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沖縄の四季おりおりの生活を綴った、ごく私的な歳時記エッセイ。

旧暦と新暦のあいだで、いつもどこかに出かけていた
なんでもない沖縄のある日、あの時。

 生まれた街でずっと暮らしている。あらためてそう思ってびっくりした。那覇市以外で生活したことがほぼないのだ。この歳になってしみじみと焦った。もう取り返しがつかない。
 そう気づいて、まったりとしていたお家から、あわてて外に飛び出した。気がつけば、春夏秋冬、いつもどこかに出かけていた。沖縄の四季は繊細である。旧暦、新暦そろって気にかけていないと、いつのまにか夏の顔をしている。でもやっぱり新北風は冷たいし、うりずんぬ風はやふぁやふぁと吹いている。
 遠くに行きたい。近場ですませたい。
 この本は、二〇一五年の新春から始まり、二〇二二年の年の瀬まで続く、季節に応じた暮らしぶり、行事・イベント、そしてあてのない散歩に出かけたあれこれを綴ったごく私的な歳時記です。(本文より)

『来年の今ごろは ぼくの沖縄〈お出かけ〉歳時記』新城和博著 本文より


『来年の今ごろは ぼくの沖縄〈お出かけ〉歳時記』新城和博著

『ぼくの沖縄〈復帰後〉史』『ぼくの〈那覇まち〉放浪記』などの著書を持つ新城和博による、ごく私的な沖縄暮らしのユーモア・スケッチ。巻頭巻末総天然色写真(カバーデザイン)・表紙すごろく付き(宜壽次美智作)。

第一部 夏越しのカーチーベー 二〇一五年から二〇一六年まで
 
2015年
二十一年目の首里/沖縄県産本出版社が忙しくなるとき/本もあいの「親」になる三月/彼女たちのダウン・バイ・ザ・シー/スーマンボースーのまち歩き/夏越しのカーチーベー/カエルの王様/サバニを漕いで/コオロギのいた夏/首里の秋、月夜の弁が岳周辺 

2016年
鳥づくし/寒い冬だから―沖縄に雪が降った/タモリさん、そこなんですよ 
/うりずん雑感/首里劇場にやちむんを観に行く/安謝の片隅で/君は与那原大綱曳を曳いたか? /一中一条会、戦前の首里の青春を偲ぶ/妙に見晴らしのよい場所から見えること 

第二部 「タコライスの衝撃 完全版」 二〇一七年から二〇一九年まで
2017年
すいスイーツ/そこに市場がある限り/春の歩き呑み/浮島書店繁昌記/松の浦断層と田園段丘の旅/甘く香る御嶽の樹/火立毛から太陽の烽火を眺める/ちょっとシュールでファニーな神さま/かつてここにはロマンがあった 

2018年
のうれんへごう!/「タコライスの衝撃 完全版」/台南で昔の那覇を思ふ/「電柱地名」をたどっていくと/これがウェルカムんちゅだ!/ジャングルカーに乗って/まだまだ知らない遠い遠い親戚のはなし/壺川ビー・バップ!/与那原駅舎ブックカフェで「一日だけの本屋さん」 

2019年
水上店舗ミステリ・ツアー/シルバー『宝島』世代へむけて/小川会の袋小路と台北の長屋/三年越しの映画/アカバタキーはリバービュー/スケッチ ・第一牧志公設市場の記憶について/四十四年目の同窓会/宜野座の渚でその他いろいろ/「オードブル・ウークイ供え物じょーとーやさ」仮説/遠く離れた隣町の自転車本屋さん/ぴかぴかの首里城の記憶 


第三部 「煮付け」の似合うお年頃 二〇二〇年から二〇二二年まで
2020年
新春、首里トレイル・ウガンジュ・ランニング/「煮付け」の似合うお年頃 
/泡瀬パラダイス/春はいつもとおなじようにやってきて/夕暮れにしずむ休業の張り紙/コビット19のビッグ・ウェーブ/『1984―88』ぼくは「六人組」の追っかけだった/やまくにぶーの甘く危険なかおり/コロナ禍のオードブル文化考序説/台風の前の日、門は開かれていた/さまざまな「あれから一年」 

2021年
市場で三枚肉を買う楽しみについて/理髪店もしくは理容室まーい/コロナ禍をむりやり双六に例える/それぞれの「ヤングおおはら」/バス停でバスを待っている間の出来事/家の前にやってくる石焼きイモ屋さん/夢見る泉崎の無人本屋さん/五十年前の那覇大綱挽/故郷は眠りについていた/あじゃのおばさんたち 

2022年
冬枯れた小径にて/「橋の名は」/コロナ禍のトレーニング・ルームにて/五十年後のシロツメクサ/狭小地にバナナは揺れていた/のうれんプラザのハッピーデイズ/「ちむどんどん」のことを考えると「ちむい」?/誰もいない海のバニシング・ポイント/ウマンチュが繰り出した秋/えびす通りで黒ビール