見出し画像

【2015年4月】百回の嘘

 香はずっと一人、彼氏などいない。彼女の口説によると、「そんなもんいらないから」。彼女にとって、自由がなりよりも大事なことだ。
 けど、大学生になってから、だんだん不適切な生活が始まった。寮の四人の中で、彼氏がいないのは香だけ、ほかの三人はみんな幸せそうに、毎日毎日彼氏たちの話ばかりしている。彼女の話す機会はほとんどない。もともとどうでもいいな気持ちの香だけど、結局疎外感に耐えられなかった。だから、彼女が決まった。一人の彼氏を作ろう。
 今の香は恋に落ちた。相手も大学生で、遠い町に住んでいる。格好良くて、いつも彼女のことが優先にする。今の香も、活躍になった。四人の女の子は、いつも集まって、彼氏の話をしている。特に香、遠距離恋愛の名を持って、一番ロマンチックな人になった。ほかの女の子のうらやましい視線は彼女にとって自慢なところになった。時々彼氏たちの写真をシェアする。香の彼氏は一番の格好いいひと、まるでアイドルのようだ。ほかの三人は、いつも賛美な言葉をして、香の彼氏をほめている。
 夜になって、みんな寝てしまうごろ、香はいつもひとりで、パソコンの中の写真を見ながら、にやにやしている。その写真は香の彼氏だ。格好良くて暖かい感じがする。彼女は思った。「君は私の彼氏。私の彼氏が本当にいないけど、作ることが出来る。君は私の自慢な作品だ。君の五官は全部私の好きなアイドルのようだ。のようではなく、彼らそのものだ。私が作ったのは、ただの作品だ。この世でいない道具にすぎないのだ。私の自尊心を満足するために、君は必要なんだよ。」
 そう、この人は実は本物ではない。あの大学にこの人はいない。彼女自分で合成された偽者だ。けど、どうせいルームメートにばれるはずがないので、いいではないか。
 ばれないならいいけど。ある日、ルームメートの愛さんは彼女にこういった。
「ねえねえ、A大の生徒会はね。香ちゃんの彼氏があそこの生徒会長じゃん。」
「ええ?ええ、まあそうね。」
「来月、その生徒会長はうちの大学に来るって。」
「ええ?」
「あら知らないの。彼氏から聞かれなかったか。訪問するって。」
「ああ、もちろん聞いたよ。そうそう、訪問ね。」
「ならそれはすごくない?あの日みんなで一緒に駅に彼を出迎えようよう。」
「あっ、うん。」
「なにをぼんやりしてるの。わくわくしすぎて、頭壊れるじゃないか香ちゃんは。」
「あっ、そうかも……」
 大変なことになってしまった。生徒会長という嘘をつかなければいいのに。今さらどうすれば。香はいままで自分のやり方にすこし後悔をした。だが、いまさらだけど。
 あの日がやってきた。寮の四人が一緒に駅に向いた。愛さんは「啓介さん」と書いた板を持って歩いていく。香は全然嬉しくなかった。前夜彼女は決めた。今日、自分が嘘をつくことを白状にしよう。今、まさにその時が来た。彼女は皆に向かって、
「あ~の、みんな、一つ話したいことがあるけど。」
「なあに?」
「実は、実はね、私の彼氏は……」
 「おい、香ちゃん。」ある男は彼女の名前を呼んでいる。香は頭を回って驚いた。この人、彼女の「彼氏」ではないか。五官は彼女の好きなアイドルそのもの、いや、のようだ。そして、写真にそっくりだ。彼女は今本当にぼんやりしてしまった
のだ。ただほかのルームメートの反応をみている。
 「ねえねえ、あなたは啓介ちゃん?」
「ええ、啓介と申します。A大の生徒会長で香の彼氏。はじめまして。」
「あらあらまあまあ。はじめまして。」
彼女たちは完全にこの啓介という男の魅力が引いているのだ。ただ、香の気持ちはすごく複雑だった。
 二人きりの公園。香は、
「あなたは誰?」
「君の彼氏にきまってるじゃないか。」
「でも……」
「でもなに?」
「でも、でもね、私の彼氏がいないはず、あなたはただ私の作品で、実は存在しないだけど……」
「香ちゃん、熱でも引いた?僕のことが忘れてしまった?大丈夫?」
「いや、あの、でも……」
「さあ、せっかく二人きりになったから、ゆっくり遊ぼう。」
 普通にデートしてしまった。彼女は生まれて初めて彼氏というものの正体が知ってしまった。そして、あっという間に、彼氏の戻る時間が着いた。
 駅で、四人と啓介。
「香ちゃん、元気でね。またくるから。」
「うん。君もね。」
「嬉しいな。そしてみんな、香はわがままだけど、お願いしますね。」
「あら、それはもちろん。ね~」
「それじゃ。」
四人で啓介の電車が消えるまで見送っていた。「いいなあ、香は。こんな優秀な彼氏が出来て。」けど、香はぜんぜん嬉しくなかった。
 彼女にとって、自由とは何よりも大事なこと。彼女から見れば、「彼氏」というものは面倒くさい。「私はやっぱ独りで居るほうがいいと思う。」彼女は決めった。彼氏はだれだか知らないけど、ちゃんと別れよう。ちゃんと自由が好きだと伝えよう。
 香はA大に着いた。生徒会室に入り、彼を探している。ある男は、「誰を探しているのですか?」と聞いて、「啓介です。いまいますか?」と彼女は答えた。「啓介?ここに啓介と呼ぶ人がいませんよ。」「ええ?けど、生徒会長は啓介ではないのですか?」「いいえ、生徒会長は僕だけど。啓介っていう方は知りませんね。」この男の前に、彼女は何もいえなくなった。
 自分の学校に戻った。そして、普通の生活はまた始まった。四人の寮で、香だけが彼氏と別れた。みんなは彼女に理由を聞かれたほしいが、彼女はただ「自由がほしい。」と答えた。
 香はいま幸せだ。マイペースで生きて、一人で好きなことをする。啓介という人は、本当に存在するのかどうかは知らないが、たしかに啓介は香を救った。啓介のおかげで、香は自分の本当の彼氏と出合えた。
 本当の彼氏の名前は、「自由」だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?