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【2015年12月】私と先生

 中学校、高校、そして、大学。一番印象深い先生についての作文は何度も書いた。私の作文の主人公は、ずっと中学校の国語の先生――秦先生だ。「また秦先生かよ、つまらなくない?」と私の友達はよく言った。「そんなわけないだろう。」と答えた。
 つまらないわけがない。何度も同じ人物だけど、内容は全然違う。中学校の時、秦先生からの宿題として書いた作文で、秦先生は後で読むと思うと、ちょっと恥ずかしい気持ちで書いた。高校の時、秦先生への思いは強くて、作文は結構長かった。そして、大学の時、一番印象深い先生と言うと、やはり秦先生だった。でも、高校とは違い、遠いふるさとにいるの秦先生は、女神のような存在になった。今も変わらない。
 あれは、高校の入学試験のことだった。試験の前の夜、私は眠れなかった。目を閉じて、頭の中で試験のことや中学時代のことばかり考えていた。「それじゃ結構やばいかも。」と思うと、思いっきり携帯でメールを書き始めた。そう、秦先生へのメールだった。内容は多分あの時の気持ちだっただろう、よく覚えてない。とにかくいっぱい書いた。唯一書かないことは、自分の名前だった。やはり恥ずかしかったので、ただ「緊張なガールです」という名で送信した。妙なことに、送信したあと、私はぐっすりと寝てしまった。
 朝、目が覚めた。携帯で時間を見るつもりだったけど、新着のメールは一つあった。「あっ、秦先生からだ!」ドキドキして読み始めた。
「緊張なガールへ
明日は試験なので、緊張するのが当たり前のことでしょう。あんまり気にしないで、自分の実力を信じてください。それに、あなたなら大丈夫と思います。なぜなら、あなたは『なんでもできるコオロギ』でしょう。がんばって、あなたを信じています(^_^)Y
                               秦」
 『なんでもできるコオロギ』。それは、私が以前書いた童話のテーマだった。自分のメアドや名前も書いてないのに、なぜ秦先生は私だったことが知っているのだろう。手が震えて、何度もこのメールを読んだ。そして、試験場へ向かいた。試験の結果も良かった。
 卒業後、無事に高校に入った。今まで何度も秦先生のことを書いたけれども、実は会ったことが一度もない。秦先生のメアドはずっと自分の連絡先に載っている。そろそろもう一度秦先生にメールを送って見よう。今度は『なんでもできるコオロギ』という名で。

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