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ゴースト&レディ 観劇レポ!(2024.5.31)

ゴスレ、見てまいりました。興奮冷めやらぬまま、自分勝手な感想を書きます。未鑑賞の方の楽しみを損なうような重大なネタバレは含みません。見に行こうか悩んでいる方の背中を押すことを心がけます。
※作品上の表現に習い「看護婦」等の表記を用いることをご容赦ください。

当日のキャスト。志音様、美南様、ウィキッド以来です。


◆ フローがすごくフローだった!

四季を見に行く前に、藤田先生の原作を読みました。決して薄くない上下巻、でもおもしろくて一晩で読み終えてしまいました(気付いたら朝3時とかになってて焦った)。フローは、普段は品の良いお嬢様、おしとやかでおとなしいけど、ただ「看護」をナメられた時だけは目つきが変わります。可愛らしさと、賢さと、神々しさと、少々のエキセントリックさも読んでて感じました。そんな複雑な人物像をどう演じるのか注目していたわけですが、志音フロー、完璧でした。えぐかった!1幕1場の時点でもう1万数千円のモトをとったと確信しました。表情、目線、仕草……。立ってるだけでなんであんなに「フロー」なんだ......。

物語が進むにつれ、フローは絶望するどころかどんどん生き生きしていきます。これから見にいく人には是非このフローの変化に注目してほしいです。志音様の演技力が光るのなんの。怪物すぎ。バケモノ級。

(※バケモノの子は9月から名古屋劇場で公演です)

◆ 楽しみにしてた「クリミアへ行こう」
多くの人がYoutubeの予告(稽古映像)で期待を膨らませていたシーンだと思います。映像だとみんなで力強く歌うところが切り取られてますが、フローの独唱から始まりました。戦場で命を救いたいという彼女の決意が、一人、また一人と仲間を巻き込んで、ナイチンゲール看護団が結成されていき、Youtubeのあの部分につながっていきます。グッときます。サントラ出てくれ。


◆ マジックショー演出
ベッドで患者が亡くなるシーン、幽体離脱して光の中へ旅立っていく演出。ここはもうマジックショー。驚きと感動が同時にきます。「ハリーポッターと呪いの子」のイリュージョン担当クリス・フィッシャーと、Mr.マリックの秘蔵っ子ことマジシャンのRYOTA氏がスタッフに入っているそうで。そりゃ見事なわけです。
欲を言えばあれを見たかった、瞬間移動のやつ!しもてにハケたはずの演者が次の瞬間にかみてから出てくるやつ。ハリポタでも多用されてましたし、NYのバックトゥザフューチャーでもやってました(BTTFもイリュージョン担当はクリス氏)。来年の四季版BTTFで見れることを期待。

あと、マジックとまでは言わないのでしょうが、初っ端のグレイ登場シーン。観客全員が「やられた!」って思うミスディレクション。マジシャンが使う基本テクニック。お見事でした。(2回目の鑑賞は絶対にみてやる)笑。


◆グレイのメタ表現がいい
汐留「アラジン」のジーニー同様といいますか、グレイには観客が見えていて、私たちに話しかけてきます。”見られていること”を意識した台詞がでてきます。これがくすぐりになっていることも多く、緊張のなかに絶妙な緩和を与えてくれます。漫画っぽくて原作へのリスペクトも感じました。
”見える”という点では、フローの他にも何人か、霊感(?)があってゴーストが見えている人がいます。ほとんどの登場人物たちは、グレイが目の前を通過すると、冷気を感じて寒がる様子こそ見せますが、目は合わせません(見えてない)。でも一部の見えている人は、グレイの声に反応したり、怯えたりします。これも面白いので是非注目してほしいです。


◆なんかディズニーっぽい
1幕が終わって休憩に入るや否や、後列に座していた女の子グループが喋り出しました。「なんかめっちゃディズニーじゃない?」。分かります。私も思いました。まあ無理もないことで。演出はノートルダムのスコット・シュワルツだし、志音さんはアリエルでありナラでありエルサであり。グレイの18世紀ぽい服装はカリブの海賊を彷彿とさせます。

あと歌。すごくディズニーを感じました。作曲の富貴先生は、ソアリンの音楽が好きすぎて、聴くためだけにカリフォルニアディズニーランドまで行ってしまったことがあるらしい。だからかどうかは分かりませんが「♪ 家族が待つうーちへ きっと帰れる元気で」のあの曲も、ラプンツェルの「自由への扉」みたいだなって思いましたし、クライマックス、フローがパートオブユアワールドを歌ってました(歌ってません)。でも似てた。

ダンスでは、女王陛下御一行のコミカルなステップが、もうひとつ上の階で上演中の「アナ雪」のウェーゼルトン公爵のステップと重なりました。これらはどれもディズニー好きな人には喜ばしく、そうでない人はそもそも気付かないので、個々の観劇を邪魔するものにならないはず。良いと思います。


◆原作のほうが良かったところ

両親との対立シーン。看護婦は大酒呑みで破廉恥、下級民の仕事だと決めつけて、フローが看護の道へ進むことを許さないパパママ。原作では、死ぬ覚悟を決めたフローが、どうせ死ぬなら心の中を全部言ってから死のうと、両親に名言(暴言)を連発します。

お二人の感情とわたくしの選んだ道はなんの関係もありません!
わたくしはわたくしの道を 早く突き進むべきでした!

藤田和日郎『ゴースト&レディ』(上)

傷を負ったことのない人だけが 他人の傷跡をあざ笑えるのです!

藤田和日郎『ゴースト&レディ』(上)

フローの揺るぎない決意に胸を打たれる場面ですが、舞台では思いの外あっさりグレイが両親の生霊を切って終わってしまいました。もうちょいやりあってほしかった。まあここは生霊の演出の見せどころなので、そっちに振ったということなのでしょう。確かに迫力があって見事でした。


◆原作より良かったところ

強盗に襲われるシーン。フローの台詞に泣きました。アンフィシアター「美女と野獣」のポット婦人の名ゼリフ「やっと愛することを知ったのね」に似たものを感じました。(フローの台詞は伏せます。ご覧になって確かめてください)。原作とは異なる展開だったので、油断していて、不意を突いた優しい言葉に涙が溢れてしまいました。反則です。こんなに優しい人がいるのでしょうか。現代人のすさんだ心に沁みます。


◆ナイチンゲールのWikipediaくらいは読んでおきたい
私も人並み程度か平均以下の知識しか有していませんでした。クリミア戦争で献身的な活動をした人、近代看護の礎を築いた人。そのくらいしか知らなかったのですが、観劇前に原作漫画を読んだことと、少しばかりナイチンゲールについての情報を仕入れておいたことで、物語をより深く味わうことができたと思います。『看護覚書』まで読んでくる必要は絶対ないですが、まんが人物伝とかで、時代背景等を軽くさらっておくと良いと思います。

当時、医者は直接患者の家へ往診するのが一般的で、看護師はおろか、病院だってまだ整備されていない時代。スクタリの野戦病院は、負傷兵を死ぬまでの間転がしておくくらいの、不衛生で劣悪な場所だったのでしょう。そんな中、一人に1台のベッド、温かい食事、陽光を取り入れる窓、そういうものの必要性を訴えて理解してもらうことは如何に困難であったか…。史実のナイチンゲールは、今でいうナースステーションやナースコールの原型も考案したそうです。患者一人ひとりに寄り添うことだけでなく、働く看護婦さんたちの負荷を最小にする目的もあったはず。まったくもって恐れ入ります。
劇場パンフレットを購入しましたところ、金井一薫氏(ナイチンゲール看護研究所所長)の「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」、そして池上彰氏の「クリミア半島の歴史と現在」という読み物が載ってました。これが結構いいです。是非。

◆カーテンコールはたっぷり
5回か6回、しっかりやってくれました(毎回なのかその時々なのか不明)。
役のまま出てこられる方もいれば、少しだけ素を覗かせてくれているように見える方もいて。キャストとの距離が近く感じられるカテコの醍醐味ですね。
カテコのラスト、ハギグレイと志音フローが照れながらのハグ。大人げもなく、胸がキュンキュンしました。尊い。推すって、こういう気持ちなのか。天国を感じました。こっちが召されるかと思ったわ。

近かった。尊かった。


◆チケットはしばらく争奪戦。でも是非前方でみたい

今回はセンターブロックの6列で見れました。秋劇場のセンターは1列2列がないので、実質、前から4列目です。予約困難が続いてますが、できれば前10列以内には入りたい。近くで演者の表情を見てほしいです。

舞台のカミシモ優劣を感じる場面はさほどないように思いました。素人なのであんまり分からないですけど。でも(「クリミアへ行こう」のような)フローがセンターに来る場面は多かったので、素直にセンターブロックに座ったら良いと思います。


結論、見に行け。
「人生は素晴らしい、生きるに値する」。
劇場を出て、ハマサイトで丸亀製麺をすすりながらそう振り返りました。

春秋劇場で観劇したあとはあそこの丸亀製麺おすすめです。近いし、空いてるし、揺さぶられた感情に温かいお出汁が沁みるし、思い出し泣きをしても鼻をすすってるのかうどんをすすってるのか周りからは分からないので。

”看護職の人に是非見てほしい”という口コミをSNSで多く見かけました。もちろんその通り。でもナイチンゲール曰く「人は誰でも生きていれば一度は身内の看護に責任を持たねばならない場面が訪れます。すなわち人は誰もが看護師であるべきです。」とのこと。だから他の職業の人も、無職の人も、定年した人も学生さんも。すべての人におすすめです。
心のランプに火が灯るような、優しくて温かい作品でした。どうぞ皆さん、是非劇場へ。
(さいごの、いい台詞でしょ?公式動画から真瀬はるかさんのコメントぱくりました)

こちらからは以上です。

分かりやすく評価を図にまとめてみました。
多分使い方は間違ってます。

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