えていました。それぞれに、絵も文章も魅力的で、大好きです。暗いのが怖くて眠れないと言い、おおくまさんにたくさんランプを持ってきてもらう、ちいくまくん。あれがないと眠れないと言って、次々にぬいぐるみやおもちゃを持ってきてもらうリーセン。なかなか寝てくれない子どもにイライラせず、最後まで優しく対応できるおおくまさんやリーセンのママに脱帽です。
『ねむたくなった』は、ちゃんと自分で入眠できる女の子。さまざまな場所で眠る自分の姿を想像しては、やわらかなベッドで眠れる幸せを噛みしめ、たっぷりとした満足感のなかで眠りに落ちていきます。読んでいるだけで、幸せな眠気が訪れます。

以上が私の本棚の、よりすぐりの絵本たちです。