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【2015年12月】『箱の中』を読んでから

 子供の時から結構本好きな人だった。特に面白い小説に夢中だった。けれども、高校に入ると、特に高一のとき、理系科目に与えられる衝撃が強すぎて、いつの間にか読書の趣味が失ってしまった。大学に入ると、専門学科にもプレッシャーがいっぱいあって、読書どころか、専門以外の本はほとんど読んでなかった。それは一番悲しいことだと思う。
 今でも受験生の私は、偶然の機会に、『箱の中』という小説に出会った。東京に来てもう3ヶ月だった私は、受験のためによく図書館にいる。専門の本もいっぱいあるけど、やはり図書館という環境で、すばらしい本と出会うことが普通なんだ。検索の設置も完璧なので、作者の名前さえ入力すれば、すぐいろいろな結果が出られる。
 では、なぜ『箱の中』なのだろう。実は、ある日、図書館へ行く前に、パソコンで小説家のランキングを見た。そして、木原音瀬先生の名前が見つけた。木原先生の名前は聞いたことがある。彼女の作品から見れば、『美しいこと』とか、『子供の瞳』とか、『牛泥棒』とか、私の知っている作品ばかりだ。でも、原作を読んだことが一度もない。ただ原作に基づき創作したドラマを聞いたことがある。素敵な声優さんの声で、私は彼女の作品を好きになった。では、木原先生の小説を読んでみようか。
 そうして、図書館で木原先生の作品を検索した。残念ながら、図書館の資料は限りがあるので、三本しかなかった。そればかりでなく、中の二本は貸出中だったのだ。残るのは、この『箱の中』だった。では、この本にしよう。これが出会いだった。
 この本の表紙を見てみると、あんまり好きにならない感じがした。なぜなら、ただ二人の男で、手を繋いでいるように見える。そして、表情も嬉しくないようだ。「何なのよこの二人は。もっと嬉しく笑えればいいじゃないか。表紙なのに。」と私が思った。嫌そうな気持ちでこの本を読み始めた。
 「今日図書館をご利用して、ありがとうございます。まもなく閉館の時間です。」あっ、いつの間に閉館の時間になるの。全然気づかなかった。ずっとこの小説を読んで、時間は忘れてしまった。私は深呼吸をして、「よし、この本に決めた。」と言いながら、『箱の中』を借りた。
 
 さすが木原先生の小説だ。ストーリーはとてもすばらしい。箱の中から始め、檻の外まで終わる。ストーリーのあらすじは簡単だけど、先生の文字を読みながら、気持ちは結構複雑だった。堂野という冤罪を背負っている男の複雑な刑務所生活、喜多川という天然で世間知らずの男の純情な愛、それに、二人のストーリーに関する複雑な他人。誰でも複雑な性格で、五百ぐらいのページを読んでから振りまわると、眉をしかめる時が多い。喜多川が愛を求める過程は本当に難しかった。男同士で、しかも堂野の気持ちもよくわからない。それでも堂野を愛している。どうしても堂野に会いたい。どうしても堂野のそばにいたい。天然のくせに、なんでそんなに純情なのかな。私はずっと思っている。でも、たぶん天然だからこそ、この純情な気持ちがあるかもしれない。
 でも、探偵の大江さんは喜多川に「堂野さんのどこがすきですか。」と質問した。「よくわからない。」と答えた。なんなんだ、君もわからないのかよ。じつはこの質問を出す前に、私も同じ質問を抱いている。堂野は別に素敵な男じゃないし、綺麗な男でもないと思う。ただ一人にいるのが好きで、刑務所にいる時本を読むのが好き。それだけで、喜多川は夢中にされた。それはおかしいじゃないだろうか。
 おかしいのはおかしいけど、喜多川の気持ちは本当だ。だから、彼の言う一つ一つの言葉の中で、私はだんだんこの男を好きになった。なんと天然な男なんだ。私が守ってやりたい。そんな気持ちで、堂野のことがすこし嫉妬した。そうだよ、喜多川は君のことがずっと好きって知っているのに、なんで結婚なんかするのよ。しかも、なんで結婚式の日は喜多川の出た日なんだよ。なんで会いに行かないだよ。なんで彼を裏切ったのだよ。そこで「箱の中」は終わった。次は「脆弱な詐欺師」と「檻の外」だ。
 第一部分はきつい結末だけど、あとの部分はめでたい結末だ。けれども、むしろその方がきつい。何故かと言うと、結末がよかったけど、過程は辛かった。結婚して子供までできた堂野をずっと探している喜多川、そして、やっと見つけたけど、現実に直面しなければならない天然男。なんという不公平なことだ。最後に、堂野の妻が浮気していることがわかって、やっと堂野と喜多川は再開した。それは全書の結末だ。たしかに、これから二人は一緒にいられるに違いない。でも、本当にそれでいいのか。
 私の質問ははじめから最後まで消えていない。堂野は正直に言うと、喜多川のことがどう思うのかな。愛している、それとも、友達しかないのか。セックスまでしたけど、それは本当に愛なのか。もし堂野の妻は浮気しなければ、喜多川は一生、ただ堂野を見守るしかできないのか。そのような気がする。二人の未来は、一体どういう流れなのか、実は誰でも分からないじゃないか。
 なんだかんだで、この小説は終わった。本を閉めた後、私は楽になった。そう、堂野の気持ちはわからないだけど、彼は最後までちゃんと喜多川のそばにいる。だから、喜多川も喜んでいるだろう。これからの人生で、堂野はそばにいるから、喜多川も喜多川らしく生きられるだろう。絵が上手なので、彼はきっといい仕事を見つけるに違いない。私は信じている。愛する人はそばにいて、なんでもできるような感じがする。
そうでしょう、喜多川さん。もし堂野さんはまたあなたから離れるのなら、私はかわりにあなたのそばにいてもいいですか。

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