思い出ぽろぽろ

寝ているあいだ、よく夢を見る。

最近は母方の祖父母の家に夏休みに親戚中で集まった頃のことをよく見るようになった。家の前にある収穫間近の桃の畑の匂いを嗅ぎながら、来たよー、と玄関をあける。私と妹はまだ小学生で、父も母も、祖父母も若く、従姉妹と川遊びをする。近くでとれたあけびを初めて見てびっくりする。夜は近くの明神様のお祭りへ行き、帰ってきて花火。庭の池に出店でとった金魚をいれる。私たちを祖父母が目を細めて見ている。それを、大人になった私が夢に見る。あの時感じていた視線の中に、今の私がいたかもしれない。
祖父が亡くなり、祖母も年老いた。遠く離れたところに移住してしまった私はなかなか帰れないけれど、妹の子どもが私たちの追体験をしてくれている。絵を描く時、絵の具が紙に滲む時、ふと蘇る懐かしさがあるが、子どもの頃のこういう記憶なのかもしれない。
夜、縄張りのパトロールを終えた猫の帰りを待って、玄関扉を閉めて一日が終わる。

あの縁側の風景や、蝉の声や花火や、暗闇に浮かぶお祭りの提灯が私の走馬灯になったらいいなと考える。おそらく人生でいちばん何も不安がなく幸せだった時のことを思い出しながら死ぬのは悪くないだろうな。
ただ、久しぶりに見る親戚が歳をとっていくのはなんだか寂しい。
私はあの頃の母よりも、ずっと、歳をとってしまった。

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