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BMCで得た気づきや知見を、いかに「実践」するかにもこだわりたい——株式会社サニーサイドアップ 杉谷勝久さんに聞く、BMCの存在意義と今後の期待

デジタル時代の到来により、マーケティングの施策は多様化しています。それぞれの領域における専門性が高まる一方、専門性が高まったがゆえに領域間の連携が難しくなるなど、全体で見ると「分断」が生じているようにも見えます。

そうした「マーケティングの分断」を解消するために、『BORDERLESS MARKETING COMMUNITY(以下、BMC)』は発足しました。第一線で活躍してきた有識者によるセミナーや、マーケティングに関わる多様なステークホルダーとの議論を通して、「真に全体最適化されたマーケティング」を探求するコミュニティです。

本記事は、BMCの会員へコミュニティに参加した感想を伺う「コラムリレー」の第三弾。今回取材を受けてくださったのは、株式会社サニーサイドアップ パブリックリレーションズ事業本部リーダーの杉谷勝久(すぎや かつひさ)さん。多くのパートナー企業と連携してプロジェクトを形にしていく中で、立場の違いに起因する「分断」を感じることも少なくなかったと言います。
杉谷さんが考えるBMCの可能性とマーケティングの課題、そして理想像とは。BMCに参加した感想と今後期待することをお伺いしました。

杉谷 勝久 様
大学卒業後、システム会社でシステムエンジニアを務める。その後、PR会社2社を経て、2016年12月にサニーサイドアップに入社。PRのみならず、デジタル広告やSNS・インフルエンサー施策、動画制作等を含むマーケティングコミュケーション全般の企画、提案、実行に携わる。これまで、食品、商業施設、医療、インフラなどBToC案件の他、HRテックや経費精算サービスなどBToB案件を含む幅広い業種のコミュニケーションを経験。

「共につくり上げる」ことに喜びを感じてマーケティングの世界へ

——杉谷さんは、サニーサイドアップで複数のプロジェクトを統括するリーダーを務められていますが、PRのお仕事をするようになってどれくらい経つのですか?

新卒から2年ほどWebエンジニアを経験したのち、PRの世界に入りました。PR会社はサニーサイドアップで3社目です。

1社目では主にコーポレート広報として、“守り”の広報をサポートしました。“攻め”の広報に携わりたいと考えて転職した2社目では、ヘルスケア・食品業界を中心に戦略PRの経験を積みました。そして、PRのみならず広くマーケティング・コミュニケーションに携わりたいと考えてサニーサイドアップに転職し、現在に至ります。

サニーサイドアップに入社して6年になりますので、PRやマーケティング・コミュニケーションに携わるようになってから、もう随分長くなりますね。

——エンジニアからPRへ。ユニークな経歴ですが、PRの世界に入ることを決めた理由は何でしょうか?

エンジニアとして、お客さまの企業に出向してプロジェクトを進めることが多かったのですが、そうする中で「職人的に一人で黙々とつくる」ことよりも、「お客さまと議論しながら共につくる」ことに面白さを感じたのがきっかけです。

そこで、もともと関心があったマーケティングの仕事に携わりたいと考えました。大学時代に受けたマーケティング授業では、皆で共に考え、つくり上げていくことの面白さを肌で感じていましたから。

——普段、どのようなお仕事をされているのか教えてください。

サニーサイドアップは「PR会社」ではありますが、戦略プランニング、PR、メディア、デジタル広告、SNS施策、キャンペーン、イベント制作、LP制作、動画制作、インフルエンサーなど業務領域は多岐にわたります。

いわゆる“PR”だけにとらわれず、さまざまな手法を取り入れてクライアントのマーケティング活動をサポートし、課題解決に向けて並走します。

長期にわたってコンサルティングを行うリテナー契約の案件もあれば、プロジェクトベースのスポット契約の案件もあり、自分がメイン担当を務めるケースもあれば、現場メンバーをマネジメントする立場として関わるケースもあります。常時、大小さまざまな案件が10件ほど走っている感じですね。

分断のないワンチームをつくる方法を、コミュニティ参加者と模索したい

——BMCに参加することで、日々の業務の中で感じている「分断」を解消していきたいという思いをお持ちだと伺いました。BMCの活動に期待することを教えてください。

エージェンシーとして日々仕事をしていく中では、クライアントに寄り添うことが欠かせません。寄り添うためには相手を知り、理解する必要がありますが、情報を積極的に開示できない、開示できても極めて限定的である企業も多く、なかなか一筋縄ではいかないのが実情です。

何はできて、何はできないのか。何が理想で、クリアすべき課題は何か――クライアントとの目線合わせや意見のすり合わせをいかに行うかは、プロジェクトの成否やクオリティに直結しますが、難儀することが少なくありません。

また、PR、広告、デジタル・SNS、イベントと打ち手が多岐にわたるがゆえに、協業するパートナー企業も非常に多くなる中、エージェンシーとして取りまとめに苦労することも多々あります。まさに、BMCが解消しようとしている「分断」を感じるシーンに、日々直面しているんです。

企業間、部門間、そして担当者間にも存在するであろう分断を取り払い、クライアントの目的に向かって一丸となって動くチーム。その理想的な姿に少しでも近づくためにアクションを起こしたいと思い、BMCに参加しています。参加者の皆さんと一緒に議論を重ねて、分断解消への道筋を見出したいですね。

——BMCの活動の中で、特に有意義に感じるのはどのようなことでしょうか?

定期イベントのセミナーは、毎回得るものが多いです。

エージェンシーには、多様な関係者の意見をすり合わせ、取りまとめていく役割が求められますが、そのためにはまずさまざまな立場の人の意見に触れ、それぞれの考えを知る必要があると考えています。「広告主」「メディア」「広告会社」「クリエイター」「アカデミア」といったさまざまな立場の人の話が聞けることは、BMCに参加する大きなメリットの一つだと感じています。

特に印象に残っているのは、第2回イベントの慶應義塾大学・星野崇宏先生のお話です。ビジネスサイエンスにはもともと関心があったものの、実務の現場で実践するまでには至っていませんでした。星野先生のお話を通じて業務で活用するイメージが湧いたので、もっと勉強して、クライアントワークにも取り入れていきたいという気持ちが増しました。

第4回イベントで聞いた、クリエイティブ実務において広告主が抱える課題や、エージェンシーおよびクリエイターとの理想的な関係についても、クライアントの思いや事情に対する理解を深めるのに役立ちました。

セミナーの内容を踏まえて行うグループディスカッションも有意義です。「広告主」「メディア」「広告会社」「クリエイター」「アカデミア」というBMC参加者の多様性がディスカッションでも担保されていて、生の声を通じて気づかされることがたくさんあります。

もともとブレストやディスカッションは大好きなので、オンライン/オフラインを問わず、そういう場がより増えていくといいなと考えています。

——これまでBMCの活動に参加する中で得られた、一番大きな学びは何ですか? 学びを踏まえて、すでに実務で実行してみたことはありますか?

クライアントから情報を開示していただくことだけでなく、私たちのほうから情報を開示することを、より一層心がけるようになりました。

第3回のイベントで、「広告主は広告会社やクリエイターといったパートナー企業にもっと情報を開示すべき」という話が出た一方で、「広告会社の業務の進め方や意思決定プロセスが広告主にとっては“ブラックボックス”になっていて、もっとオープンにしていく必要がある」という話も出たんです。

立場の違いで、見える景色が全く違うことに気づかされましたね。クライアントからできるだけ情報を引き出そうと努力することはあっても、私たちのほうから情報を積極的に開示することは、正直あまり意識してこなかったと反省しました。

具体的には、クライアントにこまめに「相談」を入れることを心がけています。「このように考えています」「こういう流れで進めていく想定です」「ここが難しいので、こうしようと思います」「こんなパターンもあり得ます」……といった、外からだと見えづらい思考プロセスや途中工程についても、できるだけ細かく開示するんです。

もちろんこれまでも、結論ありきではなく、考え方と結論をセットで提示するようにしてきましたが、もう一段階ブレイクダウンして情報を伝えることで、クライアントがより納得し、信頼を寄せてくださる気がしています。

クライアント側の目線を知ることが、自分の仕事を見直す良いきっかけになっていますね。

業界全体の共通言語として使える「フレームワーク」を生み出したい

——BMCの活動の中で、もっと強化したいことや、新たに挑戦してみたいことはありますか?

BMCのイベントは、セミナーを聞くだけでなく、その後の質疑応答やグループディスカッションを通じて、分断の解消につながる実践的な「ファインディングス」を得ることを目指しています。そのファインディングスを、汎用性のあるフレームワークに落とし込むところまでいけたら理想的だなと考えているんです。

分断を解消する、プロジェクトの目的達成に向けて全体最適を図る……言うは易しで、実現するのはやはり難しいことだと思います。頭ではわかっていても、いざ実行するとなると何から始めていいかわからない人がほとんどだと思います。

少しでも実現に近づいていくための“補助線”として機能する、マーケティング業界の共通言語として使えるフレームワークがあると、各自がより分断解消に向けて動きやすくなるのではないかと考えています。

インプットするのももちろん大事ですが、アウトプット、つまり知ったこと・学んだことをいかに実践するかが重要で、インプットとアウトプットの間には簡単には越えられない大きな溝がある。溝を飛び越えるための橋渡しができれば、BMCの活動がマーケティング業界を良い方向へと変えていくことに、より寄与できるのではないかと考えています。

また、ケーススタディもやってみたいですね。BMC参加者が抱えている実務課題を題材に、他の業種・職種の方たちと議論して、有効な解決策を導き出せたら最高だなと。

現在進行中のプロジェクトについてどこまでオープンに話せるかという問題はあるのですが、同様の経験を持っていて、かつ利害関係のない相手だからこそ聞けることってあるものですから…。せっかく実務の現場最前線に立っている、さまざまなプロフェッショナルが集まる場なので、ぜひチャレンジしたいです。

——最後に、今後のBMCに期待することについて聞かせてください。

コミュニティ立ち上げから約1年が経ち、5回のイベント開催を経て、徐々に参加者が増えてきていますが、もっと多くの方が参加する場になればいいなと思っています。

広告会社が広告主を理解しなければいけない、広告主がクリエイターを理解しなければいけないという“一方通行”ではなく、あらゆる立場の人がお互いを知り、お互いが少しずつ歩み寄ることが、分断の解消には不可欠です。

ですから、「広告主」「メディア」「広告会社」「クリエイター」「アカデミア」のすべての領域の方に、もっとコミュニティメンバーに加わってほしいなと思っています。

分断は、企業間、部門間、そして担当者一人ひとりの間にもあります。マーケティングだけに限った話ではありませんが、文化や慣習が異なる人たちが集まって動いているのだから、ある意味当たり前のことです。

一番の解決策は、異なる立場の人が同じ場を共有し、お互いの事情や考えを吸収すること。そういう機会自体をもっともっと増やしていくことだと、BMCに参加しながら実感しています。

さいごに

BORDERLESS MARKETING COMMUNITYは、広告主、広告会社、メディア、クリエイター、アナリスト、研究者など、マーケティングに関わるさまざまな専門性を持つプロフェッショナルが集まり、領域横断的な知見の交流を行うコミュニティです。

会員の知見の交流を通じて、真に最適化されたマーケティングを実現するため、定期イベントの開催やFacebookグループでの活動をおこなっております。 

BORDERLESS MARKETING COMMUNITYへのご参加をご希望の方は、以下のフォームより、会員登録ください。
https://borderless-mc.jp/#admission

■会員参加条件

(1)マーケティングに関わる業務に従事されているプロフェッショナルの方
 ※専門横断的な交流を図るコミュニティのため、広告主・広告会社・メディア・クリエイターなど、専門領域は問いません。
(2)BORDERLESS MARKETING の考え方に共感される方、実践したい方

■コミュニティ概要

名称:BORDERLESS MARKETING COMMUNITY(ボーターレス マーケティング コミュニティ)
理事:黒崎 太郎 氏(日本テレビ放送網株式会社 取締役 執行役員 営業担当データマネジメント室長)
   佐々木 丈也 氏(三井住友カード株式会社 常務執行役員 マーケティング本部長)
   戸練 直木 氏(カゼプロ株式会社 代表取締役)
   手島 領 氏(螢光TOKYO/DESIGN BOY クリエイティブディレクター)
   星野 崇宏 氏(慶應義塾大学 経済学部 教授 / 慶應義塾大学経済研究所 所長)
   平尾 喜昭 氏(株式会社サイカ 代表取締役社長CEO)      
設立 :2022年2月
会費 :入会金・年会費とも無料
Web :https://borderless-mc.jp/


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